復讐の魔王
44.新たな依頼
「おらぁ。野郎ども! 囲め囲め! 敵は女子供ばかりだ! とっとと捕まえて、みんなで楽しむぞ!」
僕たちを囲んで下卑た笑みを浮かべる山賊たち。数は200人ほど。山賊にしてはかなりの数だけど、この人たちは本当に元グランディーク兵なのか? そう思えないほど、堕落している。
「マリンティアさんはマリーシャとミカの護衛をお願い。ルイーザは僕と一緒に山賊たちの殲滅だ。マリーシャとミカは魔法で援護を」
「わかったわ」
「ああ、わかった」
「了解です」
「(コクコク)」
僕がみんなに指示を出すのと同時に武器を構えて声をあげながら向かってくる山賊たち。全員最初に目に入ったルイーザを見ている。
確かにルイーザは背が高くて綺麗だからね。そういう目で見てしまうのはわかるけど、流石に仲間をそんな目で見られるのは不愉快だね。
「……全く不愉快だ。お前たちを見ていると、あの地下での事を思い出す」
ルイーザは、そんな山賊たちを見て、嫌そうに顔を顰める。そして、体中に風を纏い始めた。風魔法の風鎧だ。あれを使うと矢などを風で逸らしてくれたり、攻撃する度に風の追加攻撃が出来るようになる魔法だ。
ルイーザは風を纏わせた剣を握り、迫る山賊たちへと詰める。山賊の1人はルイーザに向けて斧を振り下ろすが、ルイーザは軽やかに避けて、当身をする。すると、山賊の男は吹き飛んだ。
他の山賊たちはその姿を見て驚くが、ルイーザは山賊たちに向けて剣を振る。本来なら届かない距離だが、ルイーザの剣から放たれる風の刃により、切り裂かれていく。
突然顔を切られて倒れる者。腕を切り落とされて拾い繋げようとする者。腹を切り裂かれ臓物がこぼれ落ちるのを拾おうとする者。様々だ。
その姿を見ていた他の山賊たちは、警戒して動きを止めるが、そこに突然影がさす。
山賊たちが上を見上げると、そこにはいくつもの岩が降って来た。
これは、マリーシャの土魔法だ。人を押しつぶせる程の大きさの岩がいくつも落ちてくる。潰された人は生きていないだろう。
岩が落ちる度に聞こえる潰れる音は、中々エグい。当然だけど良いものじゃないね。
「くそっ! 後ろの魔法使いどもを狙え! 特に小さい方だ!」
「ひぅっ!?」
突然のご指名に驚くミカ……幻影で姿を変えているミミだけど。彼女はおどおどしながらもマリーシャと自分を囲むように防御魔法を発動する。
そして、その前を守るように立つマリンティアさん。手には蒼く輝く細剣を握っている。
「悪いけど、あなたたちのような人間はお断りよ」
マリンティアさんは細剣を水平に横へ振ると、細剣が通った箇所から鋭く尖った氷柱が現れる。そして、その氷柱を近く山賊たちへと撃つ。
山賊たちは武器で防ぐが、氷柱が触れた場所から凍り、武器が一瞬で氷漬けになってしまった。
山賊たちは間に合わず腕まで氷漬けになる者もいて、その山賊の末路は、パキンッ! と、腕半ばで氷が割れてしまった事だ。肘から先が無くなったりしている。
何とか凍りつく武器を離すのが間に合った山賊たちも、更に放たれる氷柱を避ける事が出来ずに次々と氷漬けになっていく。中々怖い魔法だね。
「く、くそっ! た、退却だ! こんな化け物共を相手してられるか! 逃げるぞ!」
手も足も出ずに、山賊たちがやられる姿を見て、山賊たちのリーダーっぽい男が、我先にと逃げようとする。その後ろをついていく他の山賊たち。まあ、それを黙ってさせるわけは無いんだけどね。
「炎心騎士、やれ」
僕が指示を出すと同時に、地面から炎が噴き出す。そして色々なところから現れる炎の騎士たち。僕は動かずに何をしていたかと言うと、クロバを地面に突き刺し、魔力を流していた。
地面に元々流れている魔力の道に沿って、色々なところから発動出来るようにしたのだ。その分時間はかかってしまうが。
訓練のおかげで憤怒の炎心剣を発現させなくても、少しだけだが力を使えるようになった。
次々と炎心騎士たちに切られて燃やされる山賊たち。リーダーっぽい男も黒炭となっていた。これで全員だな。
山賊たち全員を倒し終えたのを確認すると、更に炎心騎士を召喚し、死体を燃やしていく。木々に移らないように山賊たちだけを。
「ふぅ、みんな無事かい?」
「ええ、問題ないわ」
「私も大丈夫ですよ、エル兄さん」
「わ、私もです」
「無論、私もだ」
僕の声にみんな反応してくれる。まあ、みんなが山賊程度に怪我するとは思えないけどね。
それから僕の転移でヘルティエンス領まで戻る。
グランディークと獣王国との戦争から1カ月、僕たちは毎日依頼をこなしていた。
依頼の内容は基本盗賊、山賊の討伐だ。なぜこの依頼ばかり受けているかと言うと、前の戦争が終わってから、敗戦したグランディーク兵たちの残党が、戻らずにそのまま盗賊や山賊に成り下がっているからだ。
数は多いので依頼に困らないから受けている。別にグランディークの為とかではない。どちらかというと、冒険者で有名になると、周りの冒険者とも縁を組む事もあるから、そこから貰える情報の方が大切だから受けている。
今の僕たちは「盗賊殺し」とか呼ばれてたりして少し有名だ。受付嬢から優先してお願いされるくらいだ。
街まで帰って来た僕たちは、依頼完了の報告をするために冒険者ギルドに入ると、みんなが見てくる。僕というよりかはマリンティアさんたちの事だけど。
そんな視線を無視して、何時も担当してくれている受付嬢、クナさんのところへ向かう。
「クナさん、今日の依頼終わりましたよ」
「あっ、エルさん。流石、盗賊殺しですね。今の所依頼失敗無しじゃないですか」
「まあ、あの程度はね。それで……」
「あっ、はい、今回の報酬です。確認して下さい」
僕はクナさんが置いた小袋を開いて中身を確認する……うん、確かに。
「確かに確認出来ました。それじゃあ……」
「あっ、待って下さい、エルさん」
ん? いつも通り帰ろうと思ったらクナさんに呼び止められた。どうしたのだろう?
「エルさん、少しお願いしたい依頼があるのですが……」
「お願いしたい依頼ですか?」
「はい、それは……ヘルティエンス伯爵の護衛です」
僕たちを囲んで下卑た笑みを浮かべる山賊たち。数は200人ほど。山賊にしてはかなりの数だけど、この人たちは本当に元グランディーク兵なのか? そう思えないほど、堕落している。
「マリンティアさんはマリーシャとミカの護衛をお願い。ルイーザは僕と一緒に山賊たちの殲滅だ。マリーシャとミカは魔法で援護を」
「わかったわ」
「ああ、わかった」
「了解です」
「(コクコク)」
僕がみんなに指示を出すのと同時に武器を構えて声をあげながら向かってくる山賊たち。全員最初に目に入ったルイーザを見ている。
確かにルイーザは背が高くて綺麗だからね。そういう目で見てしまうのはわかるけど、流石に仲間をそんな目で見られるのは不愉快だね。
「……全く不愉快だ。お前たちを見ていると、あの地下での事を思い出す」
ルイーザは、そんな山賊たちを見て、嫌そうに顔を顰める。そして、体中に風を纏い始めた。風魔法の風鎧だ。あれを使うと矢などを風で逸らしてくれたり、攻撃する度に風の追加攻撃が出来るようになる魔法だ。
ルイーザは風を纏わせた剣を握り、迫る山賊たちへと詰める。山賊の1人はルイーザに向けて斧を振り下ろすが、ルイーザは軽やかに避けて、当身をする。すると、山賊の男は吹き飛んだ。
他の山賊たちはその姿を見て驚くが、ルイーザは山賊たちに向けて剣を振る。本来なら届かない距離だが、ルイーザの剣から放たれる風の刃により、切り裂かれていく。
突然顔を切られて倒れる者。腕を切り落とされて拾い繋げようとする者。腹を切り裂かれ臓物がこぼれ落ちるのを拾おうとする者。様々だ。
その姿を見ていた他の山賊たちは、警戒して動きを止めるが、そこに突然影がさす。
山賊たちが上を見上げると、そこにはいくつもの岩が降って来た。
これは、マリーシャの土魔法だ。人を押しつぶせる程の大きさの岩がいくつも落ちてくる。潰された人は生きていないだろう。
岩が落ちる度に聞こえる潰れる音は、中々エグい。当然だけど良いものじゃないね。
「くそっ! 後ろの魔法使いどもを狙え! 特に小さい方だ!」
「ひぅっ!?」
突然のご指名に驚くミカ……幻影で姿を変えているミミだけど。彼女はおどおどしながらもマリーシャと自分を囲むように防御魔法を発動する。
そして、その前を守るように立つマリンティアさん。手には蒼く輝く細剣を握っている。
「悪いけど、あなたたちのような人間はお断りよ」
マリンティアさんは細剣を水平に横へ振ると、細剣が通った箇所から鋭く尖った氷柱が現れる。そして、その氷柱を近く山賊たちへと撃つ。
山賊たちは武器で防ぐが、氷柱が触れた場所から凍り、武器が一瞬で氷漬けになってしまった。
山賊たちは間に合わず腕まで氷漬けになる者もいて、その山賊の末路は、パキンッ! と、腕半ばで氷が割れてしまった事だ。肘から先が無くなったりしている。
何とか凍りつく武器を離すのが間に合った山賊たちも、更に放たれる氷柱を避ける事が出来ずに次々と氷漬けになっていく。中々怖い魔法だね。
「く、くそっ! た、退却だ! こんな化け物共を相手してられるか! 逃げるぞ!」
手も足も出ずに、山賊たちがやられる姿を見て、山賊たちのリーダーっぽい男が、我先にと逃げようとする。その後ろをついていく他の山賊たち。まあ、それを黙ってさせるわけは無いんだけどね。
「炎心騎士、やれ」
僕が指示を出すと同時に、地面から炎が噴き出す。そして色々なところから現れる炎の騎士たち。僕は動かずに何をしていたかと言うと、クロバを地面に突き刺し、魔力を流していた。
地面に元々流れている魔力の道に沿って、色々なところから発動出来るようにしたのだ。その分時間はかかってしまうが。
訓練のおかげで憤怒の炎心剣を発現させなくても、少しだけだが力を使えるようになった。
次々と炎心騎士たちに切られて燃やされる山賊たち。リーダーっぽい男も黒炭となっていた。これで全員だな。
山賊たち全員を倒し終えたのを確認すると、更に炎心騎士を召喚し、死体を燃やしていく。木々に移らないように山賊たちだけを。
「ふぅ、みんな無事かい?」
「ええ、問題ないわ」
「私も大丈夫ですよ、エル兄さん」
「わ、私もです」
「無論、私もだ」
僕の声にみんな反応してくれる。まあ、みんなが山賊程度に怪我するとは思えないけどね。
それから僕の転移でヘルティエンス領まで戻る。
グランディークと獣王国との戦争から1カ月、僕たちは毎日依頼をこなしていた。
依頼の内容は基本盗賊、山賊の討伐だ。なぜこの依頼ばかり受けているかと言うと、前の戦争が終わってから、敗戦したグランディーク兵たちの残党が、戻らずにそのまま盗賊や山賊に成り下がっているからだ。
数は多いので依頼に困らないから受けている。別にグランディークの為とかではない。どちらかというと、冒険者で有名になると、周りの冒険者とも縁を組む事もあるから、そこから貰える情報の方が大切だから受けている。
今の僕たちは「盗賊殺し」とか呼ばれてたりして少し有名だ。受付嬢から優先してお願いされるくらいだ。
街まで帰って来た僕たちは、依頼完了の報告をするために冒険者ギルドに入ると、みんなが見てくる。僕というよりかはマリンティアさんたちの事だけど。
そんな視線を無視して、何時も担当してくれている受付嬢、クナさんのところへ向かう。
「クナさん、今日の依頼終わりましたよ」
「あっ、エルさん。流石、盗賊殺しですね。今の所依頼失敗無しじゃないですか」
「まあ、あの程度はね。それで……」
「あっ、はい、今回の報酬です。確認して下さい」
僕はクナさんが置いた小袋を開いて中身を確認する……うん、確かに。
「確かに確認出来ました。それじゃあ……」
「あっ、待って下さい、エルさん」
ん? いつも通り帰ろうと思ったらクナさんに呼び止められた。どうしたのだろう?
「エルさん、少しお願いしたい依頼があるのですが……」
「お願いしたい依頼ですか?」
「はい、それは……ヘルティエンス伯爵の護衛です」
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