世間知らずの魔女 〜私、やり過ぎましたか?〜
5.地底湖の主
「さて、リカルド様、行きましょうか。私から離れないで下さいね?」
「わかった。私はシルエット殿を信じておるからな」
真剣な表情で、剣を構えながら私の後ろをついて来るリカルド様。信じているなんて初めて言われましたね。今までは1人でいたので、信頼されるなんてなかったのですが、とても良いものですね。
「ギギギ!」
1人で喜んでいると、天井からコウモリが飛んできます。ポイズンバッドですね。名前の通り爪と牙に毒を持っています。それが20羽ほど。リカルド様が構えて迎え討とうとしますが、その必要はありません。
丁度水が大量にある事です。利用させて頂きましょう。私は水魔術で湖の水を動かします。そして形を変えていき、蛇へと姿を変えました。
「食いなさい、ミズヘビ」
湖の水で作ったミズヘビは、私の命令通り次々とポイズンバッドを飲み込んで行く。水相手に毒など無意味です。
ポイズンバッドは私たちよりミズヘビの方が脅威だと思ったのでしょう。次々と食べれるポイズンバッドたちは、ミズヘビのお腹の中で暴れますが、当然出る事は出来ません。
そして、次第に動きが鈍くなり弱っていきます。空気も水の中では吸う事は出来ませんからね。本に書いてありましたが、確かこういうのを溺死と言うのですよね。
「さあ、進みましょう」
ポイズンバッドが全て湖の中へと沈んでいったのを確認してから私たちは進みます。
それからも、ポイズンバッドにウォーターバタフライ、ストーンリザード、アシッドトードなど、様々な魔獣が現れました。
その現れた魔獣を私は片っ端から倒していきます。リカルド様には指一本も触れさせません。逆にリカルド様にも指一本も触れてもらいません。全て先に倒します。
「……シルエット殿よ。私も少しは手伝おうか?」
「いえ、大丈夫です。ここの魔獣が一撃でもリカルド様に攻撃をしたりしたら、リカルド様は死んでしまいますから。私の側にいて下さい」
「……はい」
私がそう言うと、リカルド様は後ろに下がっていきました。時折鼻をすする音が聞こえたので、チラッと後ろを見ると、目を擦っているリカルド様の姿がありました。目に何か入ったのでしょうか? 大丈夫ですかね?
少し後ろを気にしながらも、先を進みます。月光花までは残り少しです。ここまでくればもう普通の魔獣は出てきません。ここら一体はヤツの縄張りですから。
「リカルド様、ここから先の話をします」
「ここから先? もう直ぐ月光花が咲いている場所か?」
「ええ。もう少ししたら咲いている場所に辿り着きます。しかし、そこからが本番になります」
「どう言う事だ?」
「この辺りから月光花までの場所は、この地底湖の中の主が縄張りにしているのですよ。この森の中で数少ない超級の魔獣が」
私は話をしながらリカルド様の方へと振り向き、魔力を張り巡らせます。そして直ぐに風の防壁を発動、それと同時にリカルド様の手を取って、その場から飛び退きます。
「な、なんだ!?」
突然の事の連続で驚きの声を出すリカルド様。しかし次の音で何が起きたかわかったようです。何故なら、リカルド様の背後で私が張った風の防壁と、ヤツが放った水のブレスがぶつかった音が、鳴り響いたのですから。
即座に私たちは離れたので被害はなかったのですが、私たちが先程までいた場所には、防壁で防いだ結果、散った水で水浸しになっていました。あのままいたら、全身びっしょりになっていましたね。
「な、なんだ、あ、あれは?」
「あれが、ここら一体の主、超級の魔獣で、タイラントタートルです」
リカルド様は水中から姿を現したヤツを見て、体を震わせます。私たちをぺっしゃんこに踏み潰せるほど大きな足に、鋭い牙が並ぶ口、山のような甲羅を背負った巨大な亀です。
全長10メートルでしょうかね。この湖の10分の1程の大きさを有しています。そんな巨体がのっしのっしと歩いて来ます。あら、周りの魔獣たちは大慌てで逃げてしまいましたね。
「リカルド様、ここからは競争ですよ」
「えっ? き、競争?」
「はい、私がヤツを倒して追い返すのが先か、リカルド様が月光花を採取するのが先かです。それではよーいどん!」
「ちょっ、シルエット殿!?」
後ろで叫ぶ声が聞こえますが、私はそのままタイラントタートルへと向かいます。足の裏から風魔術を噴射、水面を滑るように走ります。
昔は失敗して、よく水面に沈んだものですが、今ではお手の物です。タイラントタートルは、向かってくる私を見て、前足を振って来ました。
それだけでおきる大きな津波。私を飲み込もうと迫って来ますが、私はそのまま真っ直ぐ向かいます。右手の指先を津波へと向けて、
「行きます。スパイラルショット」
指先から回転する風の弾丸を放ちます。放たれた風の弾丸は、真っ直ぐに津波を貫きます。貫かれた事により、ぽっかりと空いた穴。私はそこを通ります。
しかし、目の前には大きな口を開けたタイラントタートルの顔がありました。あら、予想されていたとは。まあ、食べられませんけど。
噛もうとするタイラントタートルの攻撃を、跳んで避けます。そして、タイラントタートルの鼻の上に着地。タイラントタートルは、頭をぶんぶんと振りますが、落ちないように踏ん張ります。
それではタイラントタートルよ。私たちも勝負をしましょうか。私がこの上で酔うまでにあなたを倒せたら勝ち。あなたは私を降り落とせたら勝ちです。痛くても、泣かないで下さいね?
「わかった。私はシルエット殿を信じておるからな」
真剣な表情で、剣を構えながら私の後ろをついて来るリカルド様。信じているなんて初めて言われましたね。今までは1人でいたので、信頼されるなんてなかったのですが、とても良いものですね。
「ギギギ!」
1人で喜んでいると、天井からコウモリが飛んできます。ポイズンバッドですね。名前の通り爪と牙に毒を持っています。それが20羽ほど。リカルド様が構えて迎え討とうとしますが、その必要はありません。
丁度水が大量にある事です。利用させて頂きましょう。私は水魔術で湖の水を動かします。そして形を変えていき、蛇へと姿を変えました。
「食いなさい、ミズヘビ」
湖の水で作ったミズヘビは、私の命令通り次々とポイズンバッドを飲み込んで行く。水相手に毒など無意味です。
ポイズンバッドは私たちよりミズヘビの方が脅威だと思ったのでしょう。次々と食べれるポイズンバッドたちは、ミズヘビのお腹の中で暴れますが、当然出る事は出来ません。
そして、次第に動きが鈍くなり弱っていきます。空気も水の中では吸う事は出来ませんからね。本に書いてありましたが、確かこういうのを溺死と言うのですよね。
「さあ、進みましょう」
ポイズンバッドが全て湖の中へと沈んでいったのを確認してから私たちは進みます。
それからも、ポイズンバッドにウォーターバタフライ、ストーンリザード、アシッドトードなど、様々な魔獣が現れました。
その現れた魔獣を私は片っ端から倒していきます。リカルド様には指一本も触れさせません。逆にリカルド様にも指一本も触れてもらいません。全て先に倒します。
「……シルエット殿よ。私も少しは手伝おうか?」
「いえ、大丈夫です。ここの魔獣が一撃でもリカルド様に攻撃をしたりしたら、リカルド様は死んでしまいますから。私の側にいて下さい」
「……はい」
私がそう言うと、リカルド様は後ろに下がっていきました。時折鼻をすする音が聞こえたので、チラッと後ろを見ると、目を擦っているリカルド様の姿がありました。目に何か入ったのでしょうか? 大丈夫ですかね?
少し後ろを気にしながらも、先を進みます。月光花までは残り少しです。ここまでくればもう普通の魔獣は出てきません。ここら一体はヤツの縄張りですから。
「リカルド様、ここから先の話をします」
「ここから先? もう直ぐ月光花が咲いている場所か?」
「ええ。もう少ししたら咲いている場所に辿り着きます。しかし、そこからが本番になります」
「どう言う事だ?」
「この辺りから月光花までの場所は、この地底湖の中の主が縄張りにしているのですよ。この森の中で数少ない超級の魔獣が」
私は話をしながらリカルド様の方へと振り向き、魔力を張り巡らせます。そして直ぐに風の防壁を発動、それと同時にリカルド様の手を取って、その場から飛び退きます。
「な、なんだ!?」
突然の事の連続で驚きの声を出すリカルド様。しかし次の音で何が起きたかわかったようです。何故なら、リカルド様の背後で私が張った風の防壁と、ヤツが放った水のブレスがぶつかった音が、鳴り響いたのですから。
即座に私たちは離れたので被害はなかったのですが、私たちが先程までいた場所には、防壁で防いだ結果、散った水で水浸しになっていました。あのままいたら、全身びっしょりになっていましたね。
「な、なんだ、あ、あれは?」
「あれが、ここら一体の主、超級の魔獣で、タイラントタートルです」
リカルド様は水中から姿を現したヤツを見て、体を震わせます。私たちをぺっしゃんこに踏み潰せるほど大きな足に、鋭い牙が並ぶ口、山のような甲羅を背負った巨大な亀です。
全長10メートルでしょうかね。この湖の10分の1程の大きさを有しています。そんな巨体がのっしのっしと歩いて来ます。あら、周りの魔獣たちは大慌てで逃げてしまいましたね。
「リカルド様、ここからは競争ですよ」
「えっ? き、競争?」
「はい、私がヤツを倒して追い返すのが先か、リカルド様が月光花を採取するのが先かです。それではよーいどん!」
「ちょっ、シルエット殿!?」
後ろで叫ぶ声が聞こえますが、私はそのままタイラントタートルへと向かいます。足の裏から風魔術を噴射、水面を滑るように走ります。
昔は失敗して、よく水面に沈んだものですが、今ではお手の物です。タイラントタートルは、向かってくる私を見て、前足を振って来ました。
それだけでおきる大きな津波。私を飲み込もうと迫って来ますが、私はそのまま真っ直ぐ向かいます。右手の指先を津波へと向けて、
「行きます。スパイラルショット」
指先から回転する風の弾丸を放ちます。放たれた風の弾丸は、真っ直ぐに津波を貫きます。貫かれた事により、ぽっかりと空いた穴。私はそこを通ります。
しかし、目の前には大きな口を開けたタイラントタートルの顔がありました。あら、予想されていたとは。まあ、食べられませんけど。
噛もうとするタイラントタートルの攻撃を、跳んで避けます。そして、タイラントタートルの鼻の上に着地。タイラントタートルは、頭をぶんぶんと振りますが、落ちないように踏ん張ります。
それではタイラントタートルよ。私たちも勝負をしましょうか。私がこの上で酔うまでにあなたを倒せたら勝ち。あなたは私を降り落とせたら勝ちです。痛くても、泣かないで下さいね?
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