復讐の魔王
37.新たな敵
グランディーク王国の兵数4万。獣王国リグレムの兵数2万5千。数では獣王国が圧倒的に負けているけど、個々の能力だと、獣王国の方が強いんだろうね。ましてや、獣王はかなり強いとマリンティアさんが言っていたし。
僕は立ち並ぶ、各国の兵士たちを見てそんな感想を抱く。獣王国リグレムが宣戦布告をしてから1週間が経過した。
今は、グランディークの国境を付近で睨み合っている2軍。何かあれば、直ぐにでも戦争が始まる雰囲気だ。
「これは凄いわね。私も数百、数千の小競り合いには参加した事はあるけど、この人数は初めて見るわ」
「僕もそうだよ。ハヤテ・エンドウの時から大きな戦争は起きてないからね。殆どの人が初めてなんじゃないかな」
僕たちは現在、戦場から少し離れたところから戦場を見ている。僕たちの視力ぐらいになれば、ここからでもある程度の事は見えるからね。わざわざ近づいて危険を冒す必要も無い。
そんな戦場を見ていたら、獣王国側から1人の偉丈夫が出てきた。身長は2メートルほど、銀髪のウルフカットにしている筋骨隆々な男だ。
「……どうして獣王自ら!?」
隣で驚きの声を上げるマリンティアさん。って事はあの人が獣王なのか。圧倒的な存在感。雰囲気はヘルガーさんとは違うけど、どこか似ていると感じる部分もある。
「人族よ。今我が同胞たちを返せば、この戦争は起こらなくて済む。さあどうする? 大人しく同胞を返すか、お前たちの屍でこの辺りを赤く血で染めるか!」
獣王が叫ぶと同時に咆哮を放つ。ここまで響くほどの咆哮だ。グランディーク側からしたら溜まったものじゃ無いだろう。
現に、グランディークの兵士の中で倒れる者がいる。獣王の覇気に耐えられず気を失ったのだろう。
グランディーク側は、何も言う事はなく、弓兵が弓を構える。その行動が答えのようだ。そして放たれる大量の矢。全てが獣王に向かって降り注ぐ。
「小癪なぁっ!」
獣王は両手両足に魔力を集める。そしてその魔力が形を変えて、防具のようになった。なんだあれ?
「あれは魔装ね。あなたの持つ憤怒の炎心剣があるでしょ? それら七大罪の武器を参考に作られた技の1つ。魔力を纏って具現化する」
私はまだ出来ないわ、と笑って話してくれるマリンティアさん。魔装か。たしかに憤怒の炎心剣も魔力を具現化している。あれが出来るようになれば、僕ももっと強くなれるのだろうか?
「うらぁっ!」
獣王が腕を振るう度に飛んできた矢は弾かれる。1本も獣王に刺さる事なく、全て吹き飛ばされた。そして獣王は大きく息を吸い
「突撃ぃぃぃ!」
「「「うぉぉぉぉおおお!」」」
号令をかける。その瞬間、大地を揺るがすほどの雄叫びを上げ、走り出す獣人たち。もう作戦も何も無い。グランディーク側が怯んだ隙に、ただ突っ込んでいるだけだ。
だけど、それが出来るほど獣人たちは強い。身体能力が圧倒的に違う獣人たちには、この両軍の端から端まで見える程開けた場所で小細工しても、避けてしまうのだ。
獣王を先頭に迫る獣人たち。獣人たち特有の身体能力で、既にグランディーク軍の目前まで迫る。だけど、それも予想できていたのか、グランディーク軍は慌てた様子は無い。その時にグランディーク軍が割れて、何かを持ってきた。
ここからじゃあ、よく見えないな。少し移動しないと。だけど、その持ってきたものが効果的だったのか、獣人たちは動きを止める。
少し場所を移動して、ようやく見えた僕たち。まさかこんな手を使うなんて。非道な手だけど、獣人たちにはかなり有効な手。
グランディーク軍の前には、両手を縛られて、血塗れな獣人たちが何百と立たされていた。奴隷からかき集めたのだろうか。
「動くな、獣王よ! もし貴様が動けば、こやつら1人ずつ殺していく! 私が此奴らの主人となっており、私が死ねば、この奴隷どもも全員死ぬように命令してある。大人しくその魔法を解くんだ!」
奴隷たちの後ろに馬を走らせるメルト副将軍。獣王は渋々魔法を解くが、後ろの獣人の1人が、動き出す。その瞬間、パァーン! と大きな音がする。
聞いたことの無い大きな音の方を見ると、メルト副将軍の手に黒い筒のような物が握られている。なんだあれは?
しかも、先ほど動いた獣人は、その場で倒れてしまった。一体何をしたんだ? わけもわからずに見ていると、メルト副将軍は次に獣王にそれを向けて、指を動かす。
獣王は咄嗟に頭を庇うが、腕や腹に筒から放たれたものが当たり血を流す。魔力で放っているようだが、撃たれているのは鉄か何かか?
「くくく、この勇者たちが教えてくれた銃というものはいいな。矢よりも射程が長く、魔法よりも扱いやすい。これからの戦争を変える代物だ!」
その筒を持った兵士が他にも何人かいる。奴隷たちを人質に取られて動けない獣人たち。さあ、どうするのかと思っていたら、獣王国側がもっと不利になる事態が起きた。それは
「全軍、攻撃開始」
ここは、グランディークと獣王国との国境だが、そこにもう1つ接している国がある。その国は、グランディーク以上の人族主義で、軍事力だけならグランディークより上だと言われている国、ゼルテア帝国が、参戦してきたのだ。
僕は立ち並ぶ、各国の兵士たちを見てそんな感想を抱く。獣王国リグレムが宣戦布告をしてから1週間が経過した。
今は、グランディークの国境を付近で睨み合っている2軍。何かあれば、直ぐにでも戦争が始まる雰囲気だ。
「これは凄いわね。私も数百、数千の小競り合いには参加した事はあるけど、この人数は初めて見るわ」
「僕もそうだよ。ハヤテ・エンドウの時から大きな戦争は起きてないからね。殆どの人が初めてなんじゃないかな」
僕たちは現在、戦場から少し離れたところから戦場を見ている。僕たちの視力ぐらいになれば、ここからでもある程度の事は見えるからね。わざわざ近づいて危険を冒す必要も無い。
そんな戦場を見ていたら、獣王国側から1人の偉丈夫が出てきた。身長は2メートルほど、銀髪のウルフカットにしている筋骨隆々な男だ。
「……どうして獣王自ら!?」
隣で驚きの声を上げるマリンティアさん。って事はあの人が獣王なのか。圧倒的な存在感。雰囲気はヘルガーさんとは違うけど、どこか似ていると感じる部分もある。
「人族よ。今我が同胞たちを返せば、この戦争は起こらなくて済む。さあどうする? 大人しく同胞を返すか、お前たちの屍でこの辺りを赤く血で染めるか!」
獣王が叫ぶと同時に咆哮を放つ。ここまで響くほどの咆哮だ。グランディーク側からしたら溜まったものじゃ無いだろう。
現に、グランディークの兵士の中で倒れる者がいる。獣王の覇気に耐えられず気を失ったのだろう。
グランディーク側は、何も言う事はなく、弓兵が弓を構える。その行動が答えのようだ。そして放たれる大量の矢。全てが獣王に向かって降り注ぐ。
「小癪なぁっ!」
獣王は両手両足に魔力を集める。そしてその魔力が形を変えて、防具のようになった。なんだあれ?
「あれは魔装ね。あなたの持つ憤怒の炎心剣があるでしょ? それら七大罪の武器を参考に作られた技の1つ。魔力を纏って具現化する」
私はまだ出来ないわ、と笑って話してくれるマリンティアさん。魔装か。たしかに憤怒の炎心剣も魔力を具現化している。あれが出来るようになれば、僕ももっと強くなれるのだろうか?
「うらぁっ!」
獣王が腕を振るう度に飛んできた矢は弾かれる。1本も獣王に刺さる事なく、全て吹き飛ばされた。そして獣王は大きく息を吸い
「突撃ぃぃぃ!」
「「「うぉぉぉぉおおお!」」」
号令をかける。その瞬間、大地を揺るがすほどの雄叫びを上げ、走り出す獣人たち。もう作戦も何も無い。グランディーク側が怯んだ隙に、ただ突っ込んでいるだけだ。
だけど、それが出来るほど獣人たちは強い。身体能力が圧倒的に違う獣人たちには、この両軍の端から端まで見える程開けた場所で小細工しても、避けてしまうのだ。
獣王を先頭に迫る獣人たち。獣人たち特有の身体能力で、既にグランディーク軍の目前まで迫る。だけど、それも予想できていたのか、グランディーク軍は慌てた様子は無い。その時にグランディーク軍が割れて、何かを持ってきた。
ここからじゃあ、よく見えないな。少し移動しないと。だけど、その持ってきたものが効果的だったのか、獣人たちは動きを止める。
少し場所を移動して、ようやく見えた僕たち。まさかこんな手を使うなんて。非道な手だけど、獣人たちにはかなり有効な手。
グランディーク軍の前には、両手を縛られて、血塗れな獣人たちが何百と立たされていた。奴隷からかき集めたのだろうか。
「動くな、獣王よ! もし貴様が動けば、こやつら1人ずつ殺していく! 私が此奴らの主人となっており、私が死ねば、この奴隷どもも全員死ぬように命令してある。大人しくその魔法を解くんだ!」
奴隷たちの後ろに馬を走らせるメルト副将軍。獣王は渋々魔法を解くが、後ろの獣人の1人が、動き出す。その瞬間、パァーン! と大きな音がする。
聞いたことの無い大きな音の方を見ると、メルト副将軍の手に黒い筒のような物が握られている。なんだあれは?
しかも、先ほど動いた獣人は、その場で倒れてしまった。一体何をしたんだ? わけもわからずに見ていると、メルト副将軍は次に獣王にそれを向けて、指を動かす。
獣王は咄嗟に頭を庇うが、腕や腹に筒から放たれたものが当たり血を流す。魔力で放っているようだが、撃たれているのは鉄か何かか?
「くくく、この勇者たちが教えてくれた銃というものはいいな。矢よりも射程が長く、魔法よりも扱いやすい。これからの戦争を変える代物だ!」
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「全軍、攻撃開始」
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