復讐の魔王
45.相談
「……それで、護衛とはどういう事でしょうか?」
僕は席に着くと、受付嬢であるクナさんに尋ねる。今僕たちがいるのは、ギルドの中にある個室だ。ここは、重要度の高い依頼や極秘の依頼を話すための部屋だ。外には漏れないようになっている。
そこで、クナさんと僕たちは向かい合うように座っている。しかし、ヘルティエンス伯爵の護衛か。当然ながら伯爵も僕たちの顔を知っているから、受けるとしたら注意しないと。まあ、決めるのは話を聞いてからになるけど。
「はい。これは極秘なのですが、最近、王都からこのヘルティエンス伯爵領にかけて、貴族、もしくは兵士が亡くなるという事件が起きているのです。武器は多分矢なのですが、はっきりとわかっていません。しかも、北へ近づくにつれて、殺される人数が増えているのです」
謎の殺人者ね。グランディークも中々物騒になったものだ。隣に座っているマリンティアさんは、僕と同じ事を呟いていて、マリーシャとルイーザは普通に喜んでいた。それを見たクナさんは顔を引きつらせて、ミミは普通に怖がっている。
「え、ええっと、それで、貴族やその関係者が狙われていると判断したヘルティエンス伯爵は、ご自身の兵士の他に、冒険者を雇う事にしたのです。皆様の他にも何組かお願いしています」
まあ、あの人ならそうだろうね。ヘルティエンス伯爵は色々と用心深いから。さて、どうしたものか。受けないで殺された方が僕としては楽だから嬉しいのだけど。
「少し仲間と相談しても良いですか? 僕の一存では決められないので」
「あっ、はい、構いませんよ。それでは、私は外に出ていますので決まりましたらお呼び下さい」
クナさんはそう言うと部屋を出て行った。部屋の中は僕たちだけだ。
「さて、どうする?」
僕はみんなの顔を見渡しながら尋ねる。そして1番最初に手を挙げたのはマリーシャ。
「はい、マリーシャ君」
「はい、エル先生。雇われたふりして後ろから刺せば良いと思います!」
僕の冗談に乗ってくれたマリーシャだけど、言っていることはかなり物騒な事だ。まあ、僕も似たような事考えたけど。
「私はこのまま放っておいて殺されるのを待っても良いと思う。殺してやりたい相手だが、別に私たちが手を出す必要はない」
ルイーザは僕と同じ考えだった。まあ、それが傷付かず1番マシな選択かな。でも、その人が必ずヘルティエンス伯爵を襲うとは限らない。
「私は受けても良いと思うわ。殺せるのなら殺しても良いし、その殺し屋に殺させても良い。それに、今回が駄目だったとしても、屋敷の内情が知れれば、次に活かせるじゃない」
確かに、マリンティアさんの言う通り今回で殺してしまう必要はない。殺せた方が良いけど、今回は事前準備という事でも構わないだろう。
「わ、私は、参加したいです」
ミミの言葉にみんなが見る。ミミが自分からこんな事を言うなんて。
「どうしてそう思うの?」
この中ではわだかまりも無く、ミミを可愛がっているマリンティアさんが尋ねる。ミミはみんなを見渡すと
「と、特に理由はないんです。ただ、行かないといけない気がして……」
そう言い顔を俯かせてしまった。ふむ、ミミは少し臆病なところはあるが、紛れもなくれっきとした勇者の1人だ。何か感じるものがあるのだろう。それなら
「良し、多数決ってわけじゃないけど今回の依頼は受ける事にしよう。ごめんね、ルイーザ」
「ううん。エル兄上が決めたのなら私は良い」
ルイーザは微笑みながら頷いてくれた。みんなの意見が決まったので、クナさんを呼ぶか。
僕が扉を開けて廊下を見ると、廊下で立ちながら書類を書いているクナさんの姿があった。なんだか申し訳ないな。
「クナさん、話し合いは終わりました」
「あっ、はい、すぐに戻ります」
クナさんは手元の書類をパパッと書いてしまい、部屋へと戻ってきた。
「それで結論はどうなりましたか?」
「はい、僕たちは依頼を受けようと思います」
「本当ですか! ありがとうございます! あ〜、見つかって良かったです〜」
僕の返事に物凄く喜ぶクナさん。どうしてそんなに喜ぶのだろうか? 首を傾げていると
「あっ、すみません。今回の依頼は各受付嬢から最低でも1人は参加させるように通達が出されていて、私が担当した中ではエルさんたちにしか頼めなかったんですよ〜」
そんな理由があったのか。ヘルティエンス伯爵が少しでも多く護衛を得るために何か冒険者ギルドに圧力をかけたのだろう。まあ、関係無いけど。
「それじゃあ、僕たちは行きますね。明日ヘルティエンス伯爵の屋敷に向かえば良いですか?」
「はい。よろしくお願いします!」
笑顔で見送ってくるクナさん。さて、殺人犯は現れるのかな?
僕は席に着くと、受付嬢であるクナさんに尋ねる。今僕たちがいるのは、ギルドの中にある個室だ。ここは、重要度の高い依頼や極秘の依頼を話すための部屋だ。外には漏れないようになっている。
そこで、クナさんと僕たちは向かい合うように座っている。しかし、ヘルティエンス伯爵の護衛か。当然ながら伯爵も僕たちの顔を知っているから、受けるとしたら注意しないと。まあ、決めるのは話を聞いてからになるけど。
「はい。これは極秘なのですが、最近、王都からこのヘルティエンス伯爵領にかけて、貴族、もしくは兵士が亡くなるという事件が起きているのです。武器は多分矢なのですが、はっきりとわかっていません。しかも、北へ近づくにつれて、殺される人数が増えているのです」
謎の殺人者ね。グランディークも中々物騒になったものだ。隣に座っているマリンティアさんは、僕と同じ事を呟いていて、マリーシャとルイーザは普通に喜んでいた。それを見たクナさんは顔を引きつらせて、ミミは普通に怖がっている。
「え、ええっと、それで、貴族やその関係者が狙われていると判断したヘルティエンス伯爵は、ご自身の兵士の他に、冒険者を雇う事にしたのです。皆様の他にも何組かお願いしています」
まあ、あの人ならそうだろうね。ヘルティエンス伯爵は色々と用心深いから。さて、どうしたものか。受けないで殺された方が僕としては楽だから嬉しいのだけど。
「少し仲間と相談しても良いですか? 僕の一存では決められないので」
「あっ、はい、構いませんよ。それでは、私は外に出ていますので決まりましたらお呼び下さい」
クナさんはそう言うと部屋を出て行った。部屋の中は僕たちだけだ。
「さて、どうする?」
僕はみんなの顔を見渡しながら尋ねる。そして1番最初に手を挙げたのはマリーシャ。
「はい、マリーシャ君」
「はい、エル先生。雇われたふりして後ろから刺せば良いと思います!」
僕の冗談に乗ってくれたマリーシャだけど、言っていることはかなり物騒な事だ。まあ、僕も似たような事考えたけど。
「私はこのまま放っておいて殺されるのを待っても良いと思う。殺してやりたい相手だが、別に私たちが手を出す必要はない」
ルイーザは僕と同じ考えだった。まあ、それが傷付かず1番マシな選択かな。でも、その人が必ずヘルティエンス伯爵を襲うとは限らない。
「私は受けても良いと思うわ。殺せるのなら殺しても良いし、その殺し屋に殺させても良い。それに、今回が駄目だったとしても、屋敷の内情が知れれば、次に活かせるじゃない」
確かに、マリンティアさんの言う通り今回で殺してしまう必要はない。殺せた方が良いけど、今回は事前準備という事でも構わないだろう。
「わ、私は、参加したいです」
ミミの言葉にみんなが見る。ミミが自分からこんな事を言うなんて。
「どうしてそう思うの?」
この中ではわだかまりも無く、ミミを可愛がっているマリンティアさんが尋ねる。ミミはみんなを見渡すと
「と、特に理由はないんです。ただ、行かないといけない気がして……」
そう言い顔を俯かせてしまった。ふむ、ミミは少し臆病なところはあるが、紛れもなくれっきとした勇者の1人だ。何か感じるものがあるのだろう。それなら
「良し、多数決ってわけじゃないけど今回の依頼は受ける事にしよう。ごめんね、ルイーザ」
「ううん。エル兄上が決めたのなら私は良い」
ルイーザは微笑みながら頷いてくれた。みんなの意見が決まったので、クナさんを呼ぶか。
僕が扉を開けて廊下を見ると、廊下で立ちながら書類を書いているクナさんの姿があった。なんだか申し訳ないな。
「クナさん、話し合いは終わりました」
「あっ、はい、すぐに戻ります」
クナさんは手元の書類をパパッと書いてしまい、部屋へと戻ってきた。
「それで結論はどうなりましたか?」
「はい、僕たちは依頼を受けようと思います」
「本当ですか! ありがとうございます! あ〜、見つかって良かったです〜」
僕の返事に物凄く喜ぶクナさん。どうしてそんなに喜ぶのだろうか? 首を傾げていると
「あっ、すみません。今回の依頼は各受付嬢から最低でも1人は参加させるように通達が出されていて、私が担当した中ではエルさんたちにしか頼めなかったんですよ〜」
そんな理由があったのか。ヘルティエンス伯爵が少しでも多く護衛を得るために何か冒険者ギルドに圧力をかけたのだろう。まあ、関係無いけど。
「それじゃあ、僕たちは行きますね。明日ヘルティエンス伯爵の屋敷に向かえば良いですか?」
「はい。よろしくお願いします!」
笑顔で見送ってくるクナさん。さて、殺人犯は現れるのかな?
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