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世間知らずの魔女 〜私、やり過ぎましたか?〜

やま

4.地底湖

「さて、準備は出来ましたか、リカルド様」


「ああ、俺は大丈夫だ。しかし本当について来てくれるのか?」


 元々来ていた服装に、私が魔獣から剥ぎ取った素材を魔術で加工したものを着ているリカルド様。そのリカルド様の言葉に私は頷きます。


 確かにこの森の魔獣の素材を加工した装備を付けてはいますが、中心部では、この装備でも厳しいでしょう。初めて知り合った方、私と同じ思いを抱いた方を死なせるのは嫌でしたので。


「私が月光花の生えている中心部までご案内致します。と言いましても歩いて行くわけでは無いのですが」


「えっ? それはどういう……」


 リカルド様が言い終える前に、私は魔力を放ちます。そして口笛を吹くと、広がる音色。魔力を乗せた口笛が森に響きます。


 そして、暫くするとバッサバサと空から翼をはためかせる音が聞こえてきました。来てくださいましたね。


「ああ……あ、あれは……」


「お久しぶりですね、ガルーダ」


『まさかお主に呼ばれる日が来ようとはな。覚えておったのだな』


「ええ、お母様が亡くなった日に、一度だけ私の呼び声に来てくださると約束してくださいましたからね」


 私たちの目の前に降り立つ巨大な影。お母様と契約していたこの世界に数体しかいないと言われる神獣の1体。神鳥ガルーダ。


 神々しく赤く輝く姿を見たものは幸せのまま死ねると言われる伝説の神鳥です。全て本に書いてあった事ですが。


 何でも昔、お母様がガルーダと出会って1週間近く死闘を繰り広げた後に、契約したそうです。


 お母様がなくなった日に、私の呼びかけに一度だけ答えてくれると言っていたのですが、森にいると使う事が無かったので今まで使わなかったのですが、今回は力を借りましょう。


 私1人であれば、走って中心部まで行けるのですが、今回はリカルド様がいらっしゃいます。森の中の危険は何も魔獣だけではありません。


 毒虫もいれば底なし沼もあります。歩くだけで危険ですので、ガルーダの力を借りるべきだと考えました。


 それらの事を伝えるとガルーダは


『ふむ、なるほど。お主は自分のためではなく、その男のために我の力を使うのだな?』


「はい、よろしくお願いします、ガルーダ」


『うむ、心得た。では、乗るがいい』


 ガルーダの許可も得た事ですし背に乗らせて頂きましょう……っと、未だガルーダを見て固まっているリカルド様を呼ばなければ。


「リカルド様、起きて下さい、リカルド様」


「……はっ! す、すまないシルエット殿。突然神鳥が現れるという夢を見てしまってええええええ!?」


 ガルーダを再び見てまた驚くリカルド様。面白いですね。見ていて飽きませんが、このままでは時間が経ってしまいますので、私はリカルド様を抱きかかえて、ガルーダの背に乗ります。


 リカルド様は「……女性にお姫様抱っこされた」と泣いていましたが。どうしたのでしょうか。


『行き先は中心の地底湖で構わぬか?』


「はい、よろしくお願いします」


 私の言葉を聞いて翼を広げるガルーダ。そして一瞬の内に空はと飛び立ちました。うん、いい景色です。ずっと見ていたくなりますね。


「し、シルエット殿、地底湖というのは?」


「空から見ればわかるのですが、この森の中心にはぽっかりと穴が空いていまして、そこには大地や木々から伝ってとても綺麗な水が溜まって湖になっているのですよ。そこの綺麗な水と、月の光によって月光花が生えているのです」


「じゃあ、そこに行けば月光花は手に入るのだな?」


「手には入りますが、行くだけでも一苦労な上に地底湖には……あっ、見えて来ましたよ」


 私が指を指した方には、先ほど話したようにぽっかりと穴が空いています。まるで森の口のようですね。ガルーダはそのまま穴へと飛んでいきます。


「おおっ、こ、これは凄い」


 空からの景色に興奮していたリカルド様は、地底湖の景色にも驚きます。地底湖の中は、魔力を帯びた鉱石により青く輝いています。その光が水面に反射してより明るく地底湖を照らしてくれています。


 ガルーダはそのまま水の無い地面へと降り立ちます。近くに休んでいた魔獣たちは一目散に逃げていきました。


 私たちも降りますか。リカルド様は色々と興奮してあちらこちらを見ていますが、そんな水の側で立っていますと


「食べられますよ?」


「えっ? うおっ!」


 私は言葉と同時にリカルド様の手を引っ張ります。その瞬間、水面から飛び出す影。サイレントアリゲーターです。


 泳ぐ音が全く聞こえなくて、気が付いたら噛まれていたという魔獣です。体長は1メートルほどなのですが、鋭い牙には麻痺毒を持っていますので、一度噛まれれば動けなくなってしまいます。私も一度噛まれた事がありました。


 私はそのままサイレントアリゲーターを蹴り飛ばして、水中にお戻り頂きます。サイレントアリゲーターは基本は単独で行動しますので、近くにはいないでしょう。


「大丈夫ですか、リカルド様」


「あ、ああ、助かったよシルエット殿。まさかあんなのもいるなんてな」


「私の側にいれば大丈夫だと思いますが、気を抜かないで下さいね。ガルーダ、取って来ますので少し待っていて下さい」


『心得た。だが、ヤツが出ても手は貸さぬぞ?』


「もちろんです。何度もやり合った事があるので大丈夫ですよ。安心して見ていて下さい」


 さてと、月光花が咲いているのは、私たちが降りたところの反対側でしたね。この地底湖一帯がヤツの縄張りですが、特に月光花が咲いている辺りは、寝床なので物凄く怒るんですよね。戦闘は避けられませんが、行きますか。

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