復讐の魔王

やま

46.冒険者たち

「止まれ。お前たちは何用で参った?」


「僕たちはギルドの依頼で、ヘルティエンス伯爵の護衛に来ました。これが依頼書です」


 僕はクナさんに手渡された依頼書を、門兵に見せる。門兵は依頼書を見ると、直ぐに姿勢を正して敬礼をして来た。


「これは失礼した。中に入れば案内人がいるから、それの指示に従ってくれ」


「わかりました」


 僕たちは、門兵の指示の通り門を通り抜ける。昨日クナさんから依頼を受けて、ヘルティエンス伯爵の屋敷にやって来たけど、なんだか、思ったよりも余裕がありそうな雰囲気だ。


 僕たちが屋敷の入り口まで向かうと、さっきの門兵が話していた案内役と思われる侍女が近づいて来る。


「皆様はご主人様のご依頼を受けた方たちでしょうか?」


「そうです。これが依頼書です」


 僕が先程と同じ様に依頼書を見せると、侍女はそれを確認して頷く。そして、案内され僕たちが屋敷の中へと進む。中もやっばり外と変わらず、慌てた様子が無い。軽い緊張感はあるけど、切羽詰まった様な感じはしない。


 そんな侍女の案内で辿り着いた部屋は、屋敷の大きさからしても、大きな扉のある部屋だった。どれくらいの人数を雇ったかは知らないが、こんな大きさの部屋を使うぐらいだ。多いのだろう。


「こちらが控え室になっております。中には他の冒険者様もいらっしゃいますので」


「わかりました。案内ありがとうございます」


 そこで僕たちは侍女と別れて、部屋へと入る。中には全員で30人ほどの冒険者がいた。


 全員が同じ黒色の鎧を纏った集団。金色に輝く鎧を着た男に黒い首輪を付けた女性たち。彼の奴隷のようだね。全員が女性の集団など、様々だ。


「やあ! 君達もヘルティエンス伯爵の依頼を受けた冒険者たちかい?」


 そんな部屋の中を見回していると、鎧を着て剣を腰にかけた金髪の男が話しかけて来た。


 その後ろには、普通の人1人は隠れそうな重戦士の男に、狩人のように軽装で、背には弓を背負い腰には複数の短剣を差している赤毛の女性、その隣には、黒いローブを着た金髪の女の子が立っていた。


「……そうだけど、君たちは?」


「俺の名前はクロード。後ろのでっかいのがガッシュ、赤髪の女性がプラム、ローブを纏った少女がセシルだ。よろしく!」


 そう言い手を差し出して来るクロード。僕も手を差し出して


「僕の名前はエルだ。後ろの水色の髪の女性がマリンティアさん、背の高い方の女性がルイーザ、もう1人がマリーシャで、ちっちゃい女の子がミカミミだ。よろしく」


 握手をする。それほど親しくするつもりはないけど、挨拶ぐらいは返しておこう。


「それじゃあ」


 挨拶は返したのでもういいかと思って、壁際に行こうと思ったら、なぜかクロードが立ち塞がる。なんだ?


「まあ、待ってくれよ。もう少し話をしようよ」


 クロードはそう言いながらも、後ろの女性陣を見ていた。そういう事か。クロードの仲間たちも気が付いたのか、重戦士の男は呆れた顔をして、赤髪の女性は僕たちを睨んでいる。ローブを着た女の子は、ジッと見ている。


「こちらはもう話す事なんて無いんだけど?」


「まあ、そう言わずにさ。ほら、後ろのみんなも、名前は聞いたけど他にも話がしたいしさ」


 この時既に僕を見てなかった。ジロジロと後ろを見ている。マリーシャは嫌悪感一杯の表情を浮かべ、ルイーザは剣に手を掛けている。マリンティアさんは慣れているのか無視で、ミカはマリンティアさんの後ろに隠れている。


 さっさとこの場を離れなければ、ルイーザが剣を抜きそうだったので、断って立ち去ろうとした時


「おい、ボウズ。嫌がってんのに無理矢理はいけねえぜ? 仲間の奴らも止めてやれよ」


 と、1人の男がやって来た。年は30ほどの茶髪の男性。身長が180ほどで、背には2本の剣を背負っている。それぞれから魔力を感じるから魔剣なのだろう。


「あなたは『二剣のラゲル』ですね。初めまして、俺はクロードと言います」


「おう、よろしくな。だけど、嫌がっているところに無理矢理話しかけるのは、駄目だぜボウズ」


「……そうですね。わかりました。それじゃあまたな、エル。失礼しますね、ラゲルさん」


 このラゲルという男が僕たちの間に入ってくれたおかげで、クロードは離れてくれた。あまりに酷いようなら剣を抜いていたけど、良かった。


 ラゲルは、離れていくクロードを見てから僕の方を見て来る。だけど、視線がどこか鋭い。


「確かエルと言ったな。お前もこんなところで殺気を放つなよ。あいつらは気付いて無かったが、何人かは気付いてお前を警戒している。依頼をやり難くなるぞ?」


 どうやら、僕が微かに放った殺気に気が付いたらしい。バレないように小さくしたはずなんだけどね。まだまだ未熟だな。


 まあ、これ以上詮索されても面倒なだけなので、曖昧に頷いておく。


「まあ、わかってんなら良いけどな……おっと、雇い主のお出ましだ」


 ラゲルはそう言うと、僕の隣に立つ。もう少し離れて欲しいところだけど、奥の扉から1人の貴族の男と、2人の鎧を着た兵士が部屋へと入って来た。仕方ないからこのまま話を聞くか。

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