復讐の魔王
64.幻影
「こちらになります」
「ここが今の入り口か?」
「いえ、大墳墓の中の入り口は我々プラットフォード一族の限られた人間なら選ぶ事が出来るのです。私もその1人ですから」
そう言って微笑むクラリス。少しプラットフォード一族と一悶着の後、僕たちはプラットフォード一族の当主でクラリスたちから大叔母様と呼ばれている方に会いに行くために、ついて行っている。
プラットフォード一族が住んでいるのは大墳墓の中なので、元々ここに来た理由とも合うので断る理由が無かったのもあるが。
「それでは開けますね『開け、ゴマ!』」
クラリスの言葉で動く壁。壁が横にずれて暗闇の中に道が現れる。クラリスが先頭を歩くと足下にぽつぽつと光が灯る。
「足下は少し暗くなっていますのでお気をつけ下さい」
確かに薄暗い。隣り合うマリアたちの顔すらも若干暗くなって見えなくなるほど。それから暫く歩くと、ギュッと僕の服の袖が引っ張られる。後ろにはマリアとミミがいたから多分ミミかな。そう思って振り向いて見ると
「アァアアアア!!」
顔が半分潰れて顔中血塗れ、手足が本来なら曲がらない方へと曲がっているミミが目の前にいた。そして僕に噛み付こうとしてくる。
僕は咄嗟に跳び退いてミミの噛み付きを避ける。どうしてこんな事に? さっきまでは普通に後ろにいたのに!?
僕は更にミミから距離を取ろうと下がろうとしたら、ボフッと何か柔らかいものに背中がぶつかった。何時もならドキッとするのだが、後ろから聞こえる呻き声に僕はすぐに振り向く。
僕とぶつかったのはマリーシャだった。当然、ミミと同じ様に体の至る所が傷だらけで、見ていられない程だった。
そして、気がつけば囲まれている僕。周りにはルイーザやマリアは勿論の事、ヘルガーさんやメルクリアさんなど、本来ならこんな場所にいない人たちに、更には父上や母上、国王陛下や王妃様、そしてユフィーが血塗れな姿になって現れた。
「タ……タスケ……テエェェェェェ!!!」
それぞれが言葉にならない言葉を叫び続けているし、まぐれかもしれないが、ユフィーがそう叫んだ様に聞こえてしまった。
だけど、それのおかげで逆に目が覚めた。僕は彼女を助けられなかった。それが僕の心の傷となっている真実だからだ。
それに合わせて自分に対する怒りも湧いてくる。こんなわかりきった罠に一瞬でもかかった自分に。
「この幻影を蹴散らせ! 憤怒の炎心剣!」
その怒りを吹き飛ばすために右手に炎心剣を召喚させ、一気に僕の周りに纏わりつく幻影に向かって振り下ろ……そうとしたが
「おっと、そこまでじゃよ」
と、僕が剣を振り下ろす前に手を掴まれ止められた。その瞬間、僕に向かっていた幻影が、全て消え去る。そして、目の前には腰の曲がった老婆が立っていた。手には杖を持ち、杖で僕の炎心剣を受け止めていた。 
 
「全く。昔ならともかく私も力が衰えたねぇ。魔力が乱れて杖に傷が入ってしまったの」
と、自分の手に持つ杖を眺める老婆。いや、力は衰えたと言うが、僕の炎心剣を普通の杖で止めるなんて。僕がまじまじと老婆を見ていると
「大叔母様!」
と、クラリスが走って来た。他のみんなも一緒だ。どうやら僕だけ逸れていたようだ。……一体いつの間に。自分の中では周りに人がいるのを感じて進んでいたはずなんだけど。
「この大墳墓には墓守の一族にしかわからない様に罠が張り巡らされておるのじゃよ。なので、外からの侵入者は今回のお主の様に罠にかかるものは多い」
さっきのがトラップだったのか。一瞬判別ができないほどだったが。
「まあ、わしの力を使って罠の能力も上げておいたからのおう」
と、言いながらかっかっか! 笑う老婆。罠を弄れるほどでクラリスが大叔母と呼んでいる人物。以前にも見たことがあるけど、全く変わっていない。この方が、このプラットフォード一族を束ねる1人だ。
そんな大笑いする大叔母様に、クラリスは頰を膨らませながら怒っている。しかし大叔母様は聞く耳を持たず。そろそろ、本題に入りたいのだけど。
◇◇◇
「ったく、なんで俺がパシリみたいな事しないといけないんだよ」
「まあ、落ち着きなさいよマコト。国王陛下のお得意様らしいから、あまり変な事言っちゃダメよ?」
「わかっているよ、マユミ。それでヘル、ここで良いのか?」
僕の方を見て怠げに尋ねてくるマコト。全くお気楽なもんだ。どう言う理由で僕について来ることになったかも知らないくせに。
僕は適当にマコトたちに返事をしてから、目の前にある大墳墓を見上げる。大墳墓を見ていると、マコトたちの周りに墓守の一族がいた。しかも、片膝をついて。
「なんだお前たちは? 俺たちに何か用か?」
「はっ! 我々をお救いください、勇者様!」
マコトが剣に手をかけながら話しかけると、墓守の一族の1人が答える。助けて欲しいねぇ。まあ、どういうことかわかったけど。
「救う? なんだよそれ?」
「はい! 現在この大墳墓には我々が認めていない侵入者がおります。その者たちを殺すのを手伝ってもらいたいのです!」
そう言って顔を上げるローブを着た男。男の話で出て来る侵入者の情報は彼らと一致していた。
やっぱり来たね、憤怒の魔王。こうなったらどちらが先に魔王の遺体を手に入れるか勝負だね。
「ここが今の入り口か?」
「いえ、大墳墓の中の入り口は我々プラットフォード一族の限られた人間なら選ぶ事が出来るのです。私もその1人ですから」
そう言って微笑むクラリス。少しプラットフォード一族と一悶着の後、僕たちはプラットフォード一族の当主でクラリスたちから大叔母様と呼ばれている方に会いに行くために、ついて行っている。
プラットフォード一族が住んでいるのは大墳墓の中なので、元々ここに来た理由とも合うので断る理由が無かったのもあるが。
「それでは開けますね『開け、ゴマ!』」
クラリスの言葉で動く壁。壁が横にずれて暗闇の中に道が現れる。クラリスが先頭を歩くと足下にぽつぽつと光が灯る。
「足下は少し暗くなっていますのでお気をつけ下さい」
確かに薄暗い。隣り合うマリアたちの顔すらも若干暗くなって見えなくなるほど。それから暫く歩くと、ギュッと僕の服の袖が引っ張られる。後ろにはマリアとミミがいたから多分ミミかな。そう思って振り向いて見ると
「アァアアアア!!」
顔が半分潰れて顔中血塗れ、手足が本来なら曲がらない方へと曲がっているミミが目の前にいた。そして僕に噛み付こうとしてくる。
僕は咄嗟に跳び退いてミミの噛み付きを避ける。どうしてこんな事に? さっきまでは普通に後ろにいたのに!?
僕は更にミミから距離を取ろうと下がろうとしたら、ボフッと何か柔らかいものに背中がぶつかった。何時もならドキッとするのだが、後ろから聞こえる呻き声に僕はすぐに振り向く。
僕とぶつかったのはマリーシャだった。当然、ミミと同じ様に体の至る所が傷だらけで、見ていられない程だった。
そして、気がつけば囲まれている僕。周りにはルイーザやマリアは勿論の事、ヘルガーさんやメルクリアさんなど、本来ならこんな場所にいない人たちに、更には父上や母上、国王陛下や王妃様、そしてユフィーが血塗れな姿になって現れた。
「タ……タスケ……テエェェェェェ!!!」
それぞれが言葉にならない言葉を叫び続けているし、まぐれかもしれないが、ユフィーがそう叫んだ様に聞こえてしまった。
だけど、それのおかげで逆に目が覚めた。僕は彼女を助けられなかった。それが僕の心の傷となっている真実だからだ。
それに合わせて自分に対する怒りも湧いてくる。こんなわかりきった罠に一瞬でもかかった自分に。
「この幻影を蹴散らせ! 憤怒の炎心剣!」
その怒りを吹き飛ばすために右手に炎心剣を召喚させ、一気に僕の周りに纏わりつく幻影に向かって振り下ろ……そうとしたが
「おっと、そこまでじゃよ」
と、僕が剣を振り下ろす前に手を掴まれ止められた。その瞬間、僕に向かっていた幻影が、全て消え去る。そして、目の前には腰の曲がった老婆が立っていた。手には杖を持ち、杖で僕の炎心剣を受け止めていた。 
 
「全く。昔ならともかく私も力が衰えたねぇ。魔力が乱れて杖に傷が入ってしまったの」
と、自分の手に持つ杖を眺める老婆。いや、力は衰えたと言うが、僕の炎心剣を普通の杖で止めるなんて。僕がまじまじと老婆を見ていると
「大叔母様!」
と、クラリスが走って来た。他のみんなも一緒だ。どうやら僕だけ逸れていたようだ。……一体いつの間に。自分の中では周りに人がいるのを感じて進んでいたはずなんだけど。
「この大墳墓には墓守の一族にしかわからない様に罠が張り巡らされておるのじゃよ。なので、外からの侵入者は今回のお主の様に罠にかかるものは多い」
さっきのがトラップだったのか。一瞬判別ができないほどだったが。
「まあ、わしの力を使って罠の能力も上げておいたからのおう」
と、言いながらかっかっか! 笑う老婆。罠を弄れるほどでクラリスが大叔母と呼んでいる人物。以前にも見たことがあるけど、全く変わっていない。この方が、このプラットフォード一族を束ねる1人だ。
そんな大笑いする大叔母様に、クラリスは頰を膨らませながら怒っている。しかし大叔母様は聞く耳を持たず。そろそろ、本題に入りたいのだけど。
◇◇◇
「ったく、なんで俺がパシリみたいな事しないといけないんだよ」
「まあ、落ち着きなさいよマコト。国王陛下のお得意様らしいから、あまり変な事言っちゃダメよ?」
「わかっているよ、マユミ。それでヘル、ここで良いのか?」
僕の方を見て怠げに尋ねてくるマコト。全くお気楽なもんだ。どう言う理由で僕について来ることになったかも知らないくせに。
僕は適当にマコトたちに返事をしてから、目の前にある大墳墓を見上げる。大墳墓を見ていると、マコトたちの周りに墓守の一族がいた。しかも、片膝をついて。
「なんだお前たちは? 俺たちに何か用か?」
「はっ! 我々をお救いください、勇者様!」
マコトが剣に手をかけながら話しかけると、墓守の一族の1人が答える。助けて欲しいねぇ。まあ、どういうことかわかったけど。
「救う? なんだよそれ?」
「はい! 現在この大墳墓には我々が認めていない侵入者がおります。その者たちを殺すのを手伝ってもらいたいのです!」
そう言って顔を上げるローブを着た男。男の話で出て来る侵入者の情報は彼らと一致していた。
やっぱり来たね、憤怒の魔王。こうなったらどちらが先に魔王の遺体を手に入れるか勝負だね。
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