復讐の魔王

やま

43.幼い勇者

「ふっ……ふぇぇぇ……」


「……ちょっと、獣王、少し見過ぎでは?」


「ん? おおっ、そうだな。勇者というものはどのようなものかじっくり見ようと思ったのだが、まあ、普通の人間と変わらんな。はっはっは!」


 何故かミミを睨みつけるように見ていた獣王。そりゃあ、普通に人間だから変わらないでしょう。ミミは周りの視線に完璧に怯えてしまって、震えている。まるでウサギのようだ。


 しかも


「……どうして、隠れるのがエル兄さんの後ろなのでしょうか?」


 マリーシャがみんなの疑問を代弁してくれる。目が覚めて、みんなの視線に晒されたミミは、周りを見て僕たちの顔を見ると、すぐ様俺の後ろへと隠れてしまったのだ。


 僕はまあ構わないのだけど、マリンティアさんたちの視線が鋭くなるのだ。そんな睨んだら、ミミが泣き出しちゃうからやめてあげて。


「それで、魔王たちはこれからどうするのだ?」


 僕がみんなの視線から、ミミを庇っていたら、突然獣王がそんな事を言ってくる。これからか。勇者たちは転移を使って王都へ戻ったのだろう。そう考えたら、王都に行くべきだが、僕は


「少しヘルティエンス領に残って、情報を集めようかと思います」


 ここ最近は、休む事なく復讐のために生きて来た。マリーシャやルイーザ、関係無いのに俺たちについて来てくれたマリンティアさんたちにも、無理をさせてしまったからね。


 ほんの少し、休んでもかまわないだろう。焦って失敗する方が問題だ。


「そうか。俺は国に帰るが、俺の兵士は砦に滞在させている。何かあれば頼ると良い」


「わかりました。ありがとうございます」


 僕が礼を言い頭を下げると、獣王は微笑みながら部屋を出て行った。微笑みながらとは言ったが、鋭い牙が見えて、普通の子供なら泣き出してしまうほどの怖さをしていた。現にミミが俺の背中に顔を埋めて震えているし。


「それで、あなたはどうしてエル兄さんにそんなに引っ付いているの?」


 獣王が部屋を出て行ったのを確認してから、マリーシャは先ほどの疑問を再度、ミミに尋ねる。ミミは恐る恐る僕の背から顔を出し


「……だ、だって、このお兄ちゃん、エルフリート様と同じ雰囲気があ、あるから。な、名前も似ているし」


 そう言って、上目遣いで僕を見てくるミミ。まあ、僕自身だから似ているのは当たり前なのだけど。


 でも、召喚された時の頃の事を思い出せば、彼女が僕に懐くのもわかる。召喚されたばかりの頃ミミは、姉であるカグヤ以外には心を開かなかったから。


 この異世界で、彼女が初めに話した相手が僕で、それから話をする内に心を開いてくれていたからね。それを見たユフィーが嫉妬したりして。


 ぼくは、そんな彼女の頭を撫でる。ミミはビクッとして僕を見上げてくるが、気持ちよさそうに目を細める。


「まあ、話しても良いか。どうせこれから一緒に行動するわけだし。久しぶりだね、ミミ」


「っ! や、やっぱり、エルフリート様なの?」


「ああ。今はエルで通しているけどね」


 僕が自分の事をバラすと、ミミは次第に涙目になり、そして


「エルフリート様!」


 と、抱き付いて僕の胸元で泣き出してしまった。まさか、ここまで懐かれていたとは思いもしなかった。


 それから10分ほどミミが落ち着くまで頭を撫で続け、ようやくゆっくりと話が出来るようになった。


 ミミには僕たちの目的を話すと


「……そ、それはお姉ちゃんと私も?」


 と、尋ねて来た。ルイーザは当たり前だと、言おうとしたところを僕は止める。本当かどうかはわからないけど、本人に話を聞きたかったからだ。


「ミミたちは、他の勇者たちが反乱に加担している間何をしていた?」


「わ、私と、お姉ちゃんは、反乱の時はデンベル様のご、護衛をしていました。護衛と言っても、側にいるだけで、殆どの事は兵士の人たちがしてくれたし」


 うーむ、話を聞く限りではあまり関わってなさそうだが、


「だけど、彼女たちは私が捕まっているのを知りながら放置したんですよ!」


「確かにな。私たちが捕まっているところを見たからな」


 ルイーザとマリーシャは、ミミを睨みつける。ミミは悲鳴を上げて、肩を震えさせるが、ポツポツとその時の事を話していく。


「お、お姉ちゃんと私は、デンベル様に話をしたのだけど、取り合ってくれなかったの。それで、お姉ちゃんが助けようとしたのだけど、デンベル様が私を人質にして……」


 確か、ミミは回復や防御が特化していたな。そんな彼女は襲われたら身を守ることは出来るが、攻撃出来ないため、ジリ貧になってしまう。


 そして、勇者と言っても、魔力は無限では無い。攻撃手段も無いまま、兵士たちに囲まれたら、時間はかかるだろうが、ミミは捕まってしまうだろう。


 カグヤが助けに入ったとしても、残りの勇者たちに出て来られれば、どうしようも出来なかっただろう。


 2人もそれがわかったのか、それ以上何も言わなくなった。少し気まずい雰囲気の中、話題を変えるために、マリンティアさんが


「それで、彼女をどうするの? このまま捕まえておく?」


「そうだね。今の話を聞く限りだと、彼女の姉のカグヤもどうやら、立場が違うようだし。ミミには彼女を誘き出す役をしてもらおうか」

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