復讐の魔王

やま

プロローグ 勇者召喚

 ユフィーたちから、勇者召喚の話を聞いて1ヵ月が経った頃僕たちは王宮に呼び出された。理由はわかっている。その勇者召喚をするためだろう。


 呼びされた場所は王宮の地下になる。そこは110年前にハヤテ・エンドウが召喚された場所で、その時の魔法陣がそのまま残されている。多分それを使うのだろう。


 僕も侍女の案内で地下を降りる。侍女は僕が学園で見た事がある子だった。僕は昨年卒業したけど。この国にある学園は12歳の頃に入学して16歳で卒業する。


 国に一つしかないため、国中から集まる。貴族平民関係なく入学する事が出来るけど、平民は入学試験を受けて、狭き門を通った者のみが入学出来る。


 その中でこの子は、確か子爵家の次女だったかな。大方、この侍女の父親が、勇者の目につけばいいとか思って、侍女見習いにしたのだろう。ユフィー程ではないけど、綺麗だしね。


 その侍女の案内の元魔法陣のある部屋へと入ると、中には魔法師たちが魔力を貯めていた。


「よっ、エル」


「やぁ、アル。それにビルも」


「……ああ」


 既にアルは来ていたようだ。その隣にいる青髪の無愛想な少年はビルモンド・ロイスター。ロイスター侯爵家の長男で、魔法の才能があり、その中でも風魔法が得意だ。


 ちなみに、アルはクライスター侯爵家の長男で、魔法は苦手だが、剣術が得意だ。


 このアルとビル、それに僕とユフィーを合わせた4人が、小さい頃からの幼馴染になる。


 ユフィーは今は国王陛下の側にいる。僕が見ていると、僕と目が合ったユフィーは、ひっそりと手を振ってくれる。僕も振り返すと、ユフィーはニッコリと笑ってくれる。可愛い。


 他にも将軍や宰相、アルやビルの父親である侯爵たちに、僕の父親も。それからデンベル公爵も来ている。まあ、当たり前か。あの人か発案者なのだから。


 デンベル公爵は現国王陛下の弟に当たる。デンベル・グランディーク公爵。見た目は国王陛下と全く似ておらず、肥え太った体に、体中に輝く貴金属を身に付けている。そんなデンベル公爵が口を開く。


「クックック、それでは始めましょうかね、兄上よ」


「……わかった。魔法師団長よ。始めてくれ」


「はっ! それでは始めるぞ!」


 国王陛下の号令で、魔法陣を囲むように立っていた魔法師たちが先程以上の魔力を流し始める。その流される量に比例して、輝きが増す魔法陣。


 そして、その輝きが頂点に達した瞬間、部屋中一面が真っ白に染められる。僕たちは目を開けている事が出来ずに腕で覆う。


 ……成功したのか? どうなったかわからないまま、光が収まるのを待つ。すると


「な、なんだったんだ、今の光は……」


「だ、大丈夫、マコト?」


「ちっ、一体なんだよ、ったく」


「おお、お姉ちゃんっ!?」


「な、何だったんすかね?」


「びっくりしたぜ」


「みんな! 大丈夫かしら!?」


 と、光の中から声がする。光が収まると現れたのは、僕たちと同年代の少年少女たちだった。男が4人、女が3人の計7人だ。そこに事情を説明しようと国王陛下が近付こうとしたら


「おおっ! よくぞ参られた勇者たちよ!」


 と、横から割り込む声が入る。入ってきたのは当然ながらデンベル公爵だ。そのおかげで、国王陛下は入る隙が無くなり、召喚された勇者たちは、デンベル公爵の方を見る。


「あ、あの、すみません。どういう事でしょうか?」


 その中で髪の毛の色が茶色の少年が尋ねてくる。でも、この少年だけ何処かおかしい。


 他の人たちは戸惑った表情を浮かべているのに、この茶髪の少年だけは口元が笑っているように見えるのだ。僕の気のせいだろうか?


「勇者たちも突然の転移で驚いただろう。詳しい話は落ち着いて話せる場所へ移動してからにしようではないか。よろしいですね、国王陛下?」


「……ああ、構わん」


 それから僕たちは移動し始める。国王陛下が先頭に、次にデンベル公爵や宰相、将軍などが続き、勇者たちになる。やはり、あの茶髪の少年だけ何処か様子がおかしい。


 他のみんなは周りをキョロキョロと不安そうに見渡しているのに、あの少年だけ、見ているのは侍女やユフィーたち女性だ。なんなんだ、あいつは?


 そんな事を思いながら、たどり着いたのは会議室だ。ここは名前の通り会議をするための部屋で、かなりの人数が入れるようになっている。


 中に入り席に着くと、みんなの自己紹介になる。国王陛下から始まり、爵位順に挨拶をしていく。僕たちの方が終わると、今度は勇者たちの自己紹介になる。


 まず1人目が茶髪の少年で、名前はマコト・テンジョウイン(天上院 誠)。髪の毛が茶髪で見た目がかなり整っている少年だ。


 2人目が黒髪の目つきの悪い少年で、リュウジ・ササキ(佐々木 竜二)だ。この少年も顔立ちは整っており、ワイルドな感じだ。


 3人目が、キツネ目の黒髪で、ケンタ・ニドウ(二堂 健太)。マコトの事を先輩と呼んでいる。


 4人目が、黒髪の角刈りで無口な少年、タダシ・ゴウダ(郷田 忠)。召喚された勇者の中で1番体が大きくガタイがいい少年だ。


 5人目が、茶髪のストレートの髪をしている少女、マユミ・カミシロ(神城 真由美)。キリッとした目立ちで、少し気の強そうな少女だ。ずっとマコトの隣にいる。


 6人目が、黒髪のおかっぱ頭で身長が1番低い少女、ミミ・シノノメ(東雲 美々)。身長は140センチほどしかない保護欲にかられる少女だ。


 そして最後が黒髪のロングのストレートで、他の少女に比べて、体のメリハリがはっきりとしている綺麗な少女で、カグヤ・シノノメ(東雲 輝夜)。ミミ・シノノメの姉らしい。彼女を見ていたらユフィーに睨まれた。


 彼らはマコトとリュウジにタダシとマユミ、そしてカグヤが17歳の同い年らしく、ケンタは彼らの一つ下で、ミミはまだ12歳だという。マコトたちは僕たちと同い年のようだ。


 彼らの自己紹介が終えた後は、国王陛下がこの世界に召喚した理由や、この世界の状況などを詳しく話していく。もちろん、もう元の世界に帰られないことも。当然、勇者たちは怒るが、それを止めたのが


「俺は参加します!」


 と、戦争に参加する事を宣言したマコトだった。その後はマコトにみんなが説得されて、渋々ながらも従う。


 勇者たちが、戦争に参加してくれる事になったので、みんなが喜んでいる中、僕はずっと笑みを浮かべているマコトから目が離せなかった。

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