王国最強の元暗殺者
20.情報
「それで何の用だよ。ただ治療のためだけにここに来た訳じゃないだろ? それなら別にあんたじゃなくてもいいはずだ」
「もう、せっかちねぇ。少しは親子のスキンシップはないのかしら?」
「いやいや、何度も言うが親子じゃないからな。あんたは自分より歳が下なら全員に言っているだろうが……それで、本当に何の用だよ?」
自分に割り当てられた部屋なのか、すいすいと自然に入って行き1番奥の大きなソファに腰をかけるメルカディエ。俺があまりにそっけない態度を取ったせいか、少し不機嫌だが。
「……まあ、いいわ。あなたを見れただけでもいいとしましょう。ここに来たのはあなたに伝える事があったからよ」
「俺に伝える事?」
「ええ。あなたが最後の依頼で行った国、テオラド王国は覚えているわよね?」
メルカディエの口から突然出た国名
……忘れる訳が無いだろう。彼女に出会い、彼女に惹かれ、彼女を好きになり、そして彼女を失った国なのだから。
俺が真剣味の浴びた目で彼女を見ると、彼女は話し始めてくれた。
「私も第3師団ほどでは無いけど、他国にある程度兵士を送っているのよね。その兵士からの情報なのだけど、最近あの国の動きが活発になって来たのよね。『豊穣の巫女』もいなくなって、国力的には落ち目なのだけど」
テオラド王国。アルフレイド王国からいくつかの国を挟んだ東にある人口400万ほどの国になる。この大陸の最東端になり、海に面している国の1つになる。
海沿いは漁業が当然盛んで、あの国から取れる魚類が各国に送られている主要な産業になる。それとは別に大陸側では、平地が多く、作物が育ちやすい大地のため、農業も盛んに行われている。
他の国に比べて明らかにおかしい食料の生産量を誇るテオラド王国。その理由が先程メルカディエの口から出て来た『豊穣の巫女』という存在だ。
この世界には様々な神がいて、その中の一神である豊穣神。テオラド王国の王族の女性には稀にその豊穣神の加護を受けて生まれてくる存在がいるらしい。
その加護持ちが生まれた世代は、大地が豊かになり、作物が育ち、国力が何倍にも跳ね上がったとの記録もあるぐらいだ。
それが、この世代にも生まれたのだ。それが『豊穣の巫女』と呼ばれる存在である。そしてそれこそが俺が出会った女性でもある。
「巫女がいなくなった事で、作物は思うように育たないどころか、巫女がいなかった時期に比べても今はかなりひどい状況らしい。その状況なのに、あの国は周りの他国に色々としているようなのね」
「その状況を打破しようと何かしていると?」
俺の言葉にメルカディエは頷く。しかし、どうしてそんな事を? 今のテオラド国王は良くも悪くも普通の王だ。
部下の意見を聞き、問題があれば対処する。ただそれだけ。前に進む事を考えず、現状を維持しようとするだけ、何の面白みのない王。それが、周りからの評価だ。
だけど、俺はそれが悪いとは思わなかった。あの国に侵入する際に1度テオラド国王を見た事があったが、あの人は自分の実力をしっかりと認識しているようだった。
自分の考えられる範囲で指示を出し、わからなければ周りを頼る。自分勝手に指示を出し、民を傷つける愚王に比べれば何倍もマシだと俺は思うが。
「まあ、それだけならあなたに手紙を渡すだけで終わりなのだけど」
「他にも何かあるのか?」
「ええ。そのテオラド王国のいざこざの中に大型の昆虫モンスターがいたって話よ。それも、何回も」
この街に現れた昆虫モンスターと同じって事か。もしかするとテオラド王国とルイスは関係しているのかもしれない。
はっきりとわかったわけでは無いが、今わかる唯一の手がかりだ。これで次の目的が決まった。奴がいると思われるテオラド王国へと向かおう。 
もう二度とあの国に足を踏み入れる事はないと思っていたが、あいつを野放しにしておく事は出来ない。何としても俺の手で奴の息の根を止めないと。
「その表情だと、行く気ね?」
「ああ、この街の事と無関係とは思えないし、許せない奴もいるからな。でも、ありがとな。わざわざ教えてくれて」
「あなたが師団長を辞めた原因があの国にあるのはわかっているからね。でも、無理はしないように。私があなたに情報を教えて死んだなんて事が、あの子に伝わったらめんどくさいから」
そう言って苦笑いするメルカディエ。レオナの奴、女の子大好きなメルカディエすらも苦手とさせるほどか。
まあ、あいつには俺の居場所がバレていないから大丈夫だろう。明日にはここを出る予定だし。この時はあいつの執念をすっかり忘れていたが。
「それじゃあ、私はデイガスのところへ行ってくるわ。兵士の治療も残っているしね。ふふ、いくら払ってくれるかしらね?」
メルカディエは微笑みながら部屋を出て行った。俺も後に続くように部屋を出る。さてと、メルルの様子でも見に行くか。
◇◇◇
「アァァァ……アァァァ……」
「な、なんて数のゾンビだ。どうしてこんなところに!?」
「そ、村長、ど、どうしますか? このままでは村の方に来てしまいます!」
「……仕方あるまい。お前は村へ戻って村人たちに避難するように伝えるのだ。儂らは……」
パキッ!
「ガッ!? シャァアァァァ!」
「くそっ! 気が付かれた!」
「お前は早く行くのだ! 儂らが囮になっている内に! お前ら行くぞ!」
「もう、せっかちねぇ。少しは親子のスキンシップはないのかしら?」
「いやいや、何度も言うが親子じゃないからな。あんたは自分より歳が下なら全員に言っているだろうが……それで、本当に何の用だよ?」
自分に割り当てられた部屋なのか、すいすいと自然に入って行き1番奥の大きなソファに腰をかけるメルカディエ。俺があまりにそっけない態度を取ったせいか、少し不機嫌だが。
「……まあ、いいわ。あなたを見れただけでもいいとしましょう。ここに来たのはあなたに伝える事があったからよ」
「俺に伝える事?」
「ええ。あなたが最後の依頼で行った国、テオラド王国は覚えているわよね?」
メルカディエの口から突然出た国名
……忘れる訳が無いだろう。彼女に出会い、彼女に惹かれ、彼女を好きになり、そして彼女を失った国なのだから。
俺が真剣味の浴びた目で彼女を見ると、彼女は話し始めてくれた。
「私も第3師団ほどでは無いけど、他国にある程度兵士を送っているのよね。その兵士からの情報なのだけど、最近あの国の動きが活発になって来たのよね。『豊穣の巫女』もいなくなって、国力的には落ち目なのだけど」
テオラド王国。アルフレイド王国からいくつかの国を挟んだ東にある人口400万ほどの国になる。この大陸の最東端になり、海に面している国の1つになる。
海沿いは漁業が当然盛んで、あの国から取れる魚類が各国に送られている主要な産業になる。それとは別に大陸側では、平地が多く、作物が育ちやすい大地のため、農業も盛んに行われている。
他の国に比べて明らかにおかしい食料の生産量を誇るテオラド王国。その理由が先程メルカディエの口から出て来た『豊穣の巫女』という存在だ。
この世界には様々な神がいて、その中の一神である豊穣神。テオラド王国の王族の女性には稀にその豊穣神の加護を受けて生まれてくる存在がいるらしい。
その加護持ちが生まれた世代は、大地が豊かになり、作物が育ち、国力が何倍にも跳ね上がったとの記録もあるぐらいだ。
それが、この世代にも生まれたのだ。それが『豊穣の巫女』と呼ばれる存在である。そしてそれこそが俺が出会った女性でもある。
「巫女がいなくなった事で、作物は思うように育たないどころか、巫女がいなかった時期に比べても今はかなりひどい状況らしい。その状況なのに、あの国は周りの他国に色々としているようなのね」
「その状況を打破しようと何かしていると?」
俺の言葉にメルカディエは頷く。しかし、どうしてそんな事を? 今のテオラド国王は良くも悪くも普通の王だ。
部下の意見を聞き、問題があれば対処する。ただそれだけ。前に進む事を考えず、現状を維持しようとするだけ、何の面白みのない王。それが、周りからの評価だ。
だけど、俺はそれが悪いとは思わなかった。あの国に侵入する際に1度テオラド国王を見た事があったが、あの人は自分の実力をしっかりと認識しているようだった。
自分の考えられる範囲で指示を出し、わからなければ周りを頼る。自分勝手に指示を出し、民を傷つける愚王に比べれば何倍もマシだと俺は思うが。
「まあ、それだけならあなたに手紙を渡すだけで終わりなのだけど」
「他にも何かあるのか?」
「ええ。そのテオラド王国のいざこざの中に大型の昆虫モンスターがいたって話よ。それも、何回も」
この街に現れた昆虫モンスターと同じって事か。もしかするとテオラド王国とルイスは関係しているのかもしれない。
はっきりとわかったわけでは無いが、今わかる唯一の手がかりだ。これで次の目的が決まった。奴がいると思われるテオラド王国へと向かおう。 
もう二度とあの国に足を踏み入れる事はないと思っていたが、あいつを野放しにしておく事は出来ない。何としても俺の手で奴の息の根を止めないと。
「その表情だと、行く気ね?」
「ああ、この街の事と無関係とは思えないし、許せない奴もいるからな。でも、ありがとな。わざわざ教えてくれて」
「あなたが師団長を辞めた原因があの国にあるのはわかっているからね。でも、無理はしないように。私があなたに情報を教えて死んだなんて事が、あの子に伝わったらめんどくさいから」
そう言って苦笑いするメルカディエ。レオナの奴、女の子大好きなメルカディエすらも苦手とさせるほどか。
まあ、あいつには俺の居場所がバレていないから大丈夫だろう。明日にはここを出る予定だし。この時はあいつの執念をすっかり忘れていたが。
「それじゃあ、私はデイガスのところへ行ってくるわ。兵士の治療も残っているしね。ふふ、いくら払ってくれるかしらね?」
メルカディエは微笑みながら部屋を出て行った。俺も後に続くように部屋を出る。さてと、メルルの様子でも見に行くか。
◇◇◇
「アァァァ……アァァァ……」
「な、なんて数のゾンビだ。どうしてこんなところに!?」
「そ、村長、ど、どうしますか? このままでは村の方に来てしまいます!」
「……仕方あるまい。お前は村へ戻って村人たちに避難するように伝えるのだ。儂らは……」
パキッ!
「ガッ!? シャァアァァァ!」
「くそっ! 気が付かれた!」
「お前は早く行くのだ! 儂らが囮になっている内に! お前ら行くぞ!」
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