復讐の魔王

やま

12.魔国ベルヘイム

「ようやく着いたわね。ここが、私たちが住む国、魔国ベルヘイムよ」


「……ははっ、まさかこんな日が来るなんて」


「ひぃぃっ! えええ、エル兄上!」


「これは凄いですね!」


 今僕たちは空を飛んでいる。いや、正確に言うと空を飛んでもらっていると言った方が正しいのだろうか。その理由は


「まさか、竜の背中に乗れる日が来るなんてね」


 そう僕たちは竜の背中に乗っているのだ。しかも竜の中でも、ワイバーンやレッサドラゴンのようなブレスを吐かない下級竜だなく、ブレスを吐く事が出来る上級竜だ。


 竜種は、下級、上級、超級、六色王がいる。六色王はそれぞれの魔法属性の頂点にいる竜種の王で、この世界で6体しかいない。当然僕も見た事ないけど、確かマリンティアさんのお母さんが青竜王って言っていたね。


 ……そう考えたら、魔王と青竜王の子供であるマリンティアさんって、国の中だと物凄く高い地位にいるんじゃないのか?


「それじゃあ、降りるわよ」


 そして、マリンティアさんは竜を魔国ベルヘイムの中に降りさせる。でも、やっぱり竜は凄いな。あの砦からまさか1日でここまで飛んで来るなんて。馬車でも1ヶ月ぐらいはかかるだろうに。


 しかし、まさか魔国まで連れてきてくれるとは。やっぱりグランディーク兵たちを全滅させたからかな? 昨日全滅させた後、僕たちを連れて行ってくれることになったのだ。しかも、マリンティアさん自ら。


 なんでも、今僕たちが乗っている上級竜はマリンティアさんの言う事しか聞かないらしい。それに魔王と会いたいのなら、マリンティアさんがいた方が何かと面倒がなくて良いようだ。


 砦の方はグレイさんが残るらしい。最後まで僕を睨んでいたけど、マリンティアさんが心配なのだろう。仕方ない。なので、魔国へとやってきたのは、僕、ルイーザ、マリーシャ、マリンティアさん、ローナさんの5人だ。


 ズドォン!


「うおっ!」


「きゃあぁっ!」


「あはは〜!」


 ……ふう、軽く焦った。上級竜が着地したのか。突然の揺れだったのでびっくりしてしまった。後ろでは高いところが苦手だったのか、ルイーザが僕の背にビシッと引っ付いている。


 その後ろで、マリーシャは楽しそうに辺りを見回していた。初めての魔国という事で珍しいのだろう。


「さあ、降りて。お父様のところへ行きましょう」


 マリンティアさんとローナさんは竜の背からピョンと簡単に飛び降りてしまう。僕も降りようとしたけど、ルイーザが服を離してくれない。仕方がないので、ルイーザをお姫様抱っこして飛び降りる。


 その横にマリーシャが飛び降りて来る。僕の腕から降りたルイーザをジッと見ていたけど。そこに、武器を持った兵士たちがやってきた。その中でも一際大きい兵士がいる。


 あれは獣人だな。身長が2メートル少しに、大きなたてがみに、筋骨隆々の体に、僕の身長ほど、僕の体2つ分ほどの幅のある大剣を背負っている男が、マリンティアさんの前に立つ。


「お嬢、予定より帰って来るのが早いんじゃねえのか?」


「ただいま、レーバン。少し予定外の事が起きたのよ」


「予定外の事ねぇ。その後ろの小僧どもの事か?」


 獣人の男は僕たちを見て殺気を放ってきた。 後ろの2人は体を強張らせるけど、僕は獣人の男の殺気を受け流す。この体になってからそういうのにも敏感になった。


「ほう、俺の殺気を受けても涼しそうな顔をした奴がいるじゃねえか。で、お前らは誰だ? 部外者なら容赦はしねえぞ?」


 そう言って、自分の大剣に手をかける獣人の男。しかし、遮るように僕たちと獣人の男の間に入る人影が。


「やめなさい、レーバン。彼は私が連れてきたお客よ。彼に手を出すのは許さないわ」


 そう言って睨み合うマリンティアさんとレーバンさん。えっ、何これ。気が付いたら一触即発よ状態になっているだけど。


「……はぁ、わかったよお嬢。だからそんな睨むなって。お嬢に睨まれると、姉御を思い出すからよ」


「ふふ、お母様に何度も泣かされたのを思い出しちゃった?」


 そう思っていたら、殺気は霧散して普通の雰囲気になった。ふぅ、良かった。僕のせいで問題が起こるところだった。


 それから2人は何かを話すと、レーバンさんは僕の方を見てニヤニヤとし始めた。何を話したんだろう? 少し不安だ。


 その間にルイーザは回復して、マリーシャも落ち着きを取り戻していた。ローナさんは表情は変わらずにマリンティアさんの後ろに立っているだけだ。


 そして、準備が出来たのか、笑顔で僕たちの方へ振り向くマリンティアさん。


「それじゃあ、行きましょうか。ようこそ、魔国ベルヘイムへ!」


 こうして、僕たちは初めての魔国へとやって来たのだった。

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