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世間知らずの魔女 〜私、やり過ぎましたか?〜

やま

1.看病

「なるほど、リカルド様がこの森にいたのは、暗殺にあった為ですか」


「ああ。私の部下と一緒に森の調査に来ていたのだが、探索中に刺客に襲われてな。部下は全滅。俺は何人か返り討ちにした後、逃げて来たんだ。当然刺客たちも俺を殺すため後を追って来た。だが、そこに運が良かったのか悪かったのかはわからないが、魔獣が現れてね。何とか刺客を撒く事が出来たのだ」


 私の作った夜ご飯を食べながら、森を彷徨っていた理由を話してくれる目の前の男性、お名前はリカルド様と仰るそうです。デストライト王国の中でも上の地位にいるとか何とか。森から出ない私には関係ありませんが。


 リカルド様の傷は、私の回復魔術で治っていますが、まだ乱れている魔力の流れが元に戻っていないので、胃に優しい料理を作りました。お母様に習った薬膳食です。私も体調を壊した時には、よく食べさせてもらいましたね。


「それで、シルエット殿はどうしてこの森の中に? しかも1人で」


「私ですか? 私にもそれはわかりません。物心がついた時から既に森の中で住んでいましたから。昔はお母様もいたのですが、病に倒れてしまい、そのまま亡くなりましたし」


「……それは申し訳ない事を聞いてしまったな」


「ああ、気にしないでください。もう6年も前の話ですから。お母様からの言いつけで森から出ないように言われていますので。それに森から出なくても生きていけますし」


 私がごく自然に話すと、リカルド様は私をじっと見て来ます。あれ? 何か私変な事を言いましたっけ?


「どうかなさいましたか?」


「……いや、何でもない。ご馳走様、美味しかったよ」


「それは良かったです。他人に料理を作るなんて初めてでしたから、お口に合うか心配だったんです」


 本当にドキドキしましたよ。前に亡くなっていた方が持っていた料理手帳のおかげですね! 今まで適当にしていた味付けも、手帳の通りにすれば美味しくなりましたし。


 さてと、夜ご飯も終わりましたし、これからの事を話す……その前に


「リカルド様、服を脱いでください」


 私は拭くための布を持ってリカルド様の前に立ちます。ベッドに腰掛けていたリカルド様は、少し顔を上げて私を見上げてきます。私の身長は160ほど、リカルド様は180ぐらいですので、座っていると少し低いぐらいになります。


「ええっと、それはどうしてだ、シルエット殿?」


「それは汗で汚れた体を吹くためです」


 私が笑顔で言うと、リカルド様は何故か困った顔をしてしまいます。何故でしょうか? 汗に濡れたままだと風邪をひいてしまいますし、寝心地も悪いでしょう。直ぐに拭いてしまった方が良いのですが。


「……それは自分でするよ。だから大丈夫だよ?」


「いえ、リカルド様の体はまだ上手く動かせないはずです。なので代わりに私が致します」


「……それはわかるのだが、私も男だ。その、君のような綺麗な女性に見られるのはちょっと」


 綺麗な女性? 良く分からないですが


「それなら大丈夫です。死体から服などを剥ぎ取る際に見慣れていますから」


 私が笑顔で言うと、何故か引きつった表情を浮かべるリカルド様。そして諦めて下さったのか服を脱ぎ始める。私もお手伝い致しましょう。


 それから30分かけてリカルド様のお体を拭きます。当然下もです。リカルド様は恥ずかしそうにしていましたが、今まで見て来た死体よりも大きいと思いますので、そんな恥ずかしがる事は無いと思います。


 その事を伝えたら、リカルド様は手で顔を覆ってしまいました。何故でしょうか? 男の人は褒めたら喜ぶと本に書いてあったのですが。むー、会話とは難しいものです。本とは違いますね。


 さて、お体も拭きましたし、夜ご飯も食べました。明日からは魔力回復に努めて頂いて、体を動かす……あら?


「どうかしたのか、シルエット殿?」


 私が突然外を見たので、訝しげに私の顔を見てくるリカルド様。


「どうやらお客様のようです」


「まさか、刺客か!?」


「いえ、この反応の大きさは人間ではありませんので、魔獣でしょう。しかも、私の魔獣除けの結界が効いていませんので、大型ですね」


「なっ!? 大型だと!? 軍を派遣するレベルでは無いか!」


 大型と聞いて焦った声を出すリカルド様。どうしてそんな声を出すのでしょうか。大型なんて2日に1回は現れますのに。


「リカルド様はここにいてください。私が追っ払って来ますので」


「し、しかし、大型だぞ!? 現れたらその土地の領主が軍を派遣し、直ぐに討伐しなければ、多くの村や町に被害が出る程の相手だ。そんな相手に1人で行かせるわけには!」


「大丈夫ですよ。これは日常茶飯事ですから」


 私はそれだけ伝えると家から出ます。外には1体の魔獣がいました。あれは確かクワトロコングだったと思います。体長6メートルほど、特徴的な4本の巨大な腕を持つ事からクワトロコングと名付けられていると、本に書いてありました。


 手には黒装束の人間が握られています。彼らがリカルド様が仰っていた刺客たちなのでしょう。まあ、どうでも良いのですが。


「くっ、シルエット殿!」


 おや、リカルド様が家から出て来てしまったようですね。家の中の方が安全なのですが、まあ出て来てしまったものは仕方ありません。このままやってしまいますか。


「魔獣よ。このまま立ち去るのなら見逃しましょう。しかし、向かってくるのであれば、手加減は致しません。どうしますか?」


「ゴルァアアアア!」


「仕方ありませんね。テンペストエンチャント発動」


 私の体に目に見えるほどの風が渦巻きます。そしてそれを私が纏います。これで準備は完了。迫り来るクアトロコングを迎え撃ちます。


 人間の大きさほどある腕を振って殴りかかってくる攻撃を、私は跳んで避けます。風に身を任せてふわりと。


 一気にクアトロコングの頭上まで飛んだ私をはたき落とそうと再び腕を振って来ますが、させません。私は右手を手刀に変えて振ります。すると、手から風の斬撃が放たれます。


 風の斬撃ははたき落とそうとするクアトロコングの上の腕に当たり切り裂きます。痛みに叫び傷口を押さえるクアトロコングに向かって、手刀のまま構えた左手で、突きを放ちます。


 先ほどの斬撃と同じように風の槍がクアトロコングの脇腹へと飛んでいき、刺さりました。クアトロコングは気付く間も無く傷ついていくので、次第に私を見る目が恐怖へと変わっていきます。


 それでも攻撃をやめないクアトロコング。私はぶんぶんとふる腕を掻い潜り、クアトロコングの腹部に近づきます。そして


「掌破」


 両掌からクアトロコングのお腹へと当てます。そして私の体に纏わせている風を掌から放ちます。一気に放たれる暴風。クアトロコングは耐える間も無く森の中へと消えていきました。


「ふぅ、これで終了です。さて、今日はもう寝ましょうか!」

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