復讐の魔王

やま

65.名を知る理由

「さあ、どこでも座りなさいな。クラリス、お茶を」


「はい、大叔母様」


 そう言い1番奥に敷かれている座布団の上に座る大叔母様。僕たちも、大叔母様の前に並べられている座布団の上に座る。僕が真ん中で右側がマリアとミミ、左側がマリーシャでルイーザだ。


「それで、どうして僕の名前を知っているのですか。それから、僕たちが来る事がわかっていた事も教えて下さい」


「まあ、そう慌てなさんな。クラリスがお茶を持って来るのを待っておれ。そうじゃ、お菓子でも食べるかの?」


 大叔母様は、近くの箪笥の引き出しを開けて、何かごそごそと探している。そして取り出したのが、丸い茶色の物だ。少しでこぼことしている。


「これは、ハヤテ・エンドウがわしらの先祖だけに教えたせんべいという食べ物じゃ。食べてみい」


 そう言って自分の手に持つせんべいとやらを齧る大叔母様。パリッと良い音がして食べている。僕らも食べてみると……おっ! 美味しい! 噛むたびに甘辛いタレの味が口の中に広がっていく。口の中の水分を奪っていくのが難点だけど、これは美味しいぞ。


 パリパリとせんべいを食べていると、クラリスが飲み物を持って来てくれた。確か、お茶だったか。みんなの前に置いてくれるクラリスは、置き終えると大叔母様の隣に座る。


 カップに入ったお茶を飲む。少し熱いけど美味しい。苦味が少しあるため、マリーシャやミミが少し苦そうな顔をしているけど。


 せんべいとお茶を頂いてから少し。


「さて、それじゃあ、話をするとするかの。まずそなたの名前がわかったのは、クラリスのおかげじゃよ」


「クラリスの?」


 僕らはクラリスを見ると、クラリスはこそばゆそうに体を縮こませる。


「クラリスには未来を見通す魔眼、予知眼を持っておっての、そなたたちがこの大墳墓に来る事は分かっていたのじゃ」


「その中で僕の名前も知ったと?」


 僕の言葉にクラリスは頷く。魔眼か。噂には聞いた事があったけど、実際に見聞きするのは初めてだ。この姿になってから誰にも話していなかった事を知られているというのも、存在している証明になっているし。


「それで、僕に何をさせたいんだ? さっき外にいた時にクラリスは僕の事を救いし方と言っていた。僕がここに来たと同時に、この大墳墓に何か大きな問題が起きるんだろう?」


 僕の質問に更に縮こまるクラリス。それとは反対に笑みを浮かべる大叔母様。


「理解が良くて話が早いの。その通り、そなたたちには大墳墓に攻めて来る敵を倒してもらいたいのじゃ」


「攻めて来る敵?」


「うむ。クラリスの父親であるダレンスが外から敵を連れ込んでくる。クラリスの予知では我々も当然戦うのじゃが、いかんせん敵が強くての。我々敵対した者は皆殺しにされるのじゃ」


「その上、私たちはそいつに吸収されて……」


 顔を青くさせるクラリス。大叔母様も先ほどまでの笑みは浮かべていなかった。食べられて……か。考えられるのは奴しか考えられないよな。


「じゃが、ある時からクラリスの見る予知が変わったのじゃ」


「変わった?」


「はい。ある時から予知の中にエルフリート様が現れるようになったのです! それからは未来が定まらなくなって、最近は見えなくもなりましたが」


「そなたが現れた事によって、未来が決まらなくなったのじゃろう、つまり、そなたの動き次第では我々も助かるという事じゃ」


 僕が現れた事によって未来が変わる。本当にそんな事があり得るのか? 僕が腕を組んで黙り込んでいると


「勿論、何もなしという訳ではない。予知の中でそなたは勇者が眠る祠を探しておった。その場所へ案内しよう」


 そう言いニヤリと悪い笑みを浮かべる大叔母様。クラリスもその表情を見て苦笑いをしている。この大墳墓の中は基本プラットフォード一族に案内してもらわなければ、安全に移動する事は出来ない。これは、受けるしかないか。


 僕が答えようとした時、僕たちがいた部屋の扉が開かれる。そして入って来たのは、片腕を失って傷だらけの男の人だった。


「お、大叔母様……お、お逃げ下さい。ダレンスが、う、裏切りました!」


 ……まさか、僕たちが来たその日に争いが起きるなんて。タイミングが良過ぎるじゃないか。先ほど開かれた扉の向こうからは剣戟の音が鳴り響いている。そして、時折揺れる大墳墓。


「ラブラ、そなたはまだ動けるか?」


 クラリスが失った右腕の血を止めるため治療をしている男性、ラブラにそんな事を言う。あまりに酷いのでは? と思ったが、ラブラは頷く。目も決意に満ちた目をしているので、命令では無いようだ。


「そなたは、怪我人、子供たちの避難を優先させるのじゃ。この大墳墓の中もより激しい戦いが始まる。その前にここから逃げよ」


 それだけ言うと大叔母様は部屋を出て行った。クラリスもラブラに肩を貸して大叔母様の後に続く。部屋に残された僕たちはどうしたものか……と、考えなくても決まっている。


 僕たちがここに来た理由は、ヘルの手にシスティーナさんの遺体を渡さない事だ、そのためには彼女たちの力が必要不可欠になる。


「どうするの……て、聞くまでも無いかしらね?」


 僕の隣には既に愛剣であるドライシスを抜いているマリアと、杖を持つマリーシャが立っている。ミミもルイーザもやる気だ。


「そうだね。ここを襲っているのは十中八九ヘルだ。奴にシスティーナさんを渡すわけにはいかない。僕たちは大叔母様たちと協力して、奴らを叩く」

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