復讐の魔王
23.出発
「お世話になりました、ヘルガーさん。ヘルガーさんのおかげで少しはマシになったと思います」
僕はお世話になったヘルガーさんに頭を下げる。ほんの数ヶ月だけだったけど、ヘルガーさんには本当にお世話になった。
僕の後ろにはリュックをそれぞれ背負ったローザとマリーシャ、それにマリンティアさんもいる。マリンティアさんも話していた通り付いてきてくれるようだ。
ドッペルゲンガーのペルスさんの情報は1ヶ月ほど前の情報らしいので、勇者たちは既に動いているだろう。
なので、まずここから出たら、まずはグレイさんのいる砦まで、上級竜の背に乗せてもらい飛んで行く。そこからは徒歩で一番近い街まで行きそこで情報収集になる。
グランディーク王国の冒険者ギルドは各町にあるのだが、その中でも王都、北のヘルティエンス伯爵領、南のカレイド伯爵領、西のクレイドル侯爵領、東のハーザド侯爵領のギルドが大きい。
理由は王都のギルドがグランディークの本部となり、他の領地はそれぞれ国境が近く、国内では見ない強い魔物がいるので、その魔物を狙って、冒険者たちが集まるからだ。
僕たちが行くのは、砦の近くの東の領地、ハーザド侯爵領になる。多分ここに1人はいるはずだ。まずはそいつを狙う。
「別に構わねえよ。俺も久し振りに懐かしいものが見れたしな」
多分炎心剣の事を言っているのだろう。持ち主が現れなくて100年は経っているのだから、懐かしいのも当然だ。
「お父様、行ってきます」
「おう、寂しくて泣くんじゃねえぞ?」
ヘルガーさんの言葉に顔を赤くして怒るマリンティアさん。マリンティアさんには色々とお世話になっているから、何かしてあげたいな。
「あるじ様、私お外初めてなので、楽しみです!」
言い合う2人を見ていたら、僕の肩に乗るユフィーがそんな事を言ってくる。そういえば、ユフィーが生まれたのもこの地下王宮だったからね。外の世界を知らないのか。
「外には色々なものがあるから楽しみにしててね?」
「はいです!」
僕はユフィーの頭を撫でながら言うと、ユフィーも嬉しそうに頷く。僕たちはローナさんを先頭に地下王宮の中を歩く。ここに結構な時間いるけど、全く覚えられなかったな。侍女がいないと確実に迷っていたよ。
そして、見覚えのある四方にそれぞれ扉がある部屋へとやってきた。ここから地上に続く扉をくぐり、階段を登って行く。
登り終えると、小屋へと出る。ここは初めに来た時と同じ小屋だね。その中を通り、扉を開けると、日差しが僕たちを出迎えていた。
地下王宮とはまた違った明るさで、少し眩しく感じてしまう。
「ほぇ〜、これが太陽さんですか〜。何だか懐かしい感じがします!」
肩に乗るユフィーが目をキラキラとさせて空を見る。記憶には無いけど、何と無くは覚えているようだ。
「おう、待っていたぜ」
小屋から全員が出終えると、レーバンさんが外で待っていた。他にも兵士たちがいる。
「ありがとうね、レーバン。それで竜は?」
「向こうで休んでるよ。付いて来な」
レーバンさんはそれだけ言うと、歩き出す。この前と同じ竜なのかな? そう思いながらレーバンさんたちの後をついて行くと、ルイーザが僕の左手の袖を掴んでいた。
そういえば、ルイーザは高いところが苦手だったね。ここに来る時も、怖くて僕の背中に引っ付いていたし。
「ルイーザ、大丈夫だから、ね?」
「……わ、わかった」
頷くルイーザだけど、それでも顔色が優れないので、僕の袖を握っていた右手を左手で握ってあげる。ルイーザは一瞬驚いた表情を見せるけど、僕の顔を見て微笑む。
「う〜、ずるいです!」
すると、マリーシャが僕の右手を握って来る。マリーシャはそんなに怖がってないからいいと思ったのだけど。
「お嬢は混ざらなくて良いのか?」
「何言っているのよ、レーバンは。私はそんな風に見ていないわ」
「とか言って。お嬢が興味を持っていなかったらついて行くなんて言わねえだろ?」
「うっ……と、とにかく、私は混ざりません!」
僕が2人を見ていると、前の方でレーバンさんと言い合うマリンティアさんの姿があった。何かあったのだろうか? あっ、ニヤニヤとしていたレーバンさんの脇腹をマリンティアさんが殴る。
レーバンさんは脇腹を抑えているが、マリンティアさんはそのままそっぽを向いてしまった。どうしたのだろうか?
「いてて……全く加減を知らないお嬢だせ。ほら、着きましたぜ」
レーバンさんに案内されたのは、ここに来た時に着陸したところだった。そこにはやはり、前と同じ竜が休んでいた。マリンティアさんは竜の側に寄り「よろしくね」とお願いすると、竜も「グルルゥ」と返事をする。 
マリンティアさんはそのまま竜の背に乗る。僕たちも後に続くと、
「エル様、お待ちください」
と、ローナさんに止められた。なんだろうかと思いローナさんを見ると、ローナさんから布で巻かれた物を渡された。
「ローナさん、これは?」
「開けて見てください」
ローナさんに促されて布を取ると、中から全てが漆黒の剣が出て来た。鞘から抜くと、刀身まで真っ黒で、とても綺麗だった。
「その剣は魔剣クロバ、闇魔法の能力を上げてくれる剣です。いざという時は炎心剣があるでしょうが、普段はそれをお使いください、とヘルガー様が」
それは助かる。この前も武器を持ってなくて舐められたからな。普段はこれを使わせてもらおう。いざという時も双剣で使えるだろうし。
「ありがとうございます、ローナさん。有り難く使わせて貰います」
僕はローナさんに頭を下げて、そして竜の背に乗る。全員が乗ったのを確認すると、マリンティアさんは竜に話しかける。竜は少しずつ翼を動かして、そして一気に飛び立つ。みんなから見送られる中、僕たちはようやく目的に向かって進みだしたのだった。
僕はお世話になったヘルガーさんに頭を下げる。ほんの数ヶ月だけだったけど、ヘルガーさんには本当にお世話になった。
僕の後ろにはリュックをそれぞれ背負ったローザとマリーシャ、それにマリンティアさんもいる。マリンティアさんも話していた通り付いてきてくれるようだ。
ドッペルゲンガーのペルスさんの情報は1ヶ月ほど前の情報らしいので、勇者たちは既に動いているだろう。
なので、まずここから出たら、まずはグレイさんのいる砦まで、上級竜の背に乗せてもらい飛んで行く。そこからは徒歩で一番近い街まで行きそこで情報収集になる。
グランディーク王国の冒険者ギルドは各町にあるのだが、その中でも王都、北のヘルティエンス伯爵領、南のカレイド伯爵領、西のクレイドル侯爵領、東のハーザド侯爵領のギルドが大きい。
理由は王都のギルドがグランディークの本部となり、他の領地はそれぞれ国境が近く、国内では見ない強い魔物がいるので、その魔物を狙って、冒険者たちが集まるからだ。
僕たちが行くのは、砦の近くの東の領地、ハーザド侯爵領になる。多分ここに1人はいるはずだ。まずはそいつを狙う。
「別に構わねえよ。俺も久し振りに懐かしいものが見れたしな」
多分炎心剣の事を言っているのだろう。持ち主が現れなくて100年は経っているのだから、懐かしいのも当然だ。
「お父様、行ってきます」
「おう、寂しくて泣くんじゃねえぞ?」
ヘルガーさんの言葉に顔を赤くして怒るマリンティアさん。マリンティアさんには色々とお世話になっているから、何かしてあげたいな。
「あるじ様、私お外初めてなので、楽しみです!」
言い合う2人を見ていたら、僕の肩に乗るユフィーがそんな事を言ってくる。そういえば、ユフィーが生まれたのもこの地下王宮だったからね。外の世界を知らないのか。
「外には色々なものがあるから楽しみにしててね?」
「はいです!」
僕はユフィーの頭を撫でながら言うと、ユフィーも嬉しそうに頷く。僕たちはローナさんを先頭に地下王宮の中を歩く。ここに結構な時間いるけど、全く覚えられなかったな。侍女がいないと確実に迷っていたよ。
そして、見覚えのある四方にそれぞれ扉がある部屋へとやってきた。ここから地上に続く扉をくぐり、階段を登って行く。
登り終えると、小屋へと出る。ここは初めに来た時と同じ小屋だね。その中を通り、扉を開けると、日差しが僕たちを出迎えていた。
地下王宮とはまた違った明るさで、少し眩しく感じてしまう。
「ほぇ〜、これが太陽さんですか〜。何だか懐かしい感じがします!」
肩に乗るユフィーが目をキラキラとさせて空を見る。記憶には無いけど、何と無くは覚えているようだ。
「おう、待っていたぜ」
小屋から全員が出終えると、レーバンさんが外で待っていた。他にも兵士たちがいる。
「ありがとうね、レーバン。それで竜は?」
「向こうで休んでるよ。付いて来な」
レーバンさんはそれだけ言うと、歩き出す。この前と同じ竜なのかな? そう思いながらレーバンさんたちの後をついて行くと、ルイーザが僕の左手の袖を掴んでいた。
そういえば、ルイーザは高いところが苦手だったね。ここに来る時も、怖くて僕の背中に引っ付いていたし。
「ルイーザ、大丈夫だから、ね?」
「……わ、わかった」
頷くルイーザだけど、それでも顔色が優れないので、僕の袖を握っていた右手を左手で握ってあげる。ルイーザは一瞬驚いた表情を見せるけど、僕の顔を見て微笑む。
「う〜、ずるいです!」
すると、マリーシャが僕の右手を握って来る。マリーシャはそんなに怖がってないからいいと思ったのだけど。
「お嬢は混ざらなくて良いのか?」
「何言っているのよ、レーバンは。私はそんな風に見ていないわ」
「とか言って。お嬢が興味を持っていなかったらついて行くなんて言わねえだろ?」
「うっ……と、とにかく、私は混ざりません!」
僕が2人を見ていると、前の方でレーバンさんと言い合うマリンティアさんの姿があった。何かあったのだろうか? あっ、ニヤニヤとしていたレーバンさんの脇腹をマリンティアさんが殴る。
レーバンさんは脇腹を抑えているが、マリンティアさんはそのままそっぽを向いてしまった。どうしたのだろうか?
「いてて……全く加減を知らないお嬢だせ。ほら、着きましたぜ」
レーバンさんに案内されたのは、ここに来た時に着陸したところだった。そこにはやはり、前と同じ竜が休んでいた。マリンティアさんは竜の側に寄り「よろしくね」とお願いすると、竜も「グルルゥ」と返事をする。 
マリンティアさんはそのまま竜の背に乗る。僕たちも後に続くと、
「エル様、お待ちください」
と、ローナさんに止められた。なんだろうかと思いローナさんを見ると、ローナさんから布で巻かれた物を渡された。
「ローナさん、これは?」
「開けて見てください」
ローナさんに促されて布を取ると、中から全てが漆黒の剣が出て来た。鞘から抜くと、刀身まで真っ黒で、とても綺麗だった。
「その剣は魔剣クロバ、闇魔法の能力を上げてくれる剣です。いざという時は炎心剣があるでしょうが、普段はそれをお使いください、とヘルガー様が」
それは助かる。この前も武器を持ってなくて舐められたからな。普段はこれを使わせてもらおう。いざという時も双剣で使えるだろうし。
「ありがとうございます、ローナさん。有り難く使わせて貰います」
僕はローナさんに頭を下げて、そして竜の背に乗る。全員が乗ったのを確認すると、マリンティアさんは竜に話しかける。竜は少しずつ翼を動かして、そして一気に飛び立つ。みんなから見送られる中、僕たちはようやく目的に向かって進みだしたのだった。
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