復讐の魔王

やま

53.VS剣帝

「……何の爆発だったんだ、今の?」


「わからないけど、上で何かあったようね」


 ヘルティエンス伯爵の罠を潰したところに、また新たな問題が起きるなんて。これは一旦上に戻った方が良さそうだね。


 奥から感じる奇妙な気配も気にはなるけど、何があってもヘルティエンス伯爵を殺せば終わりだ。


「マリアさん、一旦上に戻ろうか。他のみんなが気になる」


「そうね。奥の事が気にならないと言えば嘘にはなるけど、それよりもみんなが心配だわ。うえに上がりましょ」


 マリアさんも僕の意見に頷いてくれる。そうと決まれば来た道を戻る。再び匂いのきつい地下水道を通るのは嫌だけど、仕方ないね。


 ただ、行きの時に比べては、早く戻れるだろう。ここまでの道は覚えているからね。


 とりあえず、この部屋の魔法陣を壊す。また、発動しても困るし。置いておく理由はない。地面にクロバを突き刺し、魔法を発動。発動するのは土魔法アースクエイク。揺れは最小限で地面を割る。これで使えないだろう。


「ほら、行くわよ、エル」


「うん、今行くよ」


 僕はマリアさんの後に続いて部屋を出る。地下水の匂いが凄いけど、わかっている分まだ耐えられる。そして、元の道もわかり、あっという間に階段へと辿り着いた。


 そのまま勢いを止める事なく階段を上り上がり、そして、僕たちは異変に気が付いた。地下水道の臭いのせいでわからなかったけど、辺りから血の臭いがする。


 そして、いろいろなところから聞こえる剣戟の音や、悲鳴の声、何かが壊れる音が。これは、争っている音だ。


 僕とマリアさんは顔を見合わせると頷き合い、直ぐに女性用のお手洗いから出る。その廊下にはおびただしいほどの死体が倒れていた。


 兵士や文官、侍女など関係なく、手当たり次第殺しているようだ。僕は眷属である2人の匂いを探す。2人の匂いは直ぐにわかり、元の部屋からあまり移動していないようだ。


 ただ、2人の匂いの中に、血が混じっている。辺りに溢れているものではなく、眷属の血が。これは……ルイーザが怪我をしている? それが分かっただけで、僕の視界は赤くなる。


 全身に魔力を流して身体強化を発動。一気に駆け出す。僕の異変を察知してくれたマリアさんは、黙って後について来てくれる。


 時折、切りかかってくる兵士や冒険者を殴り飛ばしながら進むと、3人の姿があった。だけど、ルイーザは全身傷だらけで、特に剣が刺されたと思われるお腹の傷が酷い。


 3人を守る障壁も、剣士の男……確かラゲルだったか。奴により突破されそうだ。僕の手にはいつの間にか、憤怒の炎心剣が握られていた。僕の怒りに反応して出て来たようだ。そのまま炎心剣に炎を纏わせ、放つ。


「喰らいつくせ、憤怒の炎心剣レーヴァテイン!」


 放った炎は、ラゲルを包み込むが、切り裂かれ逃げられた。だけど、警戒してか離れたおかげで、僕は3人の前に立つ事が出来た。


「何、僕の大切な家族に手を出しているんだ? 殺すぞ?」


 辺りを潰す程、濃密な殺気を放つ。こいつは絶対に殺す。絶対に許さない。ラゲルは、の殺気に冷や汗をかいているが、気にせず切りかかる。


「ちっ! こんな化け物がいるなんて聞いてねえぜ、全く!」


 ラゲルは、文句を言いながらも、俺の剣を危なげなく防いで行く。時折空いている方の剣でも攻撃してくるのを、俺は避ける。


 俺の目的は、ラゲルを3人から引き離す事。その内に、マリアさんが3人を回復してくれるだろう。


 じりじりと見合う俺とラゲル。まず攻めて来たのはラゲルだった。一気に間合いを詰めて来て、右手の剣で袈裟切りを放ってくる。


 炎心剣で逸らすと、直様、空いている左手で切りかかってくる。左手の剣も炎心剣で弾くが、直ぐに反対側の剣で切りかかってくる。


 俺のなんちゃって双剣術じゃなくて、こいつのはちゃんとした剣術だ。手数の多い攻撃に、俺は防戦一方になる。


 だけど、このまま押されるのも癪だ。左手で腰に下げているクロバを抜く。そのまま横払いをするが、ラゲルは危なげなく防ぐ。だけど、次のラゲルの表情には焦りがあった。


 その理由は地面から炎の剣が、ラゲルに向かって放たれたからだ。ラゲルは自身の驚異的な身体能力で、突如現れた炎の剣も避けるが、その隙を見逃さない。


 俺はラゲルに向かって憤怒の炎心剣を投げる。当然、ラゲルは剣で、迫る炎心剣を弾くが、その瞬間、炎心剣は形を変えて赤黒い炎へと変わる。


「黒炎柱」


 そして、ラゲルを包み込む火柱へと変わる。これで死ぬな、と思ったけど、ラゲルの実力を俺の想像以上のようだ。


 先ほどはなった炎の時と同じように、黒炎柱を切り裂いて出てきたのだ。先ほどと違うのは、全身所々に火傷を負っており、何故か4本の剣を持っているところだけど。


 多分だけど、魔力で腕を作っているのか? それで、剣を持たせているようだ。中々器用な事をする。


「ふぅ、参ったぜ。なんだ、あの炎は? 切ったところから再び燃え上がるだから、本気を出しちまったぜ」


「そうかい。それなら俺も本気を出そうか……うん?」


 俺も本気を出そうと、魔力を高めようとした時、突然地面が揺れ始める。ラゲルも気が付いたようだ。そして、割れる地面。俺は直様、マリアさんたちの方へと向かう。


 気を失っているルイーザはマリアさんが、魔力を失って満足に動けないマリーシャとミミは、俺が担いで、その場から離れる。


 地面が割れ、盛り上がる光景を、その場から離れながら見ていると、地面が吹き飛んだ。そして現れたのが、所々に目がある、紫色をした蔦だった。そして、その先には巨大な大木が生えていたのだ。あれが、地下から発していた変な気配の正体か。

「復讐の魔王」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く