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世間知らずの魔女 〜私、やり過ぎましたか?〜

やま

8.王都へ

「……うっぷ」


「だ、大丈夫か、シルエット殿?」


 私は背中をさすってくれるリカルド様の言葉に頷く。今は頷く事しか出来ない。口を開ければ……うぅっ!


「がっはっは! 何だ、嬢ちゃんは馬車は苦手か?」


「はは、彼女は馬車に乗る事自体が初めてですのでね」


 リカルド様の言葉に馬車の先頭に座る男の人、御者さんは、珍しいと驚いた顔で見て来る。仕方ないではありませんか! 今まで山の中で育って……うっぷ!


「ほら、無理しないで。きつかったら出してしまった方が楽だよ?」


 私は首を横に振ります。理由はわかりませんが、何と無くそれをしたら終わりのような気がします。


 ……ふぅ、1時間ぐらい馬車に乗るとようやく慣れてきました。これから数日も馬車に乗らないといけないとは。少し億劫ですね。走った方が速いと思いますが、それはしません。私はリカルド様に付いて行くと決めたのですから。


 そんな私たちが森を出てから今日で5日が経ちました。初めの3日は森を出るのに使いました。私の速度なら1日もかからず出られるのですが、リカルド様にそんな無理をさせる事は出来ません。


 なるべく魔獣に見つからないように進んでいると、それぐらいかかったのです。それでもリカルド様にはかなり速いと言われましたが。


 そこから近くの街に行くのに2日間。この辺は歩きなので仕方ありませんね。森に向かって進んでくれる馬車なんてありませんし。


 森の近くの街は、大きな壁が出来ていました。森から現れる魔獣から守るためでしょう。そしてこの町は私が人生で初めて訪れた街……なのですが、入る間も無く王都行きの馬車へと乗りました。


 なんでも、この街を治める領主は、リカルド様のお兄様の息がかかっているとか。王都ではリカルド様は死んだ事になっているだろうという事で、王都に着くまでに生きていることがバレたら道中で襲われる事になるだろうから、隠れて行くらしい。


 その程度なら私が防ぎますが、それを言うと私には無理をさせたくないとか。無理では無いのですが、そこまで言うのなら従うまでです……馬車に乗るまではそう思っていました。


 今の状態で襲われたら、防ぐ事は当然出来ますが、確実に出してはいけないものが出てしまいます。リカルド様の意見に賛成して良かったです。


「もう、落ち着いてきたか?」


「はい、ご迷惑をおかけいたしました」


「いや、気にする事はない。それに……シルエット殿の可愛い姿も見れたしな」


「……? それに、なんですか?」


「い、いや、何でもない。とにかく、後は王都までこのままだ。ゆっくりとするといい」


「わかりました」


 ゆっくりとですか。うーん、やる事が無いのは辛いですね。森の中では本を読んでいたのですが、リカルド様が言うには馬車の中で本を読むと酔いやすいとか。ただでさえきつかったのに、本を読んだせいでそれになるのは辛いので我慢です。


 すると、完璧にやる事が無くなってしまいました。馬車からの景色も代わり映えのしない平原に時折森が見えるだけです。


 時折、町や村を見かけますが、寄る予定は無いので通り過ぎます。寄る予定があったとしても、バレては不味いとの事で入る事は無かったのですが。




 道中、魔獣も当然出てきますが、御者さんが雇った護衛たちにあっという間に倒されます。


 ここら辺の魔獣は、森にすら入る事を許されない魔獣たちですので、護衛たちも軽く倒しています。ただ、時折チラチラとこちらを見て来るのは何でしょうか? 


 その事をリカルド様にお話ししたら、何故か私を隠すように隣に座ってきましたし。先程まで向かいだったのに。良くわかりません。


 そんな、特に何も起きる事もなく、穏やかに進む馬車の旅を始めてから1週間。ようやく、私たちが目指す王都へと辿り着きました。


 思ったより近いのですね。これなら、走っても3日もあれば帰れてしまいます。


 しかし、大きいですねぇ〜。初めに見た街と同じぐらいです。あの場所は近くに魔獣が現れるので、あの高さなのでしょうけど、ここはどうしてこんなに大きいのでしょうか?


「さあ、行こう。ここまで来れば真正面から進む。こんな通りでは奴らも手が出せないだろうからな」


「わかりました。お伴します」


 まあ、壁の高さなんて関係ありません。私のやる事は、リカルド様に付いて行くことです。リカルド様は門まで行き、門の前に立つ兵士に話しかけます。


「ちょっと、順番を守ってくれ。しかもここは貴族用の門だ。間違えるんじゃ無い」


「これを見てもか?」


 怒鳴る兵士にリカルド様は何かを見せます。何を見せているのでしょうか? 横からチラッと覗いてみると、何かキラキラとしたものを持っていました。翼を生やした獣、グリフォンでしょうか? そのような絵柄が入っています。どうやら国の紋章のようですね。


 でも、国の紋章を持てるのは本来王族のみのはず。って事は……もしかしてリカルド様は


「こここ、こ、これは!? 少しお待ち下さい!!!」


 その紋章を見た兵士は何処かへと走って行ってしまいました。その後ろ姿を見ていたら、リカルド様が私を見ていました。


「リカルド様?」


「すまなかった」


「えっ?」


 突然頭を下げられました。どうして謝られたのでしょうか? 私がきょとんとしていると


「私の正式な名前は、リカルド・セル・デストライト。この国の第2王子になる」


 やはりですか。そうでなければ先程の紋章を持っている事に説明が付きませんからね。


「謝る事はありませんよ。リカルド様はリカルド様ですから」


 私がそう言うと、リカルド様はホッとしたように微笑む。それから暫くすると、先程の兵士と煌びやかな鎧を着た男の人が兵士を連れてやって来ました。年齢は30後半程でしょう。


「よかった。レインズ将軍だ」


 その男の人を見て、リカルド様はホッと声を出します。信頼出来る人なのでしょう。さて、これからどうなるでしょうかね?

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