復讐の魔王

やま

47.依頼開始

 コツコツコツ、と杖をつきながら奥の扉から入って来た老人。神経質そうな視線で、冒険者である僕たちをジロジロと見てくる。その老人の後ろに続くように兵士が20人ほど部屋に入って来て、老人を囲んでくる。


 本当に用心深い人だ、ヘルティエンス伯爵は。全員が見える位置まで歩くと、周りを睨みつけるように見てくる。


 その後ろには豪華な鎧を着た兵士と、全身黒いローブを人物が立っている。顔も隠れてわからない。そのローブの人物をマリンティアさんはジッと見ている。どうしたのだろうか?


「よく参ったな、冒険者たちよ。お前たちには屋敷の守りをしてもらう事になる。詳しい話は、副隊長のゴモルから聞いてくれ」


 ヘルティエンス伯爵は、それだけを言うと、兵士を伴って自分の部屋へと戻ってしまった。後ろについていた兵士とローブの人物もだ。


 残ったのは3人の兵士のみ。その中から1人前に出てくる。身長が160ほどしかない小柄な男性だ。彼が副隊長なのだろう。


「私が副隊長のゴモルだ。今回は私の指示に従って貰おう。異論のある者は帰って貰っても構わない。本来なら我々だけで守るところを、ご領主様が念には念をと言う事で、仕方なく雇っただけに過ぎないからな」


 本音がダダ漏れだよ、この副隊長。今の言葉に苛立っている冒険者も少なくはないが、出て行く人はいなかった。まあ、報酬は良かったからね。それが目当ての人もいるのだろう。


「……ふん、誰も出て行かぬか。まあ良い。お前たちにしてもらう事は外と廊下の見回りだけだ。ご領主様の部屋や奥の方は、我々が守っているからな。それから、現在この屋敷には兵士が500人いる。愚かな事を考えぬように。死にたくなければな」


 副隊長のゴモルも、それだけ言うと部屋を出て行ってしまった。僕たちの役目は外と廊下の見回りだけか。楽だから良いけど、こんな適当で良いのか?


 副隊長が出て行った後は、冒険者たちも各々動き出す。その場に再び座る者、部屋から出て行く者と大きくは2つにわかれた。


「さて、僕たちはどうしようか。このままここで待機しておく?」


「私は少し外を見てくるわ。さっきのローブの男、どこかで会った気がするのよね」


「それなら、私も付いて行こう。部屋に篭りっぱなしは性に合わん」


 マリンティアさんが部屋を出て行こうとすると、ルイーザも後をついて行く。部屋に残ったのは、複数の冒険者と僕、マリーシャ、ミミだけだ。


 複数の冒険者の中にはクロードたちやラゲルの姿はなかった。外に出たようだ。


「エル兄さん。ここには何日待機するつもりなのですか? その貴族や関係者を殺し回っている犯人が、ここにくる確証はありませんし」


「そうだね。3日経っても来ないようなら、僕たちでやっても良い。罪はその犯人に被ってもらって」


 僕の言葉にマリーシャは頷く。ミミは僕の言葉を聞いて固まってしまったけど。まあ、別にミミに殺せと言うわけじゃない。手を汚すのは僕たちだけで良い。


 それから、少し沈黙が続くと、僕の目前に魔力が集まってくる。マリーシャは慣れているので、少し嬉しそうな顔をして、ミミは何事かと驚いている。そういえば、ミミの前に出てくるのは初めてだったか。


 僕の目の前に魔力がどんどんと集まって光ると、そこには


「ぷわぁ! うーん、久し振りの外です〜!」


 体を伸ばして、宙を舞うユフィーの姿があった。背筋をピーンと伸ばして、辺りをキョロキョロとしている。そして、僕を見ると


「あっ、あるじさま、おはようございますです!」


 元気に挨拶をしてくれる。僕も頰を緩めて、ユフィーの頭を撫でながら挨拶をする。ユフィーは嬉しそうに頭を擦り付けてくる。


「えっ? ど、どうしてお姫様が……えっ、えっ?」


 ユフィーを初めて見るミミは、ユフィーと僕を交互に見てくる。うん、良い反応だ。ユフィーも初めて見るミミをジッと見ている。見つめ合う2人。どちらも目を離さない。


 このまま見合うのかと思ったら、ユフィーが首をコテン、と傾ける。うーんうーん唸っているが、どうしたのだろうか?


「うーん、どこかで会った事があると思うのですが、どこでしょうか〜?」


 どうやら、ミミの事を微かに覚えているらしい。思い出そうと、ミミの周りをくるくると回る。可愛い。


「ユフィー、彼女の名前はミミ・シノノメ。今は僕たちと一緒に行動している」


「ミーちゃんと言うのですね! 私はユフィーです! あるじさまの精霊です! よろしくです!」


「よ、よろしくお願いします」


 ミミは元気の良いユフィーに少し気圧されていた。元気良く出されたユフィーの手を、ミミは恐る恐る指先をくっ付ける。


 その時ミミがボソッと「◯・Tみたい……」と呟いていたが、何だろうか?


 そんな風に部屋で待機をしていたら、マリンティアさんとルイーザが部屋に帰って来た。だけど顔色が優れない。何かあったのか?


「マリンティアさん、ルイーザも何かあったのか?」


「エル兄上……」


「エル、この下に何かいるわよ」

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