王国最強の元暗殺者
25.頼まれ事
「それでお願いってなんなんだ? 俺に出来る事なら考えてやるが、俺も先を急ぐ身だ。それほど難しいのは無理だぞ」
「わかっているわ」
メリィはそう返事をすると、言いづらそうに何度も言い淀み、何度も俺の顔を見て来る。それほど頼みづらい事なのだろうか? 何度かそれを繰り返して意を決したのか、俺をしっかりと見て来る。
「あなたにお願いしたいのは……レイルを殺す手助けをして欲しいの」
そして、彼女の口から発せられたのは、俺の予想外の事だった。その言葉は余りにも唐突なものだったが、予想出来なかったわけじゃない。
「……取り敢えず理由を聞こう。なぜそんな事を頼むのかと、なんでそれを俺に頼むかと」
「勿論よ。まずどうしてそんな頼みをするのかは、これはとある人から依頼されているの。あなたも見ていてわかるでしょ。レイルたちの異常性を。それにあなたも不思議に思っているはずよ。あの異常な事をして捕まった翌日に牢屋から出て来られるのを」
確かにそれは不思議に思った。この国の法がどうなっているかは知らないが、あんなに暴れた上に殺そうとした奴を1日そこらで解放するわけが普通は無い。
「あれには、上の力が加わっているのよ。レイルと一緒にいたドレスを着た女性と鎧を着た女性がいたでしょ? ドレスを着ていた女性はこの国の公爵家の令嬢で鎧の方はその護衛。彼女たちが家の力を使って罪をもみ消しているのよ」
「公爵家……よくそんな偉いところと知り合えたな」
「そうね。あれがレイルの運命を変えたのよね」
そう言い憂いの顔を見せるメリィ。それから彼女が話したのはレイルの力についてだった。
レイルとメリィはとある町の普通の家庭に生まれた幼馴染だと言う。昔から顔が整っていて、何でも出来るレイルは町の中でも人気者だったという。男女問わずに。この頃からレイルの持つ能力が今思えば現れていたと、メリィは言う。
「そのレイルが持つ能力っていうのは?」
「前、鑑定士にお願いして見てもらったのだけど、常時発動型の魔法で魅了って魔法。それは1つの体質みたいなもののようで、止める事が出来ないのよ。出来るのは少し効果を抑える事だけ。私もレイルも鑑定されるまで気が付かなかったわ」
「……それは厄介な」
「ええ。それを自覚してからは、言わなくてもわかるでしょ? 手当たり次第魅了していったわ。ただ、一定時間範囲内にいないと効果がないから、昨日みたいな突発的な時は効果がなかったけど。それでも、日に日に増えていって、今では公爵家との関係者はほとんどよ」
この国の重鎮とその関係者がレイルに魅了されているのか。そして、公爵家の後ろ盾が出来たレイルはその力に溺れていったのか。
「ん? それなら君はどうして大丈夫なんだ? 長い事側にいるのなら1番影響を受けるはずなのに」
「簡単な話よ。私が彼に魅了される以上に、彼の嫌なところを知って彼に愛想を尽きているから。だから魅了されないの。
私が彼と出会ったから今日まで、どれだけ苦労してきたか。彼の幼馴染ってだけで、裏では彼の事を好きな女の子には虐められて、彼がいくら悪さをしようとも、彼は許されて止めなかった私が怒られる。
さっき見せた契約紋だってそう。嫉妬深い公爵令嬢の彼女が、私がレイルに手を出さないように彼女と契約しているのよ。誰があんな奴の事を好きになるもんですか!」
話している途中で興奮してきたのか、言葉荒くレイルを罵るメリィ。よほど苦労してきたんだな。自分が興奮して声を荒げているに気が付いたメリィは、こほんと咳をしてから呼吸を整える。
「ご、ごめんなさい。今まであいつの悪口を言える人と話す事なんて出来なかったからつい」
「別に構わない。よほど苦労したみたいだからな。それに、君の話を聞いてあいつを野放しにしておくのは危険過ぎるし」
「そ、それじゃあ……」
「ただ、殺しの手伝いはしない。誰に頼まれたかは知らないが、自分から来ないような奴のために、君が手を汚す必要はない。いくらこの国のためだからといっても幼馴染に殺させるような奴には」
「……その言い方。誰が依頼したか気が付いているの?」
「いや? ただ、ここまで事が大きくなっているんだ。凡その予想はつく」
公爵家がここまで口を出すほどおかしくなっているんだ。国の誰かが気が付いてもおかしくはない。というより、気が付かない方がおかしい。そして、その対処を国ではなく、幼馴染であるメリィに任せているのもおかしい。
「まあ、俺も先を急ぐ身だから、そこまで深くは入り込めないが」
「いいえ、レイルに対抗できるあなたが手伝ってくれるだけで十分よ。詳しい話は夜にするわ。私たちはこれから依頼のための準備をするから」
「依頼?」
「ええ。最近この国の村で起きている、ゾンビの発生についての調査よ」
「わかっているわ」
メリィはそう返事をすると、言いづらそうに何度も言い淀み、何度も俺の顔を見て来る。それほど頼みづらい事なのだろうか? 何度かそれを繰り返して意を決したのか、俺をしっかりと見て来る。
「あなたにお願いしたいのは……レイルを殺す手助けをして欲しいの」
そして、彼女の口から発せられたのは、俺の予想外の事だった。その言葉は余りにも唐突なものだったが、予想出来なかったわけじゃない。
「……取り敢えず理由を聞こう。なぜそんな事を頼むのかと、なんでそれを俺に頼むかと」
「勿論よ。まずどうしてそんな頼みをするのかは、これはとある人から依頼されているの。あなたも見ていてわかるでしょ。レイルたちの異常性を。それにあなたも不思議に思っているはずよ。あの異常な事をして捕まった翌日に牢屋から出て来られるのを」
確かにそれは不思議に思った。この国の法がどうなっているかは知らないが、あんなに暴れた上に殺そうとした奴を1日そこらで解放するわけが普通は無い。
「あれには、上の力が加わっているのよ。レイルと一緒にいたドレスを着た女性と鎧を着た女性がいたでしょ? ドレスを着ていた女性はこの国の公爵家の令嬢で鎧の方はその護衛。彼女たちが家の力を使って罪をもみ消しているのよ」
「公爵家……よくそんな偉いところと知り合えたな」
「そうね。あれがレイルの運命を変えたのよね」
そう言い憂いの顔を見せるメリィ。それから彼女が話したのはレイルの力についてだった。
レイルとメリィはとある町の普通の家庭に生まれた幼馴染だと言う。昔から顔が整っていて、何でも出来るレイルは町の中でも人気者だったという。男女問わずに。この頃からレイルの持つ能力が今思えば現れていたと、メリィは言う。
「そのレイルが持つ能力っていうのは?」
「前、鑑定士にお願いして見てもらったのだけど、常時発動型の魔法で魅了って魔法。それは1つの体質みたいなもののようで、止める事が出来ないのよ。出来るのは少し効果を抑える事だけ。私もレイルも鑑定されるまで気が付かなかったわ」
「……それは厄介な」
「ええ。それを自覚してからは、言わなくてもわかるでしょ? 手当たり次第魅了していったわ。ただ、一定時間範囲内にいないと効果がないから、昨日みたいな突発的な時は効果がなかったけど。それでも、日に日に増えていって、今では公爵家との関係者はほとんどよ」
この国の重鎮とその関係者がレイルに魅了されているのか。そして、公爵家の後ろ盾が出来たレイルはその力に溺れていったのか。
「ん? それなら君はどうして大丈夫なんだ? 長い事側にいるのなら1番影響を受けるはずなのに」
「簡単な話よ。私が彼に魅了される以上に、彼の嫌なところを知って彼に愛想を尽きているから。だから魅了されないの。
私が彼と出会ったから今日まで、どれだけ苦労してきたか。彼の幼馴染ってだけで、裏では彼の事を好きな女の子には虐められて、彼がいくら悪さをしようとも、彼は許されて止めなかった私が怒られる。
さっき見せた契約紋だってそう。嫉妬深い公爵令嬢の彼女が、私がレイルに手を出さないように彼女と契約しているのよ。誰があんな奴の事を好きになるもんですか!」
話している途中で興奮してきたのか、言葉荒くレイルを罵るメリィ。よほど苦労してきたんだな。自分が興奮して声を荒げているに気が付いたメリィは、こほんと咳をしてから呼吸を整える。
「ご、ごめんなさい。今まであいつの悪口を言える人と話す事なんて出来なかったからつい」
「別に構わない。よほど苦労したみたいだからな。それに、君の話を聞いてあいつを野放しにしておくのは危険過ぎるし」
「そ、それじゃあ……」
「ただ、殺しの手伝いはしない。誰に頼まれたかは知らないが、自分から来ないような奴のために、君が手を汚す必要はない。いくらこの国のためだからといっても幼馴染に殺させるような奴には」
「……その言い方。誰が依頼したか気が付いているの?」
「いや? ただ、ここまで事が大きくなっているんだ。凡その予想はつく」
公爵家がここまで口を出すほどおかしくなっているんだ。国の誰かが気が付いてもおかしくはない。というより、気が付かない方がおかしい。そして、その対処を国ではなく、幼馴染であるメリィに任せているのもおかしい。
「まあ、俺も先を急ぐ身だから、そこまで深くは入り込めないが」
「いいえ、レイルに対抗できるあなたが手伝ってくれるだけで十分よ。詳しい話は夜にするわ。私たちはこれから依頼のための準備をするから」
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