復讐の魔王
63.大墳墓へ
「……ここに来るのも久し振りだね」
前に来たのは僕とユフィーの婚約を歴代の王に報告しに来た時ぐらいかな。
ヘルガーさんからシスティーナさんの安置所を聞いた翌日、僕たちは目的のグランディークの各王が眠る大墳墓へとやって来た。
この土地は昔から精霊に好かれている土地だと言われており、外敵に対しては迷宮になる森に囲まれている。
もしかしたら転移も出来ないかもと思ったけど、普通に大墳墓の目の前の森の中に移動する事が出来た。この国を恨んでいるはずなのに何で? と、思った時に昨日のマリアの言葉を思い出してしまったり。
「それでどこから入るのかしら? 入り口が無いようだけど?」
1人で考えていたら、マリアにくいくいと服を引っ張られた。そうだ、今はそれよりも目的を果たそう。
「この大墳墓への入り口は特殊でね、中の部屋が全部四角形で、移動するんだよ」
「……はい?」
おおっ、予想通りの反応。マリアの反応にルイーザもマリーシャもその姿を見て笑っている。ミミだけはわからずに僕たちの顔を見ているけど。
「この大墳墓を作ったグランディークの2代目国王が、かなりの土魔法の使い手だったらしくてね。国王の遺体をしまう時に一緒に財宝も仕舞うでしょ? それを狙った盗賊の侵入を防ぐためにこの大墳墓を作ったんだよ」
「へぇ〜、そんな凄い力を持った国王がいたのね。そんな難易度高い術式、そうそういないわよ。多分お父様でも無理ね」
ほへぇ〜、と感心したように声を上げるマリア。今はとある一族がこの大墳墓を管理している。彼らなら全ての入り口のパターンを覚えているから、彼らの後について行ったら入れるんだけど。
「無いものを強請っても仕方ないか。よし、大墳墓へと入れる入り口を探そうか」
みんなが頷き、森から出て大墳墓へと向かおうとしたその時、地面から土が飛び出してきた。そして僕たちを囲うように土の檻が出来てしまった。
「な、何ですか、これ!?」
「……墓守の一族か」
「その通りだ」
現れたのは茶色のローブを着た男女たちだ。彼らがこの大墳墓を守る墓守の一族、プラットフォード一族だ。全員が土魔法の適性を持つ、この大墳墓を管理するには適している一族になる。
僕たちを囲むのは全部で20人ほどか。ローブを着ているため年齢などはわからないけど、まあまあの実力者が集まっているね。
「お前たちが何の目的でここにやって来たかは知らぬが、王の命が無いものを大墳墓へと入れるわけにはいかん。ここで死んでもらうぞ」
そう言って剣を抜くプラットフォード一族。王の命ねぇ。
「お前たちは今の王にも従っているのか?」
「……当然だ。王の命令は絶対だ」
はぁ、思考をやめた奴がここを守れるかよ。
「なら、お前たちは僕の敵だ! 顕現せよ憤怒の炎心剣!」
僕は右手に炎心剣を発動する。僕の怒りを吸収して赤黒くなった禍々しい剣が現れた。その剣を横に振ると、一気に土の檻が吹き飛ぶ。
「な、何だこいつは!?」
「ルイーザたちは下がっていろ。こいつらは僕が……」
「お待ちください、エルフリート様!」
僕が奴らに切りかかろうとした時、彼らの前に彼らと同じローブを着た人物が立つ。そして自分のローブを脱ぐ。ローブの中から出てきた人物は女性だった。
髪はピンク色で、目の色が左右で違う、おっとりとした女性だった。ただ、そんな事よりも
「……どうして僕の事を知っている?」
そう、彼女は何故か僕の捨てた名前を知っていた。この姿になってからは一度も気づかれなかったのに。
「その事は後ほど話したいと思います。中へお入りください」
「何を言っているクラリス!? 奴らは侵入者だぞ! そのようなものたちを中入れるとはどういう事だ!」
「お父様たちこそ話したはずです。この方たちはエルフリート・シュバルツ様、我々を救いし方たちです」
ローブを着た男と新しく来た女性が突然睨み合い始めた。何だかやる気が失せたな。僕は憤怒の炎心剣を消す。
「既に大叔母様には許可を頂いております。もしこれ以上エルフリート様たちと敵対するようなら、我々も本気を出します」
女性がそう言うと、女性の後ろに同じようにローブを着た者たちが立つ。なんだ、一族の中でも割れているのか? その光景を見た男は悔しそうに歯嚙みをし、そのまま立ち去ってしまった。
「申し訳ございません、エルフリート様、私どもの不手際で」
残った女性の方はそう言って頭を下げてくる。なんで僕の事を知っているのかは知らないけど、さっきの人たちに比べたら話がわかるようだ。
「君たちは僕たちの味方と考えていいのかな?」
「はい、勿論です。ここに来る事は数週間前からわかっておりました。大叔母様も会う準備が出来ております。会っていただけますでしょうか?」
大叔母様と言えば、このプラットフォード一族の現当主か。彼女なら当然ながら大墳墓へ入る事への許可が出せるだろう。
「わかった、会いに行こう」
彼女の協力が得られるのならヘルより早く大墳墓の中へと入れるだろう。
前に来たのは僕とユフィーの婚約を歴代の王に報告しに来た時ぐらいかな。
ヘルガーさんからシスティーナさんの安置所を聞いた翌日、僕たちは目的のグランディークの各王が眠る大墳墓へとやって来た。
この土地は昔から精霊に好かれている土地だと言われており、外敵に対しては迷宮になる森に囲まれている。
もしかしたら転移も出来ないかもと思ったけど、普通に大墳墓の目の前の森の中に移動する事が出来た。この国を恨んでいるはずなのに何で? と、思った時に昨日のマリアの言葉を思い出してしまったり。
「それでどこから入るのかしら? 入り口が無いようだけど?」
1人で考えていたら、マリアにくいくいと服を引っ張られた。そうだ、今はそれよりも目的を果たそう。
「この大墳墓への入り口は特殊でね、中の部屋が全部四角形で、移動するんだよ」
「……はい?」
おおっ、予想通りの反応。マリアの反応にルイーザもマリーシャもその姿を見て笑っている。ミミだけはわからずに僕たちの顔を見ているけど。
「この大墳墓を作ったグランディークの2代目国王が、かなりの土魔法の使い手だったらしくてね。国王の遺体をしまう時に一緒に財宝も仕舞うでしょ? それを狙った盗賊の侵入を防ぐためにこの大墳墓を作ったんだよ」
「へぇ〜、そんな凄い力を持った国王がいたのね。そんな難易度高い術式、そうそういないわよ。多分お父様でも無理ね」
ほへぇ〜、と感心したように声を上げるマリア。今はとある一族がこの大墳墓を管理している。彼らなら全ての入り口のパターンを覚えているから、彼らの後について行ったら入れるんだけど。
「無いものを強請っても仕方ないか。よし、大墳墓へと入れる入り口を探そうか」
みんなが頷き、森から出て大墳墓へと向かおうとしたその時、地面から土が飛び出してきた。そして僕たちを囲うように土の檻が出来てしまった。
「な、何ですか、これ!?」
「……墓守の一族か」
「その通りだ」
現れたのは茶色のローブを着た男女たちだ。彼らがこの大墳墓を守る墓守の一族、プラットフォード一族だ。全員が土魔法の適性を持つ、この大墳墓を管理するには適している一族になる。
僕たちを囲むのは全部で20人ほどか。ローブを着ているため年齢などはわからないけど、まあまあの実力者が集まっているね。
「お前たちが何の目的でここにやって来たかは知らぬが、王の命が無いものを大墳墓へと入れるわけにはいかん。ここで死んでもらうぞ」
そう言って剣を抜くプラットフォード一族。王の命ねぇ。
「お前たちは今の王にも従っているのか?」
「……当然だ。王の命令は絶対だ」
はぁ、思考をやめた奴がここを守れるかよ。
「なら、お前たちは僕の敵だ! 顕現せよ憤怒の炎心剣!」
僕は右手に炎心剣を発動する。僕の怒りを吸収して赤黒くなった禍々しい剣が現れた。その剣を横に振ると、一気に土の檻が吹き飛ぶ。
「な、何だこいつは!?」
「ルイーザたちは下がっていろ。こいつらは僕が……」
「お待ちください、エルフリート様!」
僕が奴らに切りかかろうとした時、彼らの前に彼らと同じローブを着た人物が立つ。そして自分のローブを脱ぐ。ローブの中から出てきた人物は女性だった。
髪はピンク色で、目の色が左右で違う、おっとりとした女性だった。ただ、そんな事よりも
「……どうして僕の事を知っている?」
そう、彼女は何故か僕の捨てた名前を知っていた。この姿になってからは一度も気づかれなかったのに。
「その事は後ほど話したいと思います。中へお入りください」
「何を言っているクラリス!? 奴らは侵入者だぞ! そのようなものたちを中入れるとはどういう事だ!」
「お父様たちこそ話したはずです。この方たちはエルフリート・シュバルツ様、我々を救いし方たちです」
ローブを着た男と新しく来た女性が突然睨み合い始めた。何だかやる気が失せたな。僕は憤怒の炎心剣を消す。
「既に大叔母様には許可を頂いております。もしこれ以上エルフリート様たちと敵対するようなら、我々も本気を出します」
女性がそう言うと、女性の後ろに同じようにローブを着た者たちが立つ。なんだ、一族の中でも割れているのか? その光景を見た男は悔しそうに歯嚙みをし、そのまま立ち去ってしまった。
「申し訳ございません、エルフリート様、私どもの不手際で」
残った女性の方はそう言って頭を下げてくる。なんで僕の事を知っているのかは知らないけど、さっきの人たちに比べたら話がわかるようだ。
「君たちは僕たちの味方と考えていいのかな?」
「はい、勿論です。ここに来る事は数週間前からわかっておりました。大叔母様も会う準備が出来ております。会っていただけますでしょうか?」
大叔母様と言えば、このプラットフォード一族の現当主か。彼女なら当然ながら大墳墓へ入る事への許可が出せるだろう。
「わかった、会いに行こう」
彼女の協力が得られるのならヘルより早く大墳墓の中へと入れるだろう。
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