復讐の魔王

やま

71.戦いの終わり

「……みんな怪我は無い?」


 何とか大墳墓が崩れる前に脱出出来た僕たち。転移ができなかったら生き埋めになっていたところだった。僕の問いにマリアたちは大丈夫だと答える。良かった。


 ただ、クラリスは呆然と崩れた大墳墓を眺めていた。それも仕方ないだろう。彼女たちの役目は大墳墓を守り維持する事。それが出来なくなってしまったのだ。


 大墳墓を元の形に戻そうとも、この大きさだ。何年もかかる上に、今回の事でグランディークから目を付けられただろう。


 殆どヘルが暴れたからと言っても、勇者と一緒に来ていたのだ。勇者を動かせる程の人物、デンベルも関わっているという事になる。それに敵対した墓守の一族は、良くて爵位剥奪で追放、普通であれば死罪は免れないだろう。


 こうなったら、彼女たちはここにはいられない。あいつらなら喜んで殺しに来るだろうし。


「取り敢えず、みんなと合流しましょう。このままここにいてもどうしようも出来ないわ」


「そうだな。ルイーザたちはどこにいるのだろうか?」


 ここで固まって悩んでいても仕方がない。とにかくルイーザたちを探さなければ。そう思った瞬間、突然地面が揺れ出す。


「なっ、何ですか!?」


 マリーシャは突然地面が揺れた事に驚き手をつく。立っていられない事は無いが、踏ん張る事しか出来なくなるほどの大きな揺れだ。明らかに大墳墓の下で揺れている。あそこにはまだ何かあったのか?


 それからしばらくすると揺れが収まった。マリアは警戒し、マリーシャはクラリスを支えて周りを見渡している。僕は揺れの元凶だと思われる大墳墓を見る。


 崩れた岩のせいでしっかりとはわからないが、先ほどまで僕たちがいたところに魔力が集まって行っている。


 そして集まった魔力の塊が一気に大墳墓を突き抜けて来た。先ほどとは比べ物にならない程の揺れが僕たちを襲う。


 支え合っていたマリーシャとクラリスは尻餅をつき、マリアも片膝をついていた。僕は憤怒の炎心剣を右手に出して、大墳墓から出て来たものを睨む。


 大墳墓から現れたのは巨大な肉塊だった。ドクン、ドクンと脈打ち蠢いている。様々な魔力が混ざり合う中で、その中心には奴の魔力が鼓動していた。


 そして肉塊には奴の顔がグニャリと現れる。それを見たクラリスは口元を手で押さえ、マリーシャが心配そうに見ている。2人を庇うようにマリアが立ち肉塊となってヘルを睨んでいた。


「あ〜、予想外だったね。まさか裏切られるとは。逆にこっちが奪うつもりだったのに先を越されたよ」


 ヘルはドジを踏んだ侍女のように軽口でそんな事をのたまう。しかし、奴の体から膨れ上がる魔力は抑えられる事なく増え続けている。


「あっ、わかっちゃった? 正直に言うと僕の強欲の力が抑えられなくてさ。直ぐにでも爆発してしまいそうなんだよ。この辺りなら一気に吹き飛ばすほどのね?」


 肉塊から現れたヘルの顔がニヤリと笑みを浮かべる。ヘルの言葉に青ざめるクラリスたち。どれほどの範囲になるかはわからないが、俺たち全員が巻き込まれるのは確実だろう。


「ただ、これを放つと僕も死んじゃうんだよね。流石にそれは困るって言うか。だからさ、僕のお願い聞いてくれない?」


 余裕そうな表情とは別に直ぐにでも割れそうなほど膨張していくヘルの魔力。さてどうしたものか。奴のお願いを聞くなんて論外だ。かといって普通にやっても爆発されておしまいだ。


 この場所に被害なく爆発させるとしたら……ここから移動させるしかないか。そしてそれは僕にしか出来ない。考えがまとまった僕は、憤怒の炎心剣をヘルへと向ける。


「悪いがお前の願いは聞かない」


「……残念だよ。僕もここで終わりだけど、君たちも道連れにしてあげるよ! 死ねっ!」


 急激に膨れ上がるヘルの魔力。僕は直ぐにヘルの背後へと転移して、ヘルの肉塊へと触れる。そしてすぐさま超長距離の転移を発動する。場所を選んでいる暇はない。とにかくみんなから被害が出ない場所。


 ここから離れていて、被害が出ても構わない場所を思い浮かべて転移を発動する。かなりの質量があるヘルを転移させるのには結構な魔力を持っていかれた。


 そして、転移したのはどこかの森の上だった。見覚えはあるのだけど、場所がわからないところ。


 森の上に移動した時点でヘルの魔力は限界に達していた。ヘル自身も既に意識は無いようだ。これは……ミスった。


 僕が再び転移を使う前に、ヘルは光り輝き大爆発をする。僕の視界は全て真っ白に変わり、そのまま光の奔流に巻き込まれていったのだった。


 ◇◇◇


「な、何今の爆発は!?」


 突然空で鳴り響く大きな音に驚く私。突然現れた巨大な魔力の塊が雲の上ぐらいのところで一気に破裂したのだ。


「カ、カグヤ様、い、今のは!?」


 私の付き人兼監視役のメリルも突然の事に驚きを隠せないようだ。そして、爆発のあった空を眺めていると、空から黒い塊が森に落ちていくのがわかる。


 普通の人間だとわからないけど、勇者としての力で遠くが見える私にはあれが人間だとわかった。私はメリルに伝える事なく人間が落ちるところへと走り出す。


 人間が落ちたところは私たちがいたところからはあまり離れていないようだ。あの高さから落ちたのなら普通なら死んでいるのだけど、私にはなぜか生きているという確信があった。


 そして、人間が落ちた場所に行くと、大きなクレーターがあった。その中心に倒れていた人は、全身が傷だらけだった。でも、逆にあの爆発に巻き込まれて五体満足にあるなんて。そして、よくよく見ればこの人、見覚えがある。


 決して忘れはしない……ミミを連れて行った人だったから。

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