世間知らずの魔女 〜私、やり過ぎましたか?〜

やま

12.体調

「セーラ。今日の予定は何でしたか?」


「……えっ……ええっと、今日、シリカ様の体調が良ければ、今日から魔術の指導なのですが……さすがは魔女の森で生活されただけはあります。何なんですかあの魔術の練度。とんでもないですね」


 私の毎日朝の日課である魔術の訓練を見ていたセーラがそんな事を言って来ます。


 今日でこの王宮に来て3日目。この3日間はシリカ様に薬を持っていく以外は、特にやることも無く、セーラと一緒にぼーっと部屋で生活していました。


 リカルド様も忙しいようでここには偶に顔を出すだけです。それも少しだけ。それを残念に思っている私がいたりして。


 ただ、嬉しい事もあります。それがこの王宮にある図書館を自由に使っても良い事です。セーラがいないといけませんが、殆ど側にいるので問題無く行けます。


 図書館の中には、私の読んだ事のない本が沢山あって、私は時間を忘れるほど読みふけってしまいます。ここは天国ですね!


 セーラはどうやら読み書きはできるようなのですが、本を読むのは苦手なようです。本を数ページめくると船を漕いでいますもの。


 そんな生活をしている中、毎朝の日課である魔術の訓練をしているところに、セーラが元気よく入って来たのが今日。


 そういえば、魔術の訓練をしているところを見られるのは今日が初めてでしたね。部屋に入った瞬間、部屋一杯に浮かぶ大量の水の玉にかなり驚いています。


 その水の玉を不規則に動かして、他の玉とぶつからない訓練をしていたのですが、それを見たセーラが固まってしまいました。そこまで驚く事は無いと思うのですが。


 このまま口を開けたまま動かないセーラを見ているのも、可愛らしくて良いのですが、セーラにも他にもやる事もあるでしょう。今日の予定を聞いて動き始めたのが初めになります。


「そんなことありませんよ。セーラも出来るようになりますよ」


「え、いや〜、私にはここまで精度の高いのは無理ですよぉ〜。それよりも今日の予定ですが、先ほど申しました通りシリカ様の体調次第ですが、魔術の指導をお願いしたいとリカルド様から言付けを受けています。それから「シルエット殿の薬のおかげでシリカの体調が大分良くなった。ありがとう」との伝言も」


「やはりリカルド様は忙しいのですね。昨日少し顔を見せてくださっただけで」


「仕方ありませんよ。リカルド様がこの数週間亡くなったと思われていたのです。生きているという事を貴族たちに見せないと、馬鹿な事を考える輩もいますから」


 なるほどですね。そうなるともう当分会う事が出来ないでしょうね。残念です。


 それからセーラが朝食を持って来てくださって、それを食べます。やっぱり私が森の中で作っていたものとは違いますね。負けているとは思いませんが美味しいです。


 それから毎日のセーラの日課になっているのが、私の髪のセットです。森にいた頃は髪をブラシでといていただけなのですが、それを言うとセーラが見た事も無いような形相でその事を怒るのです。


 何でも「そんなにサラサラで綺麗な白髪、もっと楽しまないと損です!」と迫るので、彼女に好きなようにさせているのです。


 私の後ろで、ふふんふんふん、と楽しそうに鼻歌を歌いながら私の髪をといてくれるセーラ。時折「ぐへへ〜」と変な笑いが聞こえますが、まあ、大丈夫でしょう。


 それから暫くセーラが私の髪で楽しんだ後、シリカ様のところへと向かいます。ただ何度歩いても王宮の中というのは慣れませんね。道が入り組んでいてどこに何があるのかわかりません。


 これなら、まだ森の方がわかります。セーラはスイスイと進んで行くのですが、どうやって覚えているのでしょうかね? 謎です。


 暫く歩くと、女性騎士が守る扉へと辿り着きます。女性騎士たちは私とセーラを見ると、敬礼をして下さいます。そして中に私たちが来た事を伝えて下さいます。


 暫くすると、扉が開かれ、中からセシルさんが現れました。私たちを見るとにこりと微笑んでくれます。なので私もにこり返し。


「お待ちしておりました、シルエット様。シリカ様が中でお待ちです」


 私とセーラはセシルさんの後に続いて部屋に入ります。部屋の中は前に訪れた時と変わりませんが、ベッドの上には


「あっ! お待ちしておりました、お姉様!」


 と、元気そうに微笑むシリカ様が体を起こして待っていました。やつれていて青くなっていた顔色も赤みを帯びて良くなり、歩くのはまだ難しいそうですが、体を起こす事が出来るまで回復していますね。


「おはようございます、シリカ様。お体の調子はどうですか?」


「はい! お姉様の作って下さったお薬のおかげで前までが嘘の様に体が軽いです!」


 そう言われると私も嬉しいですね。人の看病なんて初めてやりましたが、上手くいって良かったです。まあ、月光花で使った薬を飲んで頂いただけなのですが。


「顔色も良さそうで、魔力の流れも穏やかです。これなら大丈夫でしょう。シリカ様、今から魔術の訓練を始めましょうか」


 初めての先生、ワクワクです!

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