復讐の魔王

やま

4.再会

「ふぅ、こんなコソコソと王宮に戻って来るとは思わなかったね」


 僕は父上たちの骸を弔った後、王宮へとやって来た。目的はルイーザとマリーシャを助けるためだ。ダインさんに聞いた話だと、彼女たちは王宮の地下の牢獄に囚われているらしい。


 王宮の地下の牢獄といえば1つしかない。場所は僕も知っている。何度か犯罪者を入れた事があるからね。そのためにまずは王宮に入らなければならないのだけど、正面は当然ながら兵士が見張っている。


 他にも裏門などがあるが、そこにも当然ながら兵士がいる。だからそれ以外から入ろうと思ったら城壁を越えるぐらいしか方法はないのだが、城壁は4メートルほど。普通の人間は飛び越えられない。


 そう、普通であれば。今の僕は普通では無い。この高さの城壁なら飛び越えられるだろう。ただ、そのまま飛び越えてもバレる可能性があるので、闇魔法を使う。


 夜だけに使える、闇に紛れ込ませて認識を薄くさせる魔法を。これを使えば、僕の影が薄くなり、存在を感じにくくさせる。そのかわり、昼間に使ってもあまり効果が無いみたいだけど。


 僕自身に魔法をかけて城壁へと跳ぶ。前までならここまで跳べなかったのに、魔族の身体能力はとんでも無いな。


 それにしても……兵士が少ない。少な過ぎる。城壁の上から見ても、数える程しか兵士はいない。まあ、深夜近くになるから少ないのは当たり前なのだが、前に比べるとかなり減っていると思う。警らの数が、かなり減っているからね。


 デンベルの奴が減らしたのだろうか? まあ、こっちとしては侵入しやすいから有難いのだが。


 僕は城壁から飛び降りる。飛び降りる時も魔族の身体能力を駆使して、音も無く着地する事に成功する。さすがに足が少し痺れるがそれだけだ。


 そのまま城壁沿いに目的の牢獄まで進む。場所は王宮の外れで、近くに兵舎があるから、場所は暗闇でもわかりやすい。というよりか、ヴァンパイアの特性のおかげで、夜とは思えないほど良く見える。


 そう思って進んでいたら、前から見回りの兵士が2人やってきた。一応いるのはいるのか。ただ、そいつらの話す内容が耳に止まった。耳も良いため少し離れていても聞こえてくる。


「はぁ、見回り面倒ですね。みんなと同じように楽しみたいですよ」


「仕方ないだろう、当番なんだから。だが、お前の気持ちもわかるよ。勇者様たちがいる王宮に誰かが攻めてくるわけも無いのに、一応と見回りをさせて、上の人らは、あのお嬢様たちで楽しんでいるわけだ」


「まさか『剣姫』と『魔姫』にヌいてもらえるなんて、高級娼館の娼婦でも霞むぐらいですからね。でも、本番は無しなんでしょ?」


「ああ、処女じゃ無くなると奴隷としての価値が下がるからだとデンベル公爵の指示らしい。でもあの綺麗な手や口でシテ貰ったら……」


「想像しただけでも、やばいですよね!」


 そんな声が聞こえてきたのだ。それだけで彼女たちご何をされているのかわかってしまった。僕は怒りのまま闇魔法、影縫シャドウバインドを発動。僕の影が2人の見回りへ伸びて捕らえる。


 見張りは驚いて声を出そうとするが、それよりも先に影が口を塞ぐ。この魔法は自分の影、もしくは僕が接している影を動かす事が出来る。中々便利だ。


 そのまま、見回りの2人を僕のところまで引きずってくる。そして目も影で隠して僕を見えないようにする。今は仮面をつけているから素顔は見られないが用心に越した事はない。


 僕は憤怒の炎心剣を出して、片方の男の方へペチペチと当てる。炎はかなり抑えられているが、それでも、皮膚を焼くには十分の熱さだ。男は頰が焼かれる度に、体を動かす。口を封じていなければ叫んでいただろう。


「お前に質問をする。ぼ……俺の質問にのみ答えろ。それ以外の言葉を発したら刺す。わかったな?」


 少しでも、僕だってバレないように一人称も変えておこう。慣れないけど今はこれで良い。僕の言葉に頰を焼かれた男は何度も頷く。もう1人の方は耳も封じておく。


「まずはお前たちが話していた2人はどういう状況だ?」


「ぶはあっ! だ、だれ……むぐ! ーーーー!!!」


 早速質問以外の言葉を発しようとしたので、肩に炎心剣を突き刺す。それと同時に口を再度塞いだから叫び声も聞こえない。


「さっき言ったはずだ。質問以外の言葉を話せば刺すと。今度話せば右腕を切り落とす。わかったな?」


 僕の言葉に男は再び頷く。それから僕の質問には素直に答えていく。


 ルイーザとマリーシャはダインさんの情報通り地下牢にいるらしい。ただ、状況がかなり悪い。


 デンベルの野郎が、調教と称して、2人に兵士たちの相手をさせているらしい。傷つけてしまうと奴隷として価値が下がってしまうから本番はさせてないようだが、それ以外の事はほとんどさせられていると言う。


 兵士が少ないのもそれが理由の1つらしい。元々休みのやつもいるし、デンベルが数を減らしたのもあるそうだが、2人のところに毎晩10人ほどが行っているという。


 夜がその時間らしく、今もさせられているらしい。俺はその言葉を聞いた瞬間、男の喉元に炎心剣を刺してしまった。怒りで手元が狂った。まあ、どうせ殺す予定だったから良いのだが。


 ついでにもう1人の方も殺す。生かしておく理由も無いしな。死体は城壁の側の植垣に隠しておく。ここなら直ぐにはバレないだろう。


 辺りを見回しても他に見回りの姿はない。地下牢まで走る。


 さすがに地下牢の前には兵士が2人立っているが、闇魔法影針シャドウニードルを発動。僕の影から、王宮の影を伝って、兵士の影へと伸びて、背後から兵士の喉元を突き刺す。兵士たちは声を発する事なく倒れる。


 そのまま地下牢へと進む。階段を下りるにつれてカビ臭い匂いが漂ってくる。牢屋の周りは光がなく真っ暗だ。牢屋の中にいる人も眠っている。ただ、一番奥の個室からは光が伸びていた……あそこか。


 僕は音を立てずにゆっくりと近づく。速く向かいたい気持ちを抑えて。そして、個室の側にまで来ると、中の声と中から漂って来る異臭が臭って来る。


「ほらもっとしっかりとしやがれよ。また叩かれてぇのか?」


「や、やめろ、マリーシャはもう限界なんだ。だから……むぐっ!」


「うるせえな。お前は俺のを咥えていたら良いんだよ!」


 ……もう我慢の限界だな。だが、ここで入ってもバレるだけだ。幻影を発動し姿を大雑把にだが、先ほど出会った兵士に変えておく。触れられたら魔法は解除されるが、その前に終わらす。憤怒の炎心剣も普通の剣に見立てて入る。


「あぁん? ベン、お前今日は見回りだったはずだろ? まさかサボってきたんじゃねえだろうな?」


 僕が部屋に入るとそこには8人の男たちが立っていた。下半身を露出させたまま。そして足下にはただの布切れしか着ていないルイーザとマリーシャがいた。ただ、ルイーザは男の汚い物を咥えさせられ、マリーシャは倒れていた。


「おい、ベン、無視するんじゃ……げへぇえ?」


 目の前の男が俺に近づこうとしてきたので、炎心剣で首を切り落とす。高熱で肉を焼いたので血は吹き出ない。


 周りの男たちは唖然としたまま僕を見て来る。ルイーザもだ。僕は次に近くにいた男を蹴り飛ばす。男の腹は陥没して骨の折れる感触がある。そして、そのまま壁にぶち当たり、顔に炎心剣を突き刺す。


 男の壁に激突する音でようやく体を動かす男たち。だけど、遅過ぎる。我先にと逃げようとした男の後ろ首を掴み地面に顔を叩きつける。顔が潰れて脳が潰れて出て来る。


「くっ、くそ、ウィンド……へっ?」


 マリーシャの側に立っていた男が、僕に向かって魔法を放とうとしたため直ぐに距離を詰めて、僕に向かって伸ばしていた腕を切り落とす。そして空いている左腕で殴り飛ばす。男の首の骨が折れた。これで4人。


影縫シャドウバインド


 残りの4人も逃げようと扉に向かって走っていて、1人ずつ狙うのは面倒だったので影縫で縛り上げる。これでこいつらを殺せば、ここの兵士は全滅だろう。


 僕は男たちが縛られているのを確認すると、ルイーザたちの方を向く。ルイーザはマリーシャを守るように抱きしめていた。


「大丈夫かい、ルイーザ?」


「ヒィッ! だ、誰だ、き、貴様は!」


 僕が一歩近づくと、ルイーザは僕から離れようと後ろに下がる。ああ、今の僕は仮面を付けている上に、幻影で姿を変えているんだった。確かにこの格好だと僕だって気がつかないね。


「ごめんね、驚かせてしまって。僕だよ、ルイーザ」


 僕はそう言って幻影を解除して仮面を外す。髪の毛の色と目の色が変わっているけど、容姿は全く変わっていない。多分これで


「えっ? う、うそ……エルあに……うえ? えっ、でも、勇者たちが、兄上を殺したって……えっ?」


「ルイーザが戸惑うのも無理が無いよ。僕は実際殺されたからね。でも、正真正銘、エルフリートだよ。再び会えて良かった」


 僕がしゃがんで微笑みながら近づくと、ルイーザもようやく僕だとわかったのか、目に涙を溜める。そして


「え、エル……あ……に……うえ、良かった……生きてて……よがった……」


「ああ、ルイーザも生きてくれて良かった。耐えてくれて良かった」


 僕は気を失っているマリーシャごと2人を抱きしめる。普段は強気なルイーザがこんなに涙を見せるのは初めてだった。それほど辛い目にあったのだろう。だけど、そんな中でも生きていてくれて良かった。

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