復讐の魔王

やま

9.遭遇

 王都を出発して10日ほどが経ったある日。ようやく僕たち、殺された砦へと戻ってきた。ただ、1つ問題があって、王都の兵士たちが戻ってきていた事だ。砦の上で見張りをする兵士。


 確かに戻って来られるだけの時間はあったね。僕たちが殺されたのは今から3週間ほど前。それから僕が1週間かけて王都に戻り、ルイーザとマリーシャを助けた。


 その日にルイーザを眷属にして、5日後にはマリーシャを眷属にしたため慣れてもらうのに時間を使って10日ほど、ようやく今日取手に辿り着いたのだ。


 そう考えたら兵士がいるのも当然か。僕の眷属となって視力が良くなった2人も気が付いたみたいだ。ちなみに2人には外見的変化は僕ほどは無い。少し歯が伸びたとかそれぐらいだ。他人が見ても普通の美女だ。


 しかし、どうしたものか。兵士がいるのなら、どうにかして通る方法を考え……ん? あの兵士たちって……,


「エルお兄ちゃん。あの兵士たちってもしかして……」


 マリーシャもどうやら気が付いたようだ。ルイーザはまだ慣れないのか「ん? ん?」と首を傾げている。


「ルイーザ、落ち着いて見たらわかる」


「んん〜……ん!? あれは……魔族か?」


 ようやくルイーザもわかったようだね。そう。僕たちが驚いたのはグランディーク王国の国境砦に、魔族たちがいたからだ。


 でも、よくよく考えればおかしな話ではない。僕たち元々砦にいた兵士たちが見殺しにされたまま砦は放置されていた。


 魔族たちもこの砦の事は逐一観察していたはずだ。そして、中の様子がわからなくても、砦内で何か問題が起きたのは、外からでもわかるはず。


 そして、砦の中の兵士たちは全滅。砦は人1人いない状態になれば、魔族も放っておかないだろう。この3週間ほどで、魔族領から兵士を集めて来たってところかな?


「それでどうするのだ、エル兄上。このまま行くのか?」


 うーん、どうしよう。そう思っていたら、砦から何かが降って来た。何あれ?……氷?


「っ、ルイーザ、マリーシャ!」


 僕はルイーザとマリーシャを掴んで光ノ道で短距離転移をする。それと入れ違うように僕たちがいたところに氷の塊が飛んで来た。危なかった。


 僕たちのところから、砦まで2キロ程は離れているのに気づかれるなんて。向こうにもバレるかもしれないからギリギリまで離れたのに。


 そして、砦から飛んでくる1人の女性。その女性は、透き通るような青い髪をしており、頭からは二本の角が生えている。そして背中から龍の翼が生えており、その翼をはためかせて飛んで来た。


「コソコソと、何の用かしら?」


 ルイーザやマリーシャも美人だけど、負けず劣らずの美人。その上ユフィーに似た雰囲気がある。その女性は腰に差している白いレイピアを抜いて構える。


「ま、待ってくれ。僕たちは怪しいやつじゃない!」


「ふん。遠くからコソコソとこっちを見ている人間が怪しくないと?」


 青髪の女性はそれだけ言って、一気に踏み込んでくる。速い! そして僕の喉元を目掛けてレイピアで突いてきた。


「くっ! 憤怒の炎心剣レーヴァテイン!」


 僕はすぐに右手に憤怒の炎心剣を召喚して、僕の喉元目掛けて迫るレイピアを上に弾く。


「なっ!? あなた、その剣は!?」


 青髪の女性は僕が突然剣を出した事に驚くけど、僕はそれを無視して攻める。話し合おうと思ったけど、そっちがその気なら僕も手加減はしない。


「炎弾!」


「アイスシールド!」


 僕が炎の弾を放つと、青髪の女性は目の前に氷の盾を発動した。水属性の上位魔法、氷魔法か。僕の魔法は氷の盾にぶつかり防がれた。


 だけど、そのまま切りかかる。青髪の女性はレイピアで防ぐけど、元々レイピアは防御に向かない剣。細剣ではそう、何度も防ぐ事は出来ない。


 青髪の女性もそれはわかっているのだろう、少しずつ回避に専念している。


 僕が炎心剣を振り下ろすと、氷魔法で強化したレイピアで受け止める。そこに青髪の女性は蹴りを放ってくるが、僕は後ろに下がり避ける。


 僕と青髪の女性は距離を取って睨み合う事になった。そして、僕が炎心剣に炎を纏わせて切りかかろうとした時


「お嬢!」


 と、砦の方から魔族がやって来た。数は200ほど。気が付けばルイーザとマリーシャも僕の側まで来て剣と杖を構えていた。そして僕たちを囲むように立つ魔族たち。これは……不味いかも。

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