復讐の魔王

やま

15.幻影闘技場

「お前らには、ここに入ってもらう」


 僕たちが魔国ベルヘイムにやって来て1週間が経過した。この1週間で魔族の事や、ヴァンパイアの事について色々と教えてもらった。


 ヴァンパイアの特性については本能ではわかっていたはずなのだが、ヘルガーさんの実体験の伴う話は中々興味深かった。


 ただ、ヴァンパイアの特性で1番困ったのは、ルイーザたちに僕の血を飲ませた時だった。


 何日かに一回は血を飲まないといけないので、今までは魔物や動物の血を飲んでいたのだけど、一回は人の血も飲んでおけと、ヘルガーさんに言われたので、飲んで見たのだ。


 僕はヘルガーさんが飼っている血用の奴隷から血を貰った。血用の奴隷と言っても、普段はこの王宮の侍女として働いているらしく、ヘルガーさんが飲みたくなった時に飲んでいるようだ。


 初めて飲む人の血は、美味しいしか言えなかった。他に言葉が思いつかないくらいに美味しかったのだ。なんでも、魔力が高い人ほど血は美味しいらしい。血用の奴隷の人たちも、普通の人に比べて魔力が多いそうだ。


 そして、ルイーザたちに僕の血を飲ませたら、2人とも胸を押さえて座り込んでしまったのだ。僕は焦って2人の顔を伺うと、2人とも顔を赤くさせて、息がとても荒かった。


 僕にはどういう状態かわからなかったけど、ヘルガーさんがその状態に気が付いて、2人をすぐに寝室に連れて言ってくれた。そのあと聞いた話なのだが、さっき話した通り、魔力の高い人の血は美味しいらしいのだが、高過ぎると体にあまり良くないらしい。


 同性ならお酒を飲んだように酔うらしく、異性ならさっきの2人みたいに1種の興奮状態になってしまうらしい……って事はさっきの2人は興奮していたのか。


 時間が経てば血の影響も抜けるらしいので、あのまま部屋で休ませれば良いと、ヘルガーさんが言っていた。


 そんな事もありながらも、何とかこの国での生活にも慣れ、今日はヘルガーさんに地下王宮の特別な部屋に連れて来て貰った。


 ヘルガーさんが扉を開けて中に入るのを、僕、ルイーザ、マリーシャ、マリンティアさん、ローナさんが付いていく。


 中はただ広い空間の部屋なのだけど、壁のあちこちに魔石が埋め込まれていた。


「この部屋は、闇魔法の幻影の効果を最大限引き出す部屋だ」


 幻影の効果を最大限引き出す部屋か。見渡す限りは全く変わった様子のない部屋だけど。だけど、この部屋の事を知っているマリンティアさんとローナさんは硬い表情をさせている。たの表情の変わらないローナさんですらそうだ。何かあるのだろう。


「高度な幻影は本物と変わらない。今から幻影で俺が今まで戦って来た魔物を再現する。まあ、途中で負けるだろうが、20戦出来たら俺が思う最強の敵と戦ってもらう。そいつに勝てば終わりだ。何年かかるだろうな?」


 ヘルガーさんはニヤリと笑いながら部屋を出て言ってしまった。マリンティアさんは腰に下げている剣を抜く。柄から刀身まで全てが蒼白く輝く細剣、水剣ドライシス。


 いわゆる魔剣というやつだ。魔力を流す事により、魔法が使えなくても、その武器に宿る属性攻撃が出来るようになる武器だ。


 あの水剣ドライシスは名前の通り水魔法を使えるようになる。そして、魔力の量によっては、水を性質変化させた氷魔法も使えるらしい。とんでもない武器だ。


 昨日ここに連れて来られる事は聞いていたので、ある程度の武器の性能と役割についてはみんなで話し合った。


 まあ、それよりもマリンティアさんとローナさんがついて来てくれた事に驚いたのだけど。2人は僕たちの目的には全く関係無いのに。理由は聞かなかったけど、ありがたい。


 何が出てくるかわからないけど、まずはマリーシャとローナさんが後衛だ。マリーシャは魔力増加、威力増加の効果がある杖を持ち、ローナさんはメイスを持っている。


 そして、次に両方いける僕になり、前衛を剣術だけなら僕より上手いルイーザと、僕と同じく両方いけるマリンティアさんが立つ。


 ルイーザは両手片手両方扱えるバスタードソードを持っている。左手には両手持ちするときの邪魔にならないように魔法盾を発動出来る籠手を装備している。


 全部、この王宮にあった武器や防具をヘルガーさんから貰ったのだ。どうせ武器庫で埃被って眠っているだけだからと。


 僕も憤怒の炎心剣レーヴァテインを発動する。これでみんなの準備は完了だ。


 すると、準備が終わるのを待っていたかのように、部屋に魔力が充満していく。そしてあたりの風景が変わっていった。


 周りはまるで洞窟のように薄暗く、でこぼことした岩肌の壁になる。


「来るわよ」


 マリンティアさんの声に構えると、離れた場所に黒い靄のようなものが次々と現れる。その靄は次第に形を変えていき現れたのは


「ゴブゥ!」


 僕たちの腰ぐらいの高さしかない緑色の魔物、ゴブリンだった。だけど、その数が尋常じゃない。次々と現れるゴブリンたち。しかも中にはゴブリンから進化した亜種までいる。


 ゴブリンウォーリア、ゴブリンソルジャー、ゴブリンマジシャン、ゴブリンモンク、ゴブリングラップラー。それらのハイゴブリン種にゴブリンの中でも強力な個体のゴブリンジェネラルが4体。


 そして、1番奥の玉座に座る一際大きなゴブリン、ゴブリンキングまでもが。


 ははっ、初めの部屋でこれだと、最後の敵なんてどうなるのだろうか。考えただけでも体が震えて来る。だけど、この震えは恐怖からではない。今までは戦ったことが無いような強敵と戦える武者震いだ。


 さぁ、僕の力の糧となってもらおうか。

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