復讐の魔王

やま

42.憎悪の対象

「……」


「……」


「……」


「……何をしているのよ、あなたたちは?」


 今の僕たちの姿を見て、呆れたような声を上げる、マリンティアさん。現在僕は、ハヤテ・シュバルツが残した1つ、セイザというのをしており、目の前には、仁王立ちをするルイーザとマリーシャが立っている。そ、そんな睨まないでよ。


 そして、ベッドには


「……うぅん……おね……ちゃ……ん……」


 時折、うわ言のように姉を呼ぶ勇者、ミミ・シノノメが眠っている。


 彼女たちが仁王立ちで、僕を睨みつけている理由だ。現在、獣王国が勝ち取った、元グランディーク王国の砦に、僕たちも休ませてもらっているのだけど、そこに僕が怨みの対象である、気を失ったミミを保護して連れて来たからこうなってしまった。


「……エル兄上、取り敢えず事情を話してもらおうか。どうして彼女を助けたのか」


「そうですね。エル兄さん取り敢えず話を聞きましょうか」


 2人はそう言って椅子に腰掛ける。マリンティアさんも。僕はそのままセイザだ。少し足が痺れて来たのだけど、椅子は……駄目そうだ。


「……まあ、王国内の情報が欲しかったのと、勇者をおびき出すのに使えそうだと思ったのが1つの理由かな。まあ、後者のおびき出すのは、戦場に置いていかれたところを見る限り、望みは薄そうだけど」


 僕はベッドに眠るミミをチラッと見る。まあ、彼女の姉なら呼ぶ事は出来そうだけど。


「他に考えたのが、勇者を分裂させるのに使えるんじゃ無いのかなと」


「分裂?」


「うん。ミミとミミの姉であるカグヤ・シノノメを、上手い事行けば、味方に出来るかもしれない。そして、内側から勇者たちを潰させる」


 僕の言葉に考える3人。まあ、これは難しいかもとも思っている。1人殺して、数を減らしたけど、マコトたちは4人。その中をカグヤとミミに潰してもらおうと思うけど、下手すれば、返り討ちにされるだけだ。


 まあ、それはそれで構わないといえば構わないのだけど。それをするよりかは味方にしている方が役に立つかもしれないし。


 それら、マリンティアさんたちに話していると、


「失礼するぞ、魔王殿……って、何しているんだ?」


 扉を開けて獣王が部屋に入って来た。後ろには何人かの獣人を引き連れて。何かようなのだろうか?


 僕がルイーザたちに目で立ってもいいか尋ねると、2人は顔を見合わせて、頷く。ふぅ、ようやく立てる。少し痺れた感覚はあるけど、立つ分には問題ない。


「どうされたのです、獣王様。僕に何か用でも?」


「ああ、挨拶をしておこうと思ってな。ちゃんとしてなかったからな」


「なるほど。それなら、僕たちを呼んでくだされば、伺いましたのに」


「はっはっ、命の恩人にそんな事はさせられんよ」


 命の恩人って。そんな大層なものではないと思うけど。まあ、感謝してくれるのなら、受け取っておこう。


「それでは、改めまして、僕の名前はエル。憤怒の魔王です」


「俺の名前は、ローガスト・リグレムだ。よろしく頼む、憤怒の魔王よ」


 そうして僕とローガスト王は握手をする。それから、他のみんなも挨拶をしていく。マリンティアさんはローガスト王とは面識があるみたいだ。


 そこに


「……ここは……ふぇっ!?」


 と、変な声が聞こえて来た。みんなが声のする方へと振り返ると、俺たちをキョロキョロと見渡す、ミミ・シノノメの姿があった。既に涙目だった。


 ◇◇◇


「どうしてここに美々はいないのよ!」


 私は帰って来たばかりの竜二と忠に美々の事を問い詰める。理由は、竜二たちと一緒に戦争に行った美々が帰ってこなかったから。


「うるせえな。こっちだって命懸けだったんだよ。副将軍は獣王にやられちまうし、軍はバラバラになるしで、必死だったんだよ。行ってもねえ奴がグダグダ言うんじゃねえよ。どうせ今頃獣人たちに殺されているか、マワされているんだろうな」


 そう言い去って行く竜二と忠。私はその場に座り込むしかなかった。美々にもう会えないなんて。


 ……許さない。絶対に許さない。戦争に行くのを嫌がる美々を無理矢理行かせた国が。美々を見捨ててのこのこと帰って来た竜二たちが。美々を殺した獣人たちが!


 そのためには強くならなくちゃ。みんなは復讐できる力を手に入れないと。私は目からとめどなく流れる涙を拭う。目指すは北のヘルティエンス伯爵領。


 そこで、獣人たちを殺してやる。

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