復讐の魔王
39.戦う相手は
「グラァアアアア!」
獣王が咆哮をあげると、その音圧だけで地面が割れていく。そして、目の前にいるグランディーク軍に向かって駆け出す。
「へっ? ぐふゃあっ」
グランディーク兵は、突然目の前に現れる獣王に反応出来ずに、顔を掴まれ握り潰される。そしてそのまま手を手刀に構えると、魔力が覆う。
獣王は両手を同じように構えて、再び走り出し兵士に向かって手を振るうと、兵士たちの体が、切り裂かれていく。手を剣に見立てているようだ。鎧なんてあって無いような物だ。
「くそっ、奴を止めろ! 魔法を放て!」
「し、しかし、それをすると味方まで……」
「今奴を止めなければ、もっと死ぬぞ! 早く撃てぇ!」
小隊長の1人が、暴れ回る獣王を指差しながら叫び、その近くにいた魔法師たちは、命令通り魔法を放つ。しかし、放った瞬間、獣王の姿は消えて、魔法師たちが細切れとなった。ここまで圧倒的とは。とんでも無いな。
だけど、グランディークもやられてばかりではなかった。暴れ回る獣王を目掛けて、迫る人影があったのだ。
「オラァッ!」
「む?」
その人影が、獣王に回し蹴りを放ち、獣王はそれをしゃがんで避ける。獣王はしゃがんだ姿勢から手刀のまま突きを放つ。
人影は獣王の手刀を体を捻る事で避けるが、左肩が掠ったようで、そのまま吹き飛んだ。掠っただけで吹き飛ぶのか。
吹き飛ばされたのは、勇者の1人リュウジだ。リュウジは何度も地面をぶつかりようやく止まる。そこにトドメを刺そうと獣王が迫るが、リュウジとの間に大きな盾が割り込んだ。
「ぐぬぬぅっ……なんて力だ。無事か?」
「……げほっ、げほっ、ああ、大丈夫だ」
リュウジとの間に割り込んだのはタダシで、自分の背丈すら隠すほどの巨大な盾を持っている。リュウジは手に籠手をつけている。どちらも王家の魔道具だ。昔見た事がある。
「2人で共闘して倒すぞ。こいつはかなり手強い」
「ああ……だが、その分倒せば」
「かなりの経験値をもらえるだろうな。これでマコトにも勝てるだろう」
2人は獣王に勝つつもりだ。どこからそんな自身が出てくるのかはわからないけど、2人の実力じゃあ……そう思った時に
「ふふふ、楽しそうな話をしているでは無いか。私も混ぜてもらおうか」
ここまで一直線に駆けて来たのだろう、白馬に乗った白銀の女性がそんな事を言って、獣王の背後に現れた。
「……貴様が四帝か?」
「ほう、獣王に覚えて貰っているとは光栄だ。その通り、私は四帝の一角を担う1人、氷帝メディスだ。冥土まで覚えてもらおうか!」
氷帝メディスがそう言った瞬間、メディスの背後に100本以上の氷の氷柱が出来る。その全てが、獣王の方を向き、そして
「行け!」
放たれた。物凄い速さで迫る氷柱を、獣王は両手両足を魔力で強化して、叩き落とす。
獣王対氷帝なら獣王が勝つだろう。獣王対リュウジ&タダシなら獣王が余裕で勝つだろう。だけど、獣王対氷帝&リュウジ&タダシなら? 負けはしないけど、どこか大怪我すると思う。
氷帝は、片手間で戦える相手じゃ無いのは、雰囲気でわかる。かといって、勇者たちを放っておけば、ちまちまと攻撃されて鬱陶しいだろうし。
僕は憤怒の炎心剣に魔力を集め、地面に突き刺す。すると、獣王を覆うように炎の壁が地面から吹き出す。僕は転移で獣王の側に移動。
「この炎はお主がか?」
「ええ。このままだと、獣王も怪我してしまうところでしたから。僕がどちらかを受け持ちましょう」
僕が提案すると、獣王は顎に手をやって考える。外からはかなりの量の氷柱が放たれている。今は全て溶かしているけど、次第に押されて来た。
「ならば、氷帝を頼む。奴の氷は何気に厄介だ。お主の炎なら対抗出来るだろう。その間に私があの小僧どもを潰しておく」
かなり強気の発言だが、獣王なら余裕か。
「わかりました。3、2、1でこの炎を消します。その瞬間氷柱が降り注ぐと思いますが、そこは耐えて下さい」
「ハッハッハ、任せておけ」
獣王は豪快に笑った後に、勇者たちがいる方向へ走り出す準備をする。僕は
「それでは行きますよ。3、2、1……今です!」
掛け声と同時に炎の壁を解く。その瞬間大量の氷柱が僕と獣王の上に降り注ぐ。獣王は、氷柱が迫る速さ以上の速さで駆け出し、一気に勇者たちへ迫る。
僕は腰にあるクロバを抜き、クロバに炎心剣の炎を纏わせる。双剣で降り注ぐ氷柱を切り落としながら進む。
初めは僕の顔を見て怪訝そうな表情を浮かべていたが、次第にその表情は笑みへと変わり、笑い声を上げるまでになった。僕も少し楽しくなって来た。
獣王が咆哮をあげると、その音圧だけで地面が割れていく。そして、目の前にいるグランディーク軍に向かって駆け出す。
「へっ? ぐふゃあっ」
グランディーク兵は、突然目の前に現れる獣王に反応出来ずに、顔を掴まれ握り潰される。そしてそのまま手を手刀に構えると、魔力が覆う。
獣王は両手を同じように構えて、再び走り出し兵士に向かって手を振るうと、兵士たちの体が、切り裂かれていく。手を剣に見立てているようだ。鎧なんてあって無いような物だ。
「くそっ、奴を止めろ! 魔法を放て!」
「し、しかし、それをすると味方まで……」
「今奴を止めなければ、もっと死ぬぞ! 早く撃てぇ!」
小隊長の1人が、暴れ回る獣王を指差しながら叫び、その近くにいた魔法師たちは、命令通り魔法を放つ。しかし、放った瞬間、獣王の姿は消えて、魔法師たちが細切れとなった。ここまで圧倒的とは。とんでも無いな。
だけど、グランディークもやられてばかりではなかった。暴れ回る獣王を目掛けて、迫る人影があったのだ。
「オラァッ!」
「む?」
その人影が、獣王に回し蹴りを放ち、獣王はそれをしゃがんで避ける。獣王はしゃがんだ姿勢から手刀のまま突きを放つ。
人影は獣王の手刀を体を捻る事で避けるが、左肩が掠ったようで、そのまま吹き飛んだ。掠っただけで吹き飛ぶのか。
吹き飛ばされたのは、勇者の1人リュウジだ。リュウジは何度も地面をぶつかりようやく止まる。そこにトドメを刺そうと獣王が迫るが、リュウジとの間に大きな盾が割り込んだ。
「ぐぬぬぅっ……なんて力だ。無事か?」
「……げほっ、げほっ、ああ、大丈夫だ」
リュウジとの間に割り込んだのはタダシで、自分の背丈すら隠すほどの巨大な盾を持っている。リュウジは手に籠手をつけている。どちらも王家の魔道具だ。昔見た事がある。
「2人で共闘して倒すぞ。こいつはかなり手強い」
「ああ……だが、その分倒せば」
「かなりの経験値をもらえるだろうな。これでマコトにも勝てるだろう」
2人は獣王に勝つつもりだ。どこからそんな自身が出てくるのかはわからないけど、2人の実力じゃあ……そう思った時に
「ふふふ、楽しそうな話をしているでは無いか。私も混ぜてもらおうか」
ここまで一直線に駆けて来たのだろう、白馬に乗った白銀の女性がそんな事を言って、獣王の背後に現れた。
「……貴様が四帝か?」
「ほう、獣王に覚えて貰っているとは光栄だ。その通り、私は四帝の一角を担う1人、氷帝メディスだ。冥土まで覚えてもらおうか!」
氷帝メディスがそう言った瞬間、メディスの背後に100本以上の氷の氷柱が出来る。その全てが、獣王の方を向き、そして
「行け!」
放たれた。物凄い速さで迫る氷柱を、獣王は両手両足を魔力で強化して、叩き落とす。
獣王対氷帝なら獣王が勝つだろう。獣王対リュウジ&タダシなら獣王が余裕で勝つだろう。だけど、獣王対氷帝&リュウジ&タダシなら? 負けはしないけど、どこか大怪我すると思う。
氷帝は、片手間で戦える相手じゃ無いのは、雰囲気でわかる。かといって、勇者たちを放っておけば、ちまちまと攻撃されて鬱陶しいだろうし。
僕は憤怒の炎心剣に魔力を集め、地面に突き刺す。すると、獣王を覆うように炎の壁が地面から吹き出す。僕は転移で獣王の側に移動。
「この炎はお主がか?」
「ええ。このままだと、獣王も怪我してしまうところでしたから。僕がどちらかを受け持ちましょう」
僕が提案すると、獣王は顎に手をやって考える。外からはかなりの量の氷柱が放たれている。今は全て溶かしているけど、次第に押されて来た。
「ならば、氷帝を頼む。奴の氷は何気に厄介だ。お主の炎なら対抗出来るだろう。その間に私があの小僧どもを潰しておく」
かなり強気の発言だが、獣王なら余裕か。
「わかりました。3、2、1でこの炎を消します。その瞬間氷柱が降り注ぐと思いますが、そこは耐えて下さい」
「ハッハッハ、任せておけ」
獣王は豪快に笑った後に、勇者たちがいる方向へ走り出す準備をする。僕は
「それでは行きますよ。3、2、1……今です!」
掛け声と同時に炎の壁を解く。その瞬間大量の氷柱が僕と獣王の上に降り注ぐ。獣王は、氷柱が迫る速さ以上の速さで駆け出し、一気に勇者たちへ迫る。
僕は腰にあるクロバを抜き、クロバに炎心剣の炎を纏わせる。双剣で降り注ぐ氷柱を切り落としながら進む。
初めは僕の顔を見て怪訝そうな表情を浮かべていたが、次第にその表情は笑みへと変わり、笑い声を上げるまでになった。僕も少し楽しくなって来た。
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