復讐の魔王

やま

14.現魔王の実力

「……その勇者どもを殺すために、強くして欲しい、か」


「はい。僕にはどうしてもそいつらを許せないんです」


 今思い出してもふつふつと怒りと憎しみが湧いてくる。笑いながらアルとビルを殺したあいつらが。ユフィーが死んだと笑ったあいつらが。僕たちの家族を殺してのうのうと生きている貴族たちが。


 僕の言葉に考えるヘルガーさん。マリンティアさんは僕を見て悲しそうな顔をする。


「良いだろう。付いて来い」


 しばらく考えていたヘルガーさんだけど、突然立ち上がりそんな事を言ってくる。僕たちは顔を見合わせるけど、ヘルガーさんの後ろにマリンティアさんたちも付いて行くので、僕も立ち上がり付いて行く。


 再び現れる迷宮のような道。絶対にこの道は僕には覚えられないよ。何かコツでもあるのかな? そう思いながらも、後ろをついていくと、他の部屋に比べて一際大きな扉の前にやって来た。僕の身長の倍ぐらいあるぞ。


 その扉をヘルガーさんは気にする事なく軽々と開ける。見た目より軽いのかな。そう思って片方の扉に触れてみると、お、重っ! 僕が両手で持たないと踏ん張れないぐらい重たかった。なんだこれ?


「この扉を開けるには少しコツがいるのよ。ただ力だけだとただの重たい扉よ」


 そこでマリンティアさんがそんな事を教えてくれた。何かしないといけないって事? でもヘルガーさんが何かしたようには見えなかったけど。ただ手のひらを扉につけただけで。わからない。


「おい、さっさと来い」


 おっと、本来の目的を忘れていた。僕たちは部屋に入ると、おおっ、かなり広い部屋だ。王宮にあった訓練場並みの広さだ。


「ここは魔法障壁も張ってあるから、いくら暴れても大丈夫だ。まずはお前の力を見せてみろ」


 そう言って、僕を見てくるヘルガーさん。まさか、ヘルガーさんが直接相手してくれるなんて。今の僕の力がどのくらいか試せる。相手は100年前のハヤテ・エンドウを知っている人物だ。油断せずに行こう。


 僕は右手に憤怒の炎心剣レーヴァテインを発動。ヘルガーさんに向かって構える。ヘルガーさんは僕の炎心剣を見て懐かしそうな顔をする。


 マリンティアさんたちは扉の側まで下がっていた。それを確認したヘルガーさんが腰を低く構えると、周りの空気が重くなったように感じる。息苦しい。


 そして、気がつけば先ほどまで視界の中にいたヘルガーさんの姿は消えて


「どこ見ている、小僧?」


 そんな声が聞こえたのと同時に脇腹に衝撃が走る。僕は気がつく暇もなく壁際まで吹き飛ばされてしまった。


「がっ……げほっ……はぁ……」


 なんだ今の速さは!? 全く反応出来なかったぞ!? そう思いながら痛む脇腹を押さえていると、僕に重なるように影が被った。それと同時に襲いかかる殺気。


 僕は直様その場から転がるように飛び退くと同時に、僕がいたところに足が踏み下ろされる。そして、そこを中心に衝撃が走り、地面に亀裂が走る。


 いつの間にかヘルガーさんが僕の側に来ていて、僕を踏み潰そうとしていたのだ。


「おら、何ぼーっとしてやがる。次はこっちだ」


 考える暇も無いほどの速さ。新しい力を手に入れて少しは強くはなったと思っていたけど、僕の力は全然だった。


 まさか、現魔王相手に手も足も出ないどころか、自分の意思で体を動かす事が出来ないなんて。今の僕は避けさせられているだけだ。


 ただ殺気の放たれた方と反対の方へと逃げているだけ。攻撃し返すなんて考える暇が無いほどだ。それどころか、今のヘルガーさんは避けられるように手加減までしている。


「これで終わりにしておくか」


 僕が肩で息をしているのを見て、そう言ってくるヘルガーさん。気が付けば目の前にヘルガーさんは立っていて、額に強烈な痛みが走る。僕は頭を押さえてしゃがみ込むことしか出来なかった。


「どうだ、俺のデコピンは痛いだろ」


 今のがデコピン!? 頭が吹き飛ぶかと思ったよ! しかし、本当に何も出来なかった。その上、ヘルガーさんには手加減される始末。システィーナさんもこのぐらいの力はあったと考えて良いだろう。それと同等に戦うハヤテ・エンドウの力もとんでもない。


「まあ、まだお前は魔族になって2ヶ月も経ってないだろう。そんな奴に俺が負けるわけがない」


 それはそうなのだけど、もう少し何か出来るだろうと思っていた分辛い。


「今の勇者がどれだけ強いかは知らねえが、せめて今のスピードには反応出来るようにはならねえとな」


 今のスピードには……。今のスピードについて来られるようになるにはどのくらいかかるのだろうか。


「それでお父様、彼らはどうするの?」


「あん? システィーナが俺に頼れって言って、こいつらは強くなるために頼って来た。なら鍛えてやるよ。ここに来た事を後悔するぐらいにな」


 ニヤリとまるで悪魔のような笑みを浮かべるヘルガーさん。いや、ヘルガーさんは悪魔より上の魔王だったね。マリンティアさんもやれやれと言いながらも、ルイーザたちを鍛えてくれるそうだ。


 こうして、僕たちの魔国生活、もとい、地獄の特訓の日々が始まった。

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