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世間知らずの魔女 〜私、やり過ぎましたか?〜

やま

19.お願い

「やぁっ!」


「おっと」


 背後から現れるシリカ様。手に持つ木剣を私の頭目掛けて振り下ろして来ます。私はひらりと躱してシリカ様の左肩を掴みます。剣を振り下ろした勢いで前屈みになっているシリカ様の肩を、その力のかかっている方に力を加えると


「うわっ!?」


 シリカ様はくるりと一回転。地面に背中から落ちていきました。背中を強打したシリカ様は、肺から空気が抜けて苦しそうにしますが、私は追い討ちをかけるように光の矢を放ちます。


 当たら無いように、当たっても少し痛むぐらいの威力で放ちます。しかし、シリカ様には避けられる速さの魔術に当たったらおしおきと伝えていますので、慌てて空間魔術を使います。


 しかし、私も空間魔術を発動。シリカ様の魔力を追って目の前に移動します。距離をとったはずの私が目の前にいる事に「ひぃっ!?」と変な声を上げるシリカ様……酷いです。にこにこと微笑んでいる私の顔を見てそんな声を出すなんて。


 少しショックだったので、ほんの少し強めにシリカ様の綺麗なおでこにデコピンを放ちます。パチン! と良い音と共に「あうっ!」と仰け反るシリカ様。


 痛むおでこを押さえて座り込むシリカ様。おでこに広がる痛みに涙目になるシリカ様を見るのは何だかゾクゾクとむず痒くなる感覚がありますが、それよりも


「シリカ様、空間魔術に頼り過ぎです。空間魔術は確かに便利ですがその分魔力の消費も大きく、動きが単調になってしまいます。あれぐらいの攻撃は魔術を使わずに避けて下さい。それから、少し痛むぐらいで敵から目を離してはいけません。その後に攻撃されても避けられませんよ」


「う、うぅっ、い、今のは痛いですよぉ〜。あれを我慢するなんて無茶ですよぉ〜」


「まあ、痛みにはおいおい慣れていきましょう。良くなっている点は、魔術の発動スピードが上がっているところと、魔力量が増えているところ、あと木剣に振り回されなくなったところです。その点は成長しています」


 私の言葉にぱぁ〜と明るくなるシリカ様。ほんの2週間ほど前までは寝たきりだったシリカ様の成長速度は目に見張るものがあります。


 私が宮廷魔術師を任されたから1週間、役職は貰いましたが、まだ部屋まで来てい無いので仕事も無く、毎日やる事がない日々が続く中で、シリカ様の修行と図書館が今の私の楽しみです。


「あっ、そういえばお姉様は聞きました?」


「? 何のことです?」


 私がぼんやりと最近の事を思い出していると、シリカ様が突然そんな事を訪ねて来ます。余りにも突然過ぎて意味がわかりません。何の事を言っているのでしょうか?


「実は王国の西の国と最近小競り合いが多いようで、もしかするとお兄様が派遣されるかもしれ無いのです」


 西の国と言いますと、ヘパストス王国でしたか。山が多い国で、鉄鉱石などが多く取れる国です。その代わり作物が育ち難く、食料の半分以上が輸入に頼らなければならない国だったと思います。


 その分、国の中で取れた功績で作った鉄製道具や武器を他国に輸出して利益を得ていたはずですが。


「はい。しかし、今年はどの国も食料があまり取れなかったようで、他国に輸出する余裕が余りないようなのです。それは、我が国も同じで。そのせいで食糧不足に陥っているヘパストス王国は実力行使に出たんです」


 なるほど。かなり短絡的といえばそこまでですが、それほど切羽詰まっているという事でしょう。あの国は武器の製作も他国に比べて1、2歩は進んでいますし、兵士や冒険者の数も多いです。交渉するより力づくの方がいいと考えたのかもしれませんね。


「それでリカルド様はいつ行かれるのですか?」


「すみません。いつかはわからないのですが、今頃お父様と話をしているはずです」


 ふむふむ、これは外に出るチャンスですね。シリカ様も王宮の中だけではつまらないでしょうし。良し、善は急げです!


「シリカ様、行きましょう!」


「へっ? わっ、お、お姉様!?」


 私はシリカ様の手を握り空間魔術を発動。玉座の間の扉の前にひとっ飛びです。扉の前に立っている兵士さんたちは驚いて武器を構えてしまいましたが、私とシリカ様とわかると武器をしまってくれます。


 兵士さんに陛下との謁見を取り次いで貰い、許可が出たので中に入ると、なぜか苦笑いしている陛下と溜息を吐くリカルド様の姿がありました。な、何でしょうか?


「くくっ、全く面白い奴だ。この王宮の魔術が使用出来なくなっている区間に普通に魔術で移動してくるとは」


 へぇ〜、そんな仕掛けがあったのですか。全く気が付きませんでした。気付かない内に抵抗していたのでしょう。未だにジト目で見てくるリカルド様にてへっ、としておきます。


 リカルド様は口元を手で押さえながらそっぽを向いてしまいましたが、これでもうジト目では見られないでしょう。


「それで、シルエットがここにやって来た理由は?」


 おっと、それが本題でした。私はワクワクとした表情で陛下に進言します。


「リカルド様に付いて外に出たいです!」


「駄目だ」


 ……おぅ

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