復讐の魔王

やま

50.地下での戦い

「ここは……地下水道かな?」


 お手洗いの中にあった隠し通路から階段を下りる事数分。階段を下りきった先にあったのは、水道だった。


 辺りは当然真っ暗で、ジメッとしており、嫌な臭いがする。ヴァンパイアの敏感な鼻には、少しキツすぎる。


「……嫌だけど、進むしか無いわよね」


「そうだね。行こう」


 マリアさんも鼻が良いので、眉を顰めて嫌そうな顔をしている。


 それから僕たちは、辺りを警戒しながら地下水道を進む。地下水道は水の流れる音、ここに住んでいるネズミたちの走る音、それから僕たちの足音しか聞こえない。


「うーん、何も無いのかしら?」


 しばらく歩くと、マリアさんは首を傾げる。それも仕方ない。地下から感じた気配は、確かにこの水道から感じるのだけど、ただ延々と水道が続いているだけなのだ。


 僕もその気配は感じるため、間違ってはいないと思うのだけど。2人で気配を感じながらも何も見つからない状況に、色々と考えながら進んでいると


「……ん? 気配が消えちゃった?」


 再び首を傾げるマリアさん。それも仕方ないだろう。先ほどまでしっかりと感じ取れていた気配が、あるところを境に感じなくなったのだから。


「……もしかして、結界か?」


「なるほどね。あの気配を外に出さないため。感知されないためのやつね」


 マリアさんの予想は間違ってないと思う。実際、僕たちがここにやって来た時は、あの気配は全く感じられなかった。何日もこの領地に住んでいたというのに。


 でも、このヘルティエンス伯爵の屋敷に来て、中に入ると感じる事が出来た。多分だけど、屋敷を覆うように結界が張られているのだろう。


 さっき通ったところへ戻ると、気配が感じられるので、この予想は間違ってはいないだろう。


「ここが、屋敷の外れだと予想すると、多分だけど」


「ええ、あるとしたら、屋敷の中心ね」


 マリアさんも僕と同じ考えに至ったようだ。そうとわかれば、その方へと進むだけだ。僕たちは来た道を戻り、屋敷の間合いを想像しながら進む。


 簡単にだけど覚えておいて良かった。万が一逃げる事になった時のために、ある程度の間取りは覚えていたのだ。まあ、重要なところは隠されているのはわかっていたので、本当に簡単なものだけど。


 そして、中心に意識を向ければ、感じていた気配が強くなった。そのおかげで、隠し扉を見つける事が出来た。


 その隠し扉の先にはさらに階段があり、明らかに雰囲気が変わったのが感じられた。僕もマリアさんも警戒しながら下へと下りると


 カタカタカタカタ


 と、何かがぶつかる音がする。そして、現れたのは剣を持った骸骨だった。アンデッドか。階段を下りて来た者を襲うようになっているのか? 


 でも、それだと、ここを使っている者、まあ、伯爵なのだろうけど、彼も襲われるだろう。クロバを抜いてそんな事を考えていたら


『ふん、まさかここまで来られるとはな。冒険者め。面倒な仕事を増やしよって』


 僕たちが下りた通路の先に、幻影のようなヘルティエンス伯爵が現れた。魔法で残像だけ写しているのだろう。


『悪いがお前たちには死んでもらう』


 ヘルティエンス伯爵がそう言った瞬間、地面が輝き出した。魔法陣が刻まれていたのか。そして地面から大量の骸骨が現れた。しかもただの骸骨では無い。竜種の骨を利用して作られた魔道兵だ。


「竜骨騎士? こんな大量に作り出すなんて」


 マリアさんも驚きの声を上げている。竜骨騎士は、錬金術と闇魔法の1つである死霊術を合わせて作られる兵器だ。


 媒体とするのは、竜の骨を少しと、人間の死体を利用して作られる。それだけで、普通のスケルトンに比べて、かなりの強度と強さに変わるのだ。


 ヘルティエンス伯爵の裏には、錬金術と死霊術に精通した者がいるようだ。この奥からする気配も、それに関係しているのだろう。


「マリアさん!」


「ええ!」


 僕はクロバを、マリアさんは自分の愛剣である氷細剣ドライシスを抜いて構える。僕はクロバに光属性を纏わせ、マリアさんはドライシスに水属性を纏わせる。


 そして、それぞれに向かってくる竜骨騎士へと切りかかる。僕と対峙する竜骨騎士は、コクバを自分が持つ剣で受け止めるけど、ガラ空きの体を蹴り飛ばす。


 後ろにいた数体の竜骨騎士は、蹴り飛ばした奴に巻き込まれて、砕け散る。吹き飛ばされた竜骨騎士と入れ替わるように、別の竜骨騎士が迫るが、腕に影を纏わせる。


 そして、剣を振りかざす竜骨騎士の剣を受け止める。ガリガリと僕の腕と竜骨騎士の剣がせめぎ合うけど、クロバを右下から切り上げる。


 僕の背後を狙い、剣を突き出してくる竜骨騎士の攻撃を、しゃがんで避け、回し蹴りで蹴り飛ばす。壁にぶつかり砕け散る竜骨騎士。


 更に、四方から竜骨騎士たちが剣を振り下ろすのを、跳んで避けて、天井に足をつく。足から影を出し、天井へと縫い付ける。そして、下に集まる竜骨騎士たちへの


「セイクリッドブラスト」


 左手をかざして、光の弾を放つ。そして竜骨騎士たちへぶつかると、爆発する。爆発といっても物理的な物では無く、光が周りに広がるだけで、ダメージは与えられない。


 だけど、闇属性の魔力を消滅させる効果がある。竜骨騎士の関節部分は、闇属性の魔力で付けられている。そのため、闇属性の魔力が消滅させられた竜骨騎士は、バラバラになる。


 この魔法の欠点は、範囲が狭い事だ。半径2メートルほどしか効果が無い。


「そのまま、天井にいなさい、エル! 凍りつくせ、ニブルヘイム!」


 僕が、魔法が当たらないところにいるのがわかったマリアさんは、広域殲滅魔法を放った。水魔法の上位の氷魔法の中でも、かなりの威力を持つ魔法、ニブルヘイム。


 マリアさんの愛剣であるドライシスを地面に突き刺した瞬間、そこを中心に一気に地面が凍った。当然、凍る地面に足をつけている竜骨騎士も、一瞬にして固まってしまった。


 ジメッとした薄暗い地下が、極寒の部屋へと変わってしまった。凄いなマリアさんは。氷帝にも全く負けていないぞ。


 しかも、魔法は持続性のようで、新たに出現した竜骨騎士をその場で凍らせてしまう……これ、僕降りれないんじゃ?


 それから10分後。ようやく降りれた。マリアさんの魔法が解けた頃には、魔法陣の魔力も全て使い果たしたようで、竜骨騎士が現れなくなった。


 僕が、マリアさんにお礼と文句を言おうと、マリアさんに向かっていた時


 ズドドドォン!


 と、地面が大きく揺れた。な、なんだ!?

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