復讐の魔王

やま

19.吸血

「……これは凄いな」


 僕は次女に案内されてヘルガーさんと死霊国の魔王リッテルがいるという応接室のある廊下にやって来たのだけど、廊下一帯に濃密な死の気配がある。ここから先は侍女たちも行けないようだ。


「ひゃあ〜、これは凄いですね〜」


 僕の肩に乗るユフィーは口に手を当てて驚いているけど、あまり変わった様子は無い。ユフィーは大丈夫そうだな。良し、行くか。


 ……確かにこれはきついね。さっきはまだ範囲外だったから普通にいれたけど、今は死の気配が僕の体中にネットリと絡みついてくる。全身に刃物を突きつけられている感じだ。


 だけど、この程度で怯んでもいられない。僕は応接室に向かって歩き始める。近づくにつれてより濃くなってくるね。


 そして、ようやく応接室に辿り着いた。僕が扉をノックすると、中からヘルガーさんに入室の許可が出る。


 扉を開けて中へ入った瞬間、僕は手に憤怒の炎心剣レーヴァテインを発動させて左右から来たスケルトンソルジャーを切り落とした。いきなり襲ってくるとは。


「ほぅ、私の雰囲気に鈍っていればスケルトンソルジャーの気配も分からなかったはずなのだが、これは中々」


 そんな事をした張本人は悪びれもせずにそんな事を言ってくる。全身ガイコツでローブを纏っているだけの人物。横にはとんでもない大きさの魔石を付けた杖を持ち、指には色とりどりの宝石が付けられた指輪を嵌めている。この人が死霊国の魔王リッテルか。


「よく着たな、エル。まあ、座れや」


 僕はヘルガーさんの言葉通りにリッテルさんの向かいに座る。リッテルさんは目の無い暗闇の奥にある赤い光から僕をじっと見てくる。そしてカタカタと笑い出した。夜に出会ったら物凄く怖いね。


「確かにシスティーナの面影がある。まさか勇者との間に子供を作っていたとは。私も騙されたな」


「悪りぃな。シスから口止めされてたんだよ」


 どうやら、リッテルさんはシスティーナさんの事を知っているようだ。って、事はリッテルさんも最低でも100年近くは生きているって事だよね? 魔族は全員それくらいの寿命があるのかな?


「それで、僕を呼んだ理由は?」


「ああ、そうだったな。お前を呼んだ理由はお前にも関係ある話を今からするからだ」


「僕に関係ある話?」


 僕に関係のある話か。一体何なのだろうか?


「私から話そうか。なにそう身構えなくていい。君にはプラスになる話だ」


「僕にはプラスになる話?」


「ああ、私の力を君にあげようかと思ってね」


「……はっ?」


 僕にはこの人が一体何を言っているのか全く分からなかった。なぜ僕にそんな事を言ってくるのか。この人に何の得があるのか分からなかったからだ。


「まあ、率直に言うと私は君のご先祖様と一緒に戦った仲間の一人でね、昔は『大賢者』なんて言われていたのだよ」


「『大賢者』って、あのハヤテ・エンドウと旅をしたっていうあの? 絶世の美女だと言われた……」


 僕は下から上までじっくりとリッテルさんを見る。今はそんな面影が1つもないけど……でも、それならどうしてリッテルさんは魔族になったんだろうか? ヴァンパイアのような眷属ってわけでも無さそうだし。


「私は魔族との戦いの途中に死んだのは知っているだろう。その後に私は思ったより死んだ事に対する後悔が深かったようでね。気がつけばスケルトンマジシャンになっていたのだよ。それからは進化していき、今みたいなノーライフキングになったわけだ」


 そう言いながらリッテルさんは自分に魔法をかける。すると、体が逆再生しながら戻っていくではないか。うっ……中々グロいけど。


 全ての体が再生して現れたのは、物凄く綺麗な女性だった。確かに彼女ほどの美しさなら絶世の美女と言われても間違いないだろう。先ほどの逆再生を見ていなければ。


「なんでも、君は勇者たちに復讐をするのだろ? そのために力を求めていると聞いたのだ。ヘルガー、ヴァンパイアの特性はすべて話したのかい?」


「いや、最後のやつだけはまだだ。まだそんな事をする事は無いと思っていたからな」


 まだ、ヴァンパイアの特性についてあるのか。本能である程度はわかっているけど、その最後のやつだけはわからないのだ。今言われて初めてあるのを知ったぐらいだ。


「まあいいか、私から話すよ。ヴァンパイアは周期的に血を飲まないといけないのは知っているよね?」


 リッテルさんの言葉に僕は頷く。それは当然だ。なんて言ったって僕の命に関わる事なのだから。


「血を少し飲めば渇きは無くなるはずだ。だけど、この吸血にはもう1つ能力があってね」


「ああ、ヴァンパイアが相手の血を一滴残らず飲み干せば、相手の力の一部を手に入れる事が出来る。その上、血の渇きがほとんど無くなる」


 それは物凄く魅力的な能力だけど、それをしてしまえば飲んだ相手は……


「お前の想像通り、相手は死ぬだろう。だからこれをするのは病気で余命が少ない相手か、瀕死の重傷を負っているやつだろう。それか」


「私のように死を望んでいる者か、だね」

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