復讐の魔王

やま

2.情報収集

 王都に入る頃はすっかりと日が暮れてしまっていた。あたりを照らすのは、家から漏れるランプの光のみ。


 僕は少しでもバレないように裏道を進んでいく。いくら夜だからと言っても、仮面を付けてローブを着ていたら怪しいからね。衛兵に見つかったら面倒だ。


 裏道を進む事20分ほど。ようやく中央広場の近くまで出る事が出来た。そして、中央広場まで出ると、目的の物はあった。


「っ! 父上、母上……」


 中央広場には、台の上に首だけ置かれた父上たちの姿があった。父上に母上。それからアルの両親であるクライスター侯爵に夫人、ビルの両親のロイスター侯爵に夫人。その他にも知り合いの貴族たちの首が置かれていた。


 飛び出して、直ぐにでも弔ってあげたいところだけど、周りには兵士がいる。ここで飛び出すのは得策じゃない。兵士たちに集まられても面倒だし、周りにはまだ住民がいる。


 全員殺してやりたいところだが、今は我慢だ。勝てない今は。


 俺は中央広場を後にする。とりあえず夜が更けた深夜あたりになったら戻ってこよう。その頃には住民も寝静まって、兵士だけになっているはずだ。


 次の目的地のシュバルツ家も夜が更けてからにしよう。そうなれば、時間が空いたな。どうしたものか。


 王都の中をうろちょろと歩き回るのは得策ではない。でも、情報は欲しいところだ。と、ならば行くのはあそこだな。


 ◇◇◇


「……いらっしゃい」


 僕は表通りではなく、裏通りにある閑散とした酒場に入る。ここは昔からアルたちと良く使っていた酒場だ。


 ここでは色々と情報が集まるし、ここの酒場の大将は顔見知りだ。何でも、父上と昔の友人だと聞いた事がある。そんな縁で僕たちも偶に使っていた。


 そして、今カウンターに立ってグラスを拭いているのが、その父上の友人のダインさんだ。僕はダインさんの前の席まで行って、いつものを頼む。


「ダインさん、エールをぬる目で泡少なめを一杯」


 僕は少し気の抜けているエールが大好きだ。いつもアルたちに馬鹿にされていたが……もう、あのやり取りも出来なくなったのか。


 僕の注文を聞いて怪訝そうな顔をするダインさんに少し仮面をズラす。幻影の魔法は今は解除する。僕の顔は髪の色と目の色が変わった以外は特に変わっていないのでこれで気が付くだろう。ダインさんも気が付いて


「……な!? 何でエル……」


「シッ。誰が聞いているかわからないから、エルでお願い」


 驚きの声を上げようとしたので、押さえてもらうように頼む。周りは人が少ないからといって、聞いていないわけじゃないからな。少しでも用心した方がいい。ダインさんもわかったのか何も言わず頷いてくれる。


 そして、ダインさんが持って来てくれたエールを一口飲む。これを飲むと、アルたちと飲んだのを思い出すなぁ。涙が溢れそうだ。


「それで、どうしてエル……が生きている? あの勇者どもが昨日あたりに反逆者は倒したって騒ぎながら帰って来たぞ?」


 おっと、1日違いだったのか。それは危なかったな。初めの頃の感覚が鋭敏になり過ぎて悶えてなかったら、追い越していたところだった。


「あまり話せないんだけど、僕自身は殺されたよ。アルもビルも……」


 そこから、砦で起きた事をダインさんに話していく。先祖の事などはぼかして。髪の色と目の色は少し聞かれたが、これを話すと面倒な事になるので誤魔化しておいた。ダインさんもそれがわかったのか、それ以上聞いてこなくなった。


「……そうか。アルとビルは亡くなったか。あの勇者どもめ」


「あまり批判的な事を言うのはやめた方が良いよ。誰が聞いているかわからないし」


「……そうだな。それでエルはこれからどうするんだ?」


「僕は、これからシュバルツ家に行って隠し金庫からお金を取ってくる。残っていればだけど。それから、中央広場にある父上たちの亡骸を弔って上げたい。あのままにしておくのは僕には出来ない。後、これは万が一だけど、生存者を探したい。もし当たればだけどね」


 僕が今後の目的を話すと、ダインさんは顎に手をやり何かを考える。そして


「生存者なら2人ならいるぞ」


 と、教えてくれた。2人? 一体誰だ?


「どうしてその2人は生かされているんだい?」


「それはな、若くて売れるからだよ」


 僕は誰が生かされているのかわからなかったため、ダインさんに尋ねてみると、ダインさんからはそんな答えが返ってきた。そこでようやく、僕も誰が生かされているのかがわかった。


「……もしかして生かされている2人って」


「ああ、ルイーザ・クライスターとマリーシャ・ロイスターだ」


 僕の外れていてほしいという予想は別の意味で外れてしまった。

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