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世間知らずの魔女 〜私、やり過ぎましたか?〜

やま

14.1日の成果

「ふぅ、失礼するぞ、シルエット殿、シリカ。シルエット殿、申し訳ない。任せっぱなしで。本当ならもう少し早く来るはずだったのだが、忌々し……い……だい……えっ?」


「この大きさが現在シリカ様が入れる事の出来る大きさのギリギリです。さあ、入れてみて下さい」


「はぁ……はぁ……む、無理ですぅ……こ、こんな、大きくて硬いもの、は、はいら、あぁん!」


「あっ、駄目ですよ、シリカ様。気を抜いて漏らしたら!」


「で、でも、が、我慢で……うぅん! で、出来ません……」


 ……なんなんだこれは? もう夕日も沈み外が暗くなって行く時間帯。ようやく大臣どもの話し合いもひと段落がつき、久しぶりに落ち着いてシルエット殿たちと話せると思ってやって来たのだが、私が部屋に入って見たのは、シリカが汗を流しながら両手を大きく広げて、そこに片手で箪笥を持ったシルエット殿が、箪笥をシリカに押し付けている姿があった。


 一体どういう事だ? と思ったが、良く良く見ればシルエット殿が持っている箪笥は、シリカにグイグイと押し付けられているが、なぜか箪笥のシリカに押し付けられている先の部分がない。


 箪笥の半ばで消えているような。この光景、見た事があるぞ。それに、シリカから溢れる魔力。


「おや、これはリカルド様、今日はお仕事はよろしいので?」


 そんな光景をぼーっと見ていると、私に気が付いたシルエット殿が声をかけてくれた。それで私に気が付いたセシルとセーラも頭を下げてくる。ただ、シリカは魔術に集中しているのか、真剣な表情で魔力を放出している。


「うっ、うぅ……あっ!」


 しかし、次の瞬間、シリカの魔力は霧散してしまい、箪笥がその場に落ちる。しかも、半分無い状態で。


「あら、魔術が解けてしまいましたね。この通り、空間魔術は便利ですが途中で解けたりすると勝手に扉が閉じてしまいます。経験した事がある思いますが、扉を閉めた時に服の裾などが挟まったりなど。あれの空間版です」


 シルエット殿は淡々と話を進めて行くが、シリカは顔を青くして真剣に聞いていた。失敗すれば挟まれる、それは物だけに限らず手足も含まれることを考えたら当然だろう。


 しかし、どうしてシリカが空間魔術なんて……彼女の適性は火と風だったはず。私は思い出しながら近づくと、ようやく私がいる事に気が付いたのか、シリカがにぱぁと微笑んでくる。しかし、自分が汗まみれなのに気が付いたのか、慌ててセシルにタオルを貰うように言っている。


「頑張っているようだな、シリカ」


「はい、お兄様! シルエット先生が私に魔術を使えるようにご指導くださって!」


「そうか、それで私の見間違いではなかったら先ほどシリカが使っていた魔術は」


「シリカ様が使っていた魔術は空間魔術ですよ、リカルド様」


 シリカに尋ねようとした事を、横から笑顔で答えてくれるシルエット殿。柔らかく微笑む笑顔が綺麗だ。ついつい見惚れてしまう。


「もう、お兄様ったら、シルエット先生の事見過ぎですよ」


 そう言い私の顔を見てクスクスと笑うシリカ。唯一の救いがシルエット殿が意味をわからずにきょとんとしているところか……私の気持ちに気が付かれていないと考えると落ち込むべきか。


「そ、それよりも、シリカは魔術が使えるようになったという事か?」


「はい、シリカ様が今まで魔術を発動出来なかったのは、本当にシリカ様に適性のある魔術ではなかったからです」


 詳しく聞けば、今国やギルドにある魔水晶では、表示される適性属性が限られているらしい。そのため、シリカにとって1番高いはずの空間魔術の適性がわからなかったのだという。


 しかも、シリカの魔術適性が9割ほど空間魔術に傾いてしまっているため、魔水晶に現れた火と風属性は殆ど適性が無いに等しいのだとか。


「それで、今まで魔術が発動しなかったのか」


「はい。この王宮の中には空間魔術を使える方がいないのでしょう。そのせいで、シリカ様が空間魔術の適性がある事が今までわからなかったのだと思います」


「私、このくらいの大きさなら出し入れ出来るようになったんですよ!」


 そう言って、シリカは手のひらに月光花を出し入れする。凄いな。たった数時間で初歩とはいえ空間魔術を使えるようになるなんて。


「シルエット殿は魔術を教えるのも上手いんだな」


「いえ、私なんてただこうやった方がいいと言っているだけですから」


 髪を右手で押さえながら照れ笑いをするシルエット殿。ああ、本当に綺麗だなぁ。ずっと見ていたくなる。


「お兄様ったらまた……それでお兄様の方は落ち着いたのですか?」


「ん? ああ、ある程度の話は終わった。遺族の方にも挨拶できたしな。そういえば父上がシルエット殿に会いたいと言ってたのだ」


 すっかり本題を忘れていたが、父上がシリカを治療し魔術の教師になったシルエット殿に会いたいと言っていたんだよな。しかも、大臣たちの前での謁見になるだろうし。


「私は構いませんよ」


「申し訳ないけど頼むよ。後、シリカも調子が良さそうなら同じ時に父上や大臣たちに挨拶する事になると思うから」


「わかりました。私も久しぶりにお部屋から外にでますので、何だかワクワクしますね」


 2人とも気軽に了承してくれる。ただ、気がかりなのが兄上の事だ。私たちが帰って来て、シリカの呪いが解けてからは何の音沙汰もない。父上への謁見の時に睨まれたぐらいか。


 ……何も企んでないと良いのだが。

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