復讐の魔王

やま

66.異形

「マリーシャとミミは大叔母様とクラリスの側で援護を頼む。ルイーザは4人の後ろを守ってくれ。大叔母様とクラリスはヘルがいる場所を教えてくれ」


 僕は指示を出しながら憤怒の炎心剣レーヴァテインを出す。僕とマリアを先頭に部屋を出て、取り敢えず音が鳴り響く方へと向かう。


「な、何ですかあれは!?」


 暫く大墳墓の中を歩くと、クラリスが驚きの声を上げる。クラリスたちの一族が戦っていたのは、魔物ではない異形のものだった。


 全身が白く顔が無くのっぺら。腕が何本も生えているものもいれば、足と腕の生える場所が逆の奴もいる。頭がいくつもある奴もいる。ただ、奴らは口だけはあるようで、奴らは沢山ある手足で相手を捕まえて噛もうとしている。


 そして、その異形たちは僕たちに気が付いたのか、こっちに向かって走ってくる。先頭には背中から足が生えている奴と頭が沢山付いている奴が走って来た。


「マリアは足が沢山生えている方を頼むよ。僕はもう片方をやるから」


「わかったわ」


 マリアが返事をすると同時に僕たちは異形へと向かう。頭が沢山ある異形は僕が敵だと認識すると一斉に口を開いた。そして口から魔法が放たれた。


 全て5属性のボール系の魔法だけど、全てが僕に向かって飛んでくる。まあ、この程度は何ともないのだけど。全ての魔法を炎心剣で切り裂き、捕まえて噛み付こうと手を伸ばしてくる異形の手を切る。


 しかし、異形は速度を落とす事なく突っ込んで来た。こいつらには痛覚が無いようだ。僕は噛まれないようを複数ある内の1つの頭を掴み、地面に叩きつける。それでも普通に動く異形に炎心剣を突き刺して、一気に燃やす。


「エルさん、あ、あれ!」


 ミミが突然叫んで指を指す。その指先には土が集まって新たな異形たちが作られていたのだ。何だこいつらは? 1番初めに思ったのが、この大墳墓のトラップかと思ったが、大叔母様を見ると、首を横に振られた。違うようだ。


「エル、こいつらからあいつの魔力の匂いがするわ」


「匂い? ……確かにほんの僅かだけどヘルの魔力に似ている?」


 僕もマリアに言われるまで気が付かなかった。という事はこいつらはヘルが作りだした兵士ってわけか。それなら僕も対抗させてもらおう。


 炎心剣を地面に突き刺し、死炎契約を発動。これを使うのは久し振りだけど、以前に契約していた者を召喚する。


「潰せ、オークキングゾンビ」


「ブルゥアアア!」


 僕が召喚したオークキングゾンビは普通のオークキングの力に加えて炎を纏っている。


「あの白い異形たちを潰せ。向かってくる敵は全て倒せ」


「ブルゥ!」


 僕の命令を聞いたオークキングゾンビは大きな足音を鳴らしながら異形たちへと走っていく。武器を持っていないオークキングゾンビは、自分の腕に炎を纏わせ異形たちを殴り飛ばす。よし、これなら当分持つだろう。


 それから炎心騎士フレイムリッターも召喚する。一気に召喚するとただ邪魔になるので、まずは10体だ。


「大叔母様、あのオークキングと炎の騎士は敵では無いことを皆に伝えてください。それからみんなと一緒にここから出て下さい」


「伝えるのはわかったが、わしがここから出れば案内が出来んなるぞ?」


「場所については何と無くはわかります。後はそこに向かっていけばわかるでしょう」


「……それならクラリスを連れていくのじゃ。クラリスなら戦闘も出来る。化け物相手でも引けは取らん」


「はい、私をお連れ下さい」


 真剣な目で僕を見てくるクラリス。これ以上言っても答えは変わらないだろうね。


「わかった。ルイーザとミミは他の人たちと一緒に外へ。ミミは怪我人がいたら治療を、ルイーザは敵の排除を頼むよ」


「わ、わかりました!」


「任せてくれ」


 2人が大叔母様と他の民を連れて外に行くのを見届けてから、僕たちは先へと進む。ヘルは思った通り下へ下へと進んでいる。誰かが案内をしているのか迷いは無い。


「多分お父様でしょう。勇者様や各王たちが眠る場所を知っているのは限られていますので」


「こんな事を聞くのはあれなんだけど、君のお父さんはどうしてこんな事を?」


「……私たちの一族はこのように特別な地位を頂いてはいるのですが、ただの名誉職で皆が他に職についていなければ生活が苦しいほどなのです。それでも今まで特に問題も怒らずに生活が出来ていました。今の国王に変わるまでは」


「何かあったのですか?」


「今の国王に変わってから、ここに使者が来たんです。ここら一帯の領地を全てプラットフォード一族に渡すから、各王の墓に眠っている財宝を渡せと。
 初めは当然、皆が反対をしていたのですが、その分この土地で取れる資源など、今後人口が増えてからの税などは、殆ど一族で回収していいと。その話を聞いてからは、ただの名誉職では無くて、しっかりとした貴族で生きたいと、お父様は」


 そんな話になっていたのか。全く面倒な事を考えるなあいつは。そのせいで本来争わなくてもいい人たちが争ってこんな事に。


「新たにくるわよ!」


 目の前の地面から新しく異形が現れる。色々と考えている暇はあまり無いようだ。

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