復讐の魔王
72.囚われた魔王
「……うぅっ、こ、こは?」
ピチョン……ピチョン……と、何かが跳ねる音が聞こえる中、僕は目を覚ました。ぼんやりとした中、僕は視界に入ったものを確認する。
まずは知らない天井。灯りなどは付いておらずに薄暗い天井だった。体を起こして周りを見ると、部屋にあるのは僕が寝転んでいたベッドに、壁に付いている折りたたみ式の机ぐらいだろう。
窓は鉄格子がつけられたのが1つあるだけ。それもかなりの高さの位置にあるから跳ばないと届かない位置だ。
扉は厚そうなのが1枚、そこが唯一の出入り口みたい。今は閉じられているけど、小窓があるためそこから見られるようにしているのだろう。
それに何よりこれだ。僕は手を動かすとガチャリと無機質な音が鳴る。僕の両手にはめられた手錠。壊せない事も無いけど、何か罠が仕掛けられているかもしれない。それにここがどこかもわからないし。
どうしてこうなったんだったっけ? 確か、ヘルの爆発を別のところに飛ばすために転移して、その転移先がわからないんだよね。本当に咄嗟に使ったから。
これは失敗したな。咄嗟の事とはいえもう少し考えて飛べば良かった。後悔先に立たず、とはよく言ったものだ……仕方ない、何とかこの状況をどうにかする方法を見つけないと。
僕が何かないか辺りを見回していると、扉の向こうから話し声が聞こえてくる。そしてガチャガチャと扉から音が鳴る。誰かがここに来た? 誰だろうか、と眺めていると、開かれる扉。そして入って来たのは白銀の長髪をした女性だった。その後ろには見覚えのある黒髪の女性も。
「目が覚めたようだな、魔王」
「……まさか、帝国に飛ぶとは思わなかったな」
僕の目の前に現れた女性たち、白銀の長髪の女性は氷帝メディス。帝国最強の四帝の1人。そしてもう1人の黒髪の女性が、仲間であるミミ・シノノメの姉であり、勇者の1人であるカグヤ・シノノメだった。
「まさかまたお前と出会えるとは思わなかったぞ?」
「僕は会いたくなかったけどね」
「ははっ、そうつれない事を言わないでおくれよ。私と対等以上戦える奴なんて中々いないんだから」
そう言い高らかに笑うメディスと、その隣で僕を睨んでくるカグヤ。だけど、次第に首を傾げ始めるカグヤ。僕の顔に何か付いているだろうか?
「……あなた、どこかで会った事あるかしら?」
「……この前、街で会ったじゃないか」
「いえ、そんな最近じゃないわ。あれは……まだ私たちがこの世界に来た頃……」
それから1人でぶつぶつと考え始めるカグヤ。メディスも首を傾げてカグヤを見ている。そして、カグヤは気が付いたのか、驚いた、そして信じられないような表情で僕の事を見てきた……これは気がつかれたかな?
「あ、あなたっ! ま、間違いない! ど、どうして生きているのよ!?」
驚きの声を上げるカグヤ。これは確実に気付かれてしまった。メディスは訳もわからずに僕とカグヤを交互に見て来る。
「カグヤ、一体どういう事だ? 私にもわかるように話してほしい」
「……そうね。まず簡単に言うと、彼の名前は、エルフリート・シュバルツ。グランディーク王国の貴族で、ハヤテ・エンドウの子孫にあたる人よ」
「……ほう。なるほどな。通りであの時光魔法が使えた訳だ」
またしても面白そうだという風な表情で僕を見てくるメディス……もう好きにしてくれ。それとは正反対に顔を青ざめているカグヤ。彼女は僕が死んだって知っているからかな。
「……どうしてあなたは生きているのよ? あなたはマコトに殺さ……っ!?」
ただ、君にそんな事を言われる筋合いは無い。僕はカグヤを睨みつけて殺気を放つ。驚いたカグヤは咄嗟に後ろへと下り、直ぐにでも攻撃できる態勢で僕を見てくる。
「確かに殺されたさ。君たち勇者にね。だけど、復讐するために戻って来たのさ」
「くっ! メディス! 直ぐに彼を殺すべきよ! 生かしておいたら危ないわ!」
「なるほど、2人はそういう関係だったのか。だが、それならカグヤ、お前の意見は却下だ。これから彼は陛下に合わせるからな」
「なっ!? で、でも!」
メディスの答えに反論しようとするカグヤ。だけど、それ以上話す事は出来なかった。急に気温が下がる部屋。吐く息も白くなるほど。その原因は、氷帝と言われるほどの実力者、メディスだった。
彼女が放つ殺気に混じって氷魔法の魔力が、彼女から放出されているのだ。その魔力が自然にこの空間の気温を下げていた。
「あまり調子に乗るなよ、カグヤ。確かにお前はこの国に降って帝国民となった。だが、それだけだ。四帝である私や陛下の御意志に意見出来ると思うなよ? お前は勇者という特典がなければ、ただの小娘なのだから」
メディスが放つ殺気や言葉に黙り込むカグヤ。メディスは気にした様子もなく、外に待機していた兵士を中へと呼ぶ。中に入って急に気温が下がった事に驚く兵士は、メディスの指示で僕の手錠から繋がっている鎖を外す。
「これから、皇帝陛下と会う事になる。礼儀に関しては大丈夫だと思うが、暴れようとは思うなよ? もしそうなれば、我々も黙ってはいられないからな」
そう言って部屋を出て行くメディス。その後ろにカグヤが黙ってついて行く……が、まさかの皇帝と会う事になるのか……いざとなれば、無理してでも逃げよう、うん。
ピチョン……ピチョン……と、何かが跳ねる音が聞こえる中、僕は目を覚ました。ぼんやりとした中、僕は視界に入ったものを確認する。
まずは知らない天井。灯りなどは付いておらずに薄暗い天井だった。体を起こして周りを見ると、部屋にあるのは僕が寝転んでいたベッドに、壁に付いている折りたたみ式の机ぐらいだろう。
窓は鉄格子がつけられたのが1つあるだけ。それもかなりの高さの位置にあるから跳ばないと届かない位置だ。
扉は厚そうなのが1枚、そこが唯一の出入り口みたい。今は閉じられているけど、小窓があるためそこから見られるようにしているのだろう。
それに何よりこれだ。僕は手を動かすとガチャリと無機質な音が鳴る。僕の両手にはめられた手錠。壊せない事も無いけど、何か罠が仕掛けられているかもしれない。それにここがどこかもわからないし。
どうしてこうなったんだったっけ? 確か、ヘルの爆発を別のところに飛ばすために転移して、その転移先がわからないんだよね。本当に咄嗟に使ったから。
これは失敗したな。咄嗟の事とはいえもう少し考えて飛べば良かった。後悔先に立たず、とはよく言ったものだ……仕方ない、何とかこの状況をどうにかする方法を見つけないと。
僕が何かないか辺りを見回していると、扉の向こうから話し声が聞こえてくる。そしてガチャガチャと扉から音が鳴る。誰かがここに来た? 誰だろうか、と眺めていると、開かれる扉。そして入って来たのは白銀の長髪をした女性だった。その後ろには見覚えのある黒髪の女性も。
「目が覚めたようだな、魔王」
「……まさか、帝国に飛ぶとは思わなかったな」
僕の目の前に現れた女性たち、白銀の長髪の女性は氷帝メディス。帝国最強の四帝の1人。そしてもう1人の黒髪の女性が、仲間であるミミ・シノノメの姉であり、勇者の1人であるカグヤ・シノノメだった。
「まさかまたお前と出会えるとは思わなかったぞ?」
「僕は会いたくなかったけどね」
「ははっ、そうつれない事を言わないでおくれよ。私と対等以上戦える奴なんて中々いないんだから」
そう言い高らかに笑うメディスと、その隣で僕を睨んでくるカグヤ。だけど、次第に首を傾げ始めるカグヤ。僕の顔に何か付いているだろうか?
「……あなた、どこかで会った事あるかしら?」
「……この前、街で会ったじゃないか」
「いえ、そんな最近じゃないわ。あれは……まだ私たちがこの世界に来た頃……」
それから1人でぶつぶつと考え始めるカグヤ。メディスも首を傾げてカグヤを見ている。そして、カグヤは気が付いたのか、驚いた、そして信じられないような表情で僕の事を見てきた……これは気がつかれたかな?
「あ、あなたっ! ま、間違いない! ど、どうして生きているのよ!?」
驚きの声を上げるカグヤ。これは確実に気付かれてしまった。メディスは訳もわからずに僕とカグヤを交互に見て来る。
「カグヤ、一体どういう事だ? 私にもわかるように話してほしい」
「……そうね。まず簡単に言うと、彼の名前は、エルフリート・シュバルツ。グランディーク王国の貴族で、ハヤテ・エンドウの子孫にあたる人よ」
「……ほう。なるほどな。通りであの時光魔法が使えた訳だ」
またしても面白そうだという風な表情で僕を見てくるメディス……もう好きにしてくれ。それとは正反対に顔を青ざめているカグヤ。彼女は僕が死んだって知っているからかな。
「……どうしてあなたは生きているのよ? あなたはマコトに殺さ……っ!?」
ただ、君にそんな事を言われる筋合いは無い。僕はカグヤを睨みつけて殺気を放つ。驚いたカグヤは咄嗟に後ろへと下り、直ぐにでも攻撃できる態勢で僕を見てくる。
「確かに殺されたさ。君たち勇者にね。だけど、復讐するために戻って来たのさ」
「くっ! メディス! 直ぐに彼を殺すべきよ! 生かしておいたら危ないわ!」
「なるほど、2人はそういう関係だったのか。だが、それならカグヤ、お前の意見は却下だ。これから彼は陛下に合わせるからな」
「なっ!? で、でも!」
メディスの答えに反論しようとするカグヤ。だけど、それ以上話す事は出来なかった。急に気温が下がる部屋。吐く息も白くなるほど。その原因は、氷帝と言われるほどの実力者、メディスだった。
彼女が放つ殺気に混じって氷魔法の魔力が、彼女から放出されているのだ。その魔力が自然にこの空間の気温を下げていた。
「あまり調子に乗るなよ、カグヤ。確かにお前はこの国に降って帝国民となった。だが、それだけだ。四帝である私や陛下の御意志に意見出来ると思うなよ? お前は勇者という特典がなければ、ただの小娘なのだから」
メディスが放つ殺気や言葉に黙り込むカグヤ。メディスは気にした様子もなく、外に待機していた兵士を中へと呼ぶ。中に入って急に気温が下がった事に驚く兵士は、メディスの指示で僕の手錠から繋がっている鎖を外す。
「これから、皇帝陛下と会う事になる。礼儀に関しては大丈夫だと思うが、暴れようとは思うなよ? もしそうなれば、我々も黙ってはいられないからな」
そう言って部屋を出て行くメディス。その後ろにカグヤが黙ってついて行く……が、まさかの皇帝と会う事になるのか……いざとなれば、無理してでも逃げよう、うん。
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