復讐の魔王

やま

3.宝物庫、そして弔い

 ダインさんの口から出てきた2人の女の子の名前。


 ルイーザ・クライスター。クライスター侯爵家の長女でアルの妹になる。年齢は15歳で、女の子の割には身長が高くて170前半ぐらいはある。金の髪をサイドテールにしていて、アルと同じように剣術が得意だ。


 マリーシャ・ロイスター。ロイスター侯爵家の長女でビルの妹になる。年齢は15歳で、女の子の中でも背は低く150ほどしかない。そして、その身長とは真逆の大きさの胸を持っていて、かなりアンバランスな体型をしている。茶髪のツインテールにしていて、魔法が得意になる。


 当然僕は2人の事を知っており、2人も僕の事を「エル兄上」「エル兄さん」と慕ってくれる程の仲だ。


 その上、彼女たちは同年代の中でも実力の持ち主だったため、ユフィーの護衛を勤めることもあり、2人は「剣姫」「魔姫」と呼ばる程だ。


 まあ、これは姫であるユフィーのと並んでも負けない程の美貌を誇る2人だからこそ付けられた二つ名なんだけど。もちろん僕はユフィー一択だったけどね。


 そんな2人が囚われているのか。


「彼女たちは、明日のオークションで売られる」


「オークション?」


「ああ。大方、今回の反乱で手に入れた財宝や武器を売るんだろう。その中の商品として彼女たちも出品される……それでどうするんだ?」


「もちろん、助けるよ。唯一の生き残りを見捨てられない」


 僕はそう言い立ち上がる。ダインさんもわかっていたのか、場所を教えてくれた。彼女たちは王宮の地下にある牢屋に閉じ込められているようだ。僕も昔に何度か行った事がある場所だ。もちろん、はいるためじゃなくて、れるためだけど。


「また、戻ってこいよ」


 僕が店から出ようとすると、後ろからそんな声が聞こえて来る。本当に良い人だダインさんは。


「もちろんさ」


 僕は振り返る事なく店を出る。さてと。まずはシュバルツ家に行こうか。2人を助け出す事が出来たらそのまま滞在する事は厳しいだろう。


 まずはシュバルツ家に行って、隠し金庫が残っているか確認。あれば手に入れる。それから、中央広場の父上たちの骸を弔う。そして、王宮の牢屋に向かい2人を助ける。この順番かな。


 それから僕は裏道を通り抜けて王宮の近くまで進む。中央広場は、その名の通り王都の中央に位置する。そして王宮は、その中央広場から北に進んだところにあるのだ。


 当然、貴族の屋敷も王宮の近くに建っている。特に爵位の高い貴族なんかはそうだ。シュバルツ家も例外ではなく、王宮の近くに建っている。ちなみにダインさんの酒場は、南西にある。


 この時間帯になれば、外を出歩く人も少なくなるな。いるとしたら酔っ払いや兵士ぐらい。それも、貴族の屋敷が近づくと兵士だけになっていく。そして


「……着いた」


 裏道を使いながら、歩く事20分ほど。ようやくシュバルツ家に辿り着いた。入り口には兵士は立っておらず、既に無人となっている。もう、中の物はあらかた持って行った様だ。


 僕は裏の方へ回り塀を飛び越える。今の身体能力なら造作も無い。屋敷に近づくと、屋敷の扉は壊されて、辺りに血が飛び散っている。


 父上たちはこの屋敷の中で襲われたのか。僕は無惨な光景を見て怒りが湧いて来るが、今はどうしようも出来ない。とりあえず中へ入ろう。


 屋敷の中もかなり荒らされていた。剣や槍などで傷つけられた壁に、魔法で抉られた床。そして辺りに散らばる血痕。昔の面影もない。


 僕はその中を進んで行く。怒りは溜める。これが力になるのだから。


 2階にある父上の書斎に入る。中の目ぼしいものはあらかた持っていかれている。この部屋の中心で僕は魔力を流す。


 僕たちシュバルツ家の魔力にだけ反応するように作られた魔法陣。父上はどのように作られた魔法陣なのかはわからないと言っていたのを覚えている。


 そして、魔法陣が発動して、開かれるゲート。光魔法のゲートだ。これは指定したところとこの魔法陣がある場所を繋いでいる。光魔法って事はハヤテ・エンドウが作ったのだと思うのだけど。


 僕はそのゲートの中へと進む。そのゲートの先には、シュバルツ家だけがいける宝物庫がある。僕も場所を聞いていただけだから入るのは初めてだ。そして


「これは中々……」


 かなりの量の財宝が眠っていた。歴代の、と言ってもまだそんなに経ってないけど、今までの当主が貯めてきたのだろう。


 ここが、どこなのかはわからないけど、有り難く頂こう。あまり持って行っても仕方がないので、必要な分だけ持って行こう。


 僕は必要な分だけ持って屋敷を後にする。周りはだいぶん静かになったな。今から中央広場に行っても、兵士しかいないだろう。


 裏道を通って中央広場に戻って来ると、まさかの兵士すらいなかった。首は置いたままなのに。僕的には好都合だから良いのだけど。


 僕は首が置かれている台まで歩く。よくよく考えれば、父上たちの顔を見るのも半年ぶりなんだね。久し振りの再会がまさかこんな形になるなんて思ってもみなかったよ。


「父上、母上。天国でも夫婦仲良くね。クライスター侯爵、ロイスター侯爵。ルイーザとマリーシャは必ず助けるから。みんな、安らかに眠れ。憤怒の炎心剣レーヴァテイン、発動」


 僕は右手に憤怒の炎心剣を発動させる。憤怒の炎心剣をみんなに向けてそして炎を放つ。音もなく放たれた炎で、父上たちは燃えて行く。みんな、今までありがとう。必ず仇は取るから。


 僕は空に登る煙を見ながらそう誓う。必ず殺すと。

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