復讐の魔王

やま

59.青竜王

 マリアさんのお母さん? それって確か青竜王だったような。どうしてこんなに顔青ざめさせているのだろうか? 不思議に思いながらマリアさんを見ていると


 ドドォーン!


 と、地下王宮が大きく揺れたではないか。みんな壁や床に手をついて何とか耐えたけど、かなり揺れたぞ、今。


「今のは何だったんだ?」


「……今のは、マリア様の母君、青竜王のメルクリア・クラシウス様が、兵士たち相手に訓練をしている音です」


 僕の疑問に、ローナさんが淡々と答えてくれた。よっぽど本格的な訓練をしているのだな。でも、僕たちが訓練をした時はこんな事がなかったので、それ以上なのだろう。


「いいい、行くしかな、無いわね!」


 体を震わせながらも、前へと進むマリアさん。あのマリアさんがこれ程怖がるなんて、どんな人なのか想像がつかないけど、僕たちも挨拶をしておかないと。マリアさんにはお世話になっているしね。


 マリアさんのお母さんが関連している部屋へと、ローナさんに案内される僕たち。目的の場所へと近づくにつれて、先ほど程では無いが、時折揺れる地下王宮。


 目的の場所への扉の前にたどり着くと、そこはまるで野戦病院のようだった。廊下に倒れ込む傷だらけの兵士たちと、その兵士たちを治療する人たちで溢れかえっていた。そして、未だに揺れる部屋。


 震えながらも、マリアさんは扉の取っ手に触れる。マリアさんは1度深呼吸をして、扉を開ける。扉を開けた瞬間、隙間から漏れる冷気。寒っ! 何だこれ!?


 部屋の中は、そこだけ別の空間のように、辺り一面が氷の世界だった。天井からは氷柱が生えており、揺れる度に降ってくる。


 そして、部屋の中央では地面に倒れるレーバンさんや兵士たちと、マリアさんの青い髪より、少し薄めの水色の髪をした美女が中央に立っていた。


 身長は170前半で、マリアさんがそのまま成長したら瓜二つと言われても、わからないほど似た容姿をしている。ただ、眉間に皺を寄せて、怒っているようだ。


「レーバン、私がいない間はかなり怠けていたようだね。前よりも弱くなっているじゃ無いかい?」


「……そ、それは姉御が逆に強く……ふがあっ!?」


「確かに私も強くなったけど、あんたたちも強なっていなくちゃいけないだろう? あぁん?」


「……そ、その通りです」


 うわぁ、あのレーバンさんが手も足も出ないなんて。というか、ヘルガーさんはどこに行ったんだ? この状況を放って置くはず無いのだけど。その事をローナさんに尋ねると


「ヘルガー様は、別件でここを離れています。使い魔を送ったのでもうすぐ戻られるはずですが」


 との事だった。なんと運の悪い事だろうか。ヘルガーさんが丁度いない時に帰ってきたのか。


「ん?」


 僕たちが入り口で立っていると、気が付いたのかマリアさんのお母さん、メルクリアさんが僕たちに気が付いた。


「おや、マリアじゃ無いかい。久しぶりだねぇ。私に似て綺麗になって」


「お、お久しぶりですお母様。お母様も変わりなく元気そうで良かったです」


 おおっ? 思ったよりも危険なく話が出来そうだ。ホッとしたのも束の間、突然部屋を包む濃厚な殺気。えっ、なんで?


「さて、マリアがどれだけ成長したか見せてもらおうじゃ無いか」


 メルクリアさんはそういうと右足をとんとんとする。そしてそれだけで地面から氷柱が生えてきて、マリアさんへと向かってくる。


 マリアさんは直ぐに細剣であるドライシスを抜き、地面に突き刺す。同じ様に氷柱を発生させるけど、メルクリアさんの氷柱に飲み込まれてしまった。


「くっ!」


 マリアさんは防ぎきれないとわかった瞬間その場から飛び退く。メルクリアさんの放った氷柱が、止まる事なく突き進んできたからだ。本当に遠慮無しなんだな。だけど、このままだと、僕たちも巻き添えになってしまう。


「どうしたマリア、こんなもんかい?」


「っ! まだまだぁ!」


 メルクリアさんの攻撃は地面から氷柱を放ってくるだけでなく、氷が姿を変えて30センチほとの小さな竜になり飛んで来たり、氷の球が飛んで来たりと、休む間も無く攻めてくる。


 マリアさんも何とか致命傷となるところは防ぐけど、所々に傷が出来て、攻撃が当たった箇所は凍りついていた。


「これはどうだい? 大瀑布!」


 うわっ、なんてもんを放ってくるんだこの人は! メルクリアさんは全てを覆い尽くさんばかりの氷の波を放って来た。兵士たちは全員逃げたけど、このままじゃあ僕たちが巻き込まれてしまう。


「くっ、氷の城壁アイスランパート!」


 マリアさんは、ヘルティエンス領でも使ってくれた氷の城壁を発動する。普通ならこれで防げるし、僕の最強の技にも耐えるほどだ。


 しかし、前回ほどの強度は無かった。前回は発動前に準備をする事が出来たため、かなりの強度を持っていたが、今回は普通に発動した。


 それでも、堅牢な壁にはなるのだが、メルクリアさんの魔法がそれ以上の威力を持っていたため、突破されてしまう。


 既に目の前に迫った氷の波。マリアさんの氷の像なんて見たく無いね。僕は転移を使い、マリアさんの前に移動する。


 マリアさんを抱えて転移をしてもいいのだけど、これほど広範囲の攻撃を避けても意味が無いから、憤怒の炎心剣を手に持ち、魔力を流す。


「燃やし尽くせ、炎海」


 その炎心剣を地面に突き刺し、メルクリアさんの魔法を真似して放つ。向こうが氷の波ならこっちは炎の波だ。


 メルクリアさんの氷と僕の炎がぶつかり合い、辺り一面水蒸気で見えなくなった。普通なら高温の水蒸気なので、当たってはいけないのだが、障壁のおかげで当たる事はない。


 何とか、メルクリアさんの魔法を相殺させたけど、ここからどうしようかな。そんな事を考えていたら、水蒸気の向こうから


「あんた、懐かしい物を持ってるじゃないかい」


 心なしか、喜んでいる様な声が聞こえて来た。

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