復讐の魔王

やま

69.憤怒VS強欲(3)

「や、やめろぉ!」


「は、離してくれ!」


「助けてくれぇ!」


 ヘルから伸びる魔力の腕に掴まれた黒装束の男たちは、先程腕を千切った男と同じ様に魔力を吸収して、自身の魔力を増やしていく。それと同時に傷付いた体を少しずつ治していく。これが奴の力か?


「ふぅ、これで大分治ったかな? しかし、やっぱり強いね、憤怒の魔王。単純だけど、それ故に強い能力だ。君の怒りが増すだけで強くなれるのだから」


「そう言うお前は、相手の力を盗むのか?」


「僕の強欲の力は、僕が発した力を取る事が出来るんだよ。勿論制限はあるよ。自分より魔力量が少ないとか弱いとかね。だけど、これのおかげで際限なく増やす事が出来る。そして増やして強くなれば、更に手に入れる事が出来るんだよ!」


 これで奴が複数の魔力を持っている理由がわかった。そうやって色々な奴から魔力や力を取って来たのだろう。


「ふぅ、これで焼かれた腕は治ったね。さて、続きをやろうか、憤怒の魔王!」


 再び膨れ上がるヘルの魔力。この空間にいた人間のほとんどの魔力を吸収して力へと変えていった。その中にはクラリスの父親の姿もあった。


 魔力を吸収された者は、水分を抜かれた様にミイラの様に変わってしまった。その上、奴が命令をするとアンデッドの様に動き出す始末だ。更に


「エル! このままじゃあこの大墳墓が保たないわ!」


 僕とヘルが暴れ過ぎたせいでこの大墳墓に限界が来ていたのだ。あと少しでも暴れれば崩落するというぐらいまで。


「くくくっ、そんな事を気にしている暇はあるのかい!」


 奴の膨大な魔力が溢れ出すとそれらはヘルの背中で巨大な腕へと変わっていった。ヘルの背中から合計6本の魔力の腕が生え辺りを殴る。一撃一撃が重いため揺れる大墳墓。次第に壁がひび割れ、天井が崩れて来た。


「マリア! マリーシャ! クラリス! 直ぐにこっちに来るんだ!」


 僕は光魔法で何とか逃げられるけど、2人はそうはいかない。この大墳墓が崩れる前に3人を外へと出そうとしたが


「させないよ!」


 ヘルが邪魔をして来る。巨大な腕を振り回して僕とマリアたちを近づかせない様にする。転移を使おうにも近づいた瞬間、3人へと攻撃をして来るため、不用意に近づかなかった。


「ちっ、邪魔をするな!」


 迫る巨腕を憤怒の炎心剣で切り落とすが、魔力で出来ている巨腕は直ぐに元に戻る。切っても切っても意味が無い。


 このままだと全員下敷きになってしまう。どうしたものかと思った時


「エル様! こっちです!」


 僕からかなり離れたところでクラリスたちが集まっていた。僕は直ぐ様転移を使い3人の元へ。その後を追って来るヘル。僕が3人の元へ辿り着くと同時に振り下ろされる巨腕たち。


 僕は直ぐに防ごうとしたけど、その瞬間、クラリスが魔法を発動。地面にぽっかりと穴が空いてしまった。事前に聞かされていた様であるマリアとマリーシャは慌てずそのまま落ちて、元凶であるクラリスもそのままだ。


 何も聞かされていない僕だけ焦っているけど、問答無用に落下。何も出来ないまま落ちていく。ヘルが後を追って来ようとしたが、穴は直ぐに閉じられた。クラリスがやった様だ。


 時間にしてはほんの数十秒だが、ようやく地面が見えて来た。僕は耐え切れないであろうマリーシャとクラリスの側へと行き、2人を抱きかかえる。


 地面に着地した時に体全体を使い勢いを逃す。2人に負担なく下りる事が出来た。ただ


「むー、なんかショック」


 大丈夫だと思って助けなかったマリアは拗ねてしまった。何か他の事で埋め合わせをするから許してほしい。


「こ、怖かったですが、何とか辿り着きました!」


 僕がマリアに謝っていると、隣でそんな事を言うクラリス。周りをよく見てみると、今までの部屋とは雰囲気が違う。まるで何かを祀っている神殿の様に厳かな雰囲気が漂う。


「ここってもしかして」


「はい、ここは大墳墓の最深部になります」


 って事は、ここにシスティーナさんが眠っているのかな? しばらくクラリスの後をついていくと、突然天井が吹き飛ぶ。現れたのは予想通りヘルだった。マコトたちもついて来てやがる。


「へぇ〜、ここにあるのか」


「もうここまで!? みんなお願い!」


 クラリスが何かにお願いすると、周りの石像が動き出す。全てクラリスが操っているようだ。全部で20体程の石像が全てヘルたちへと向かうが


「シャインバースト!」


 マコトが右手をかざして光魔法を発動。光が爆発して石像は粉々に吹き飛ばされてしまった。しかし、次の瞬間、粉々に砕け散った石像の破片がガタガタと動き出し集まっていく。そして再び石像へと元に戻った。


「私たち一族が長年魔力を溜め続けた石像の番人です! そう簡単にはやられません!」


 次々と地面から現れる石像の番人。よし今の内に……と思ったが、ヘルが作った魔力の巨腕で一瞬で吹き飛ばしてしまった。


「悪いけど、邪魔しないでくれるかな? 鬱陶しいんだよ!」


 クラリスが作った石像の番人たちは、全て吹き飛ばされ、その上ヘルに魔力を取られて崩れていった。そして、そのまま風心鎌でクラリスへと切りかかるヘル。


 2人の間に移動して炎心剣で防ぐが、魔力を吸収して更に強くなったヘルの力は、いつの間にか僕を超えており、炎心剣は弾かれ魔力の巨腕に殴り飛ばされてしまった。何とか体勢を立て直すが、さっきまでいたところでとんでもない魔力を感じる。


「ここに来る途中も崩れる大墳墓から魔力を吸収しててね。悪いけど、もう君じゃあ勝てないよ」


 そんな事を言いながら、今までで1番の魔力を吹き出すヘル。それだけでこの空間が揺れて地面が割れていく。これはさすがにキツイかな?

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