復讐の魔王

やま

33.自演

「はぁー、見張りってめんどくせえよな」


「あん? 何当たり前の事を言ってんだよ?」


「いや、さっきよぉ、同期のやつが、勇者様の捜索に行っちまってよぉ、探すふりするだけで金が貰えるから楽だぜ、なんて言ってたからよ」


「まあ、あれは楽だわな。探すだけで良いのだから。時間も決まっているし。それに比べれば、俺たちの見張りなんてつまんねえもんだよな」


 男たちはそれぞれ愚痴を言いながら、いつも通りに森の方を見る。彼らがやるのは時折森から出てくる魔物の報告をするぐらい。他国などが来る事が無いので、この見張りの仕事は魔物が出なければ基本暇なのだ。


 いつもなら。だけど、今日だけは違うかった。突然騒がしくなる森。木々から鳥たちが飛び立ち、獣たちの鳴き声が響く。


 明らかに様子がおかしいと思った2人の兵士は、騒がしい森の方を凝視すると、森から一本の矢が飛んで来る。兵士の1人は避ける暇もなく額に矢が刺さり、そのまま永遠に意識を失う。


 その後すぐに現れたゴブリンの群れ。ただゴブリンだけでなく後ろにはオークやフォレストウルフなど様々な魔物たちも混ざっている。


 残された兵士は直ぐに緊急時用のどらを鳴らす。これで中にいる兵士たちが気付くはず。兵士の男はどのような魔物が来ているのか見ようと森を見ると、兵士の顔は青く染まる。


 理由は、本来ならこんなところには現れるはずのないオークキングが現れたからだ。Bランクの魔物、Bランクの冒険者が複数人でようやく対処出来るほどの強さを持つ魔物だ。それが5体も現れたのだ。


 兵士の男は急いで報告しようと戻ろうとするが、その瞬間何かが音を立てて飛んで来た。またしても矢か? と思ったが違う。兵士は気付く間も無く頭を割られる。飛んで来たのはオークキングが投げた斧だったのだ。


 ◇◇◇


「ハーザド侯爵領はどんな感じかな?」


 僕は森の中でハーザド侯爵領が見える位置に立つ。よく冒険者が依頼で森に行く際に使う門からは、大きな音が鳴り響く。


 あの門に殺到している魔物たちは、僕が森の奥にいたものを、光魔法で転移させたものだ。森の少し中に転移させれば、目の前には餌となる人間たちの街がある。頭のないゴブリンやオークは直ぐに街を目指すと考えてやったのだ。


 今頃ハーザド侯爵領は大慌てだろう。これで兵士や冒険者のほとんどは門の方へ向かうはずだ。その隙に僕たちは二手に分かれる。


 ハーザド侯爵の屋敷に向かう僕、ルイーザ、パトリシア、エリーネに。冒険者ギルドに向かうマリンティアさん、マリーシャ、サリーに。冒険者ギルドの中には協力者として、テレーネさんもいる。


 このまま、街を滅ぼしても良いのだけど、ラグレティス先輩のように街を思ってくれている人もいる。彼に今後のハーザド侯爵領は任せるためにも、ここで現ハーザド侯爵には死んでもらわなければ。


 そう思っていたら、マリーシャに袖をくいくいと引っ張られる。何事かと思いマリーシャの方を見ると、マリーシャは魔物が殺到している門を指差す。僕もその方を見ると、そこにはラグレティス先輩が先陣を切っていた。


「彼がここにいるという事は、屋敷には侯爵と弟は残っているのかな?」


「多分そうでしょうね。どうする?」


 僕に尋ねて来るマリンティアさん。彼には生き残ってもらわなければならないからここは


「僕が残るよ。みんなは予定通りにお願い。屋敷の方は前に結界を壊したままだから入れると思う。みんなよろしくね」


 僕の我儘にみんなを付き合わせて申し訳ない。ラグレティス先輩にはお世話にもなったし、僕の中では死んで欲しくない人だ。


 みんなを転移させて僕は仮面をつける。これでバレないと思う。僕はそのまま森の中をかける。時折はぐれに遭遇するけど、クロバで切り落とす。


「わぁ〜、速いですっ、速いですっ!」


 僕の肩に乗ってはしゃぐユフィー。振り落とされないか心配だったけど、楽しそうで何よりだ。それから数分して目的の場所へと辿り着いた。


 そこはまるで地獄のような場所だった。迎え撃つ兵士や冒険者たちはなすすべもなく蹂躙されて行く。命乞いをしたところで、魔物に伝わるはずもなく、皆が殺されて行く。まあ、なんとも思わないが。僕がやった結果だしね。


 その中で奮闘する若い剣士が1人。ラグレティス先輩だ。彼は火魔法を上手い事使い、魔物たちと一定の距離を保ちながら戦っている。


 なんとか兵士と冒険者で耐えているけど、それもそろそろ限界に近いだろう。何故なら、オークキングが動き出したからだ。


 ゴブリンやオークなら兵士や冒険者たちでもなんとか出来るけど、オークキングはそれ相応の実力がなければ厳しい?


 オークキングが巨大な斧を振るうと、切り裂かれる兵士たち。鎧など関係なく真っ二つにされる。彼らには太刀打ち出来ない。


 ……時間的にそろそろかな? ハーザド侯爵と弟、ギルドマスターを殺しているか、捉えているかは知らないけど、もう終わっているはずだ。


 僕は仮面を付けているのを確認して、冒険者に紛れ込む。冒険者へと襲いかかるオークキングへと近づき、一気に切り伏せる。


 周りの兵士たちはぽかーんと僕を見るけど、魔物たちは待ってくれない。僕は土魔法を発動し、地面から隆起させた土の棘で魔物を刺す。


 そして、火魔法を発動、空に5メートル程の炎の球体を発動させる。それをオークキングにめがけて放つ。オークキングは腕を交差させて防ごうとするけど、当然耐えきれるはずもなく、爆散。その魔法を僕は何度も放つ。


 気が付けば、辺りは黒く焦げた跡が残るだけ。生き残った魔物はいない。魔物たちの役目は全うしてくれたから良しとしよう。兵士のほとんどはこちらに来ていたしね。


 ラグレティス先輩が話しかけようと僕の方へやって来る。さてと、もう1つの目的を達成するとしようか。

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