王国最強の元暗殺者

やま

14.再会

 準備が出来た俺は屋根から飛び降りる。3階の建物から飛び降り着地した俺は、気配を消してカブト型のモンスターへと向かう。


 気配を殺して一気にカブト型へと迫る。俺に気が付かないカブト型のモンスターは兵士たちを追いかけて進むが、俺は右足の上に立ち、魔力で刃渡りを伸ばしたクロスリッパーで右前足の根元へと突き刺す。


 抵抗感が無く突き刺さるクロスリッパー。そしてそのままクロスリッパーを走らせ、足の付け根から右足を切り落とす。


 カブト型のモンスターは突然の足が落ちた事にバランスを崩した。虫の様に痛みはない様だが攻撃された事に気が付いたカブト型のは体を地面に叩きつける。地面に衝撃が走り地面が割れ、建物にまで衝撃が走る。


 あぶなっ! 俺はカブト型から距離を取り衝撃を避けるが、周りにかなりの被害が出てしまった。まだ俺を見つけられないカブト型は辺り構わず暴れるが……これは見つかった方が良いな。


 周りに被害が出るよりかは断然良い。気配を消すのを止め、再びカブト型前へと向かう。ようやく俺を見つけたカブト型は、俺に向かって羽を震わせて来る。先ほどの風の刃か。


 風の刃をクロスリッパーで弾きながら距離を詰める。カブト型は近づく俺に左足を振り下ろしてくるが遅い。


 振り下ろされる左足を跳んで避け、そのまま足の上を走る。カブト型は暴れるがその程度では振り落とされないぞ。


 足の上を走りカブト型の背に乗ったのと同時に、カブト型の前はねにクロスリッパーを突き刺し、クロスリッパーを振ると、いとも簡単に切り落とす事に成功した。そのまま後ろはねにもクロスリッパーを突き刺し、同じ様に切り落とす。


 背の上で羽を羽ばたかせて俺を振り落とそうとしたが、羽がない方に乗っているため落ちない。風の刃も飛んで来なくなった。


 風の刃を放つ事が出来なくなったカブト型は、背に乗る俺を叩き潰そうと近くにあった建物に体をぶつけようと迫る。俺は直ぐにカブト型から飛び降り、激突するのを免れる。ぶつけられた建物は崩れてしまったが。


 カブト型の上には大量の瓦礫が降り注ぐが、止まる事なくそのまま俺に突進してくる。カブト型の頭についている鋭い角を振り下ろしてくるが、クロスリッパーで横に逸らす。


 カブト型の角が地面にぶつかるのと同時にそのまま横に振ってきたが、俺はカブト型の腹の下へと入り込む。魔力を解除して刃渡りを元に戻したクロスリッパーを、腹の下の節足部分に突き刺す。


 この程度ではダメージが与えられないが、突き刺したまま再び魔力を流し刃渡りを伸ばす。腹の下からカブト型の背まで魔力の刃が突き破るのを感じ、そのまま腹の下を走り抜ける。


 カブト型は攻撃されている感覚はあるのか大きく体を動かして暴れるが、俺が走り抜ける方が速い。潰される前にカブト型の胴体を真っ二つに。しばらく暴れていたが、少しすると地面に倒れた。


 まあまあだったな。俺は身体強化と氣道を解除しながら、気配察知ではカブト型以外に2体のモンスターが既に倒されて、残り5体か。近くにもう1体いるな。そっちに……ちっ!


 俺は咄嗟に横へ飛ぶ。俺がいた場所には短剣が数本突き刺さっていた。短剣が飛んできた方を見ると、屋根の上にはフードを被った奴が立っていた。


 体格からは男か女かわからない。身長も160ほどしか無いから余計にだ。フードの人物は両手に短剣を取り出し、屋根から飛び降りてきた。


 地面に音もなく着地したフードの人物は、そのまま俺へと迫る。左手の短剣で突きを放ってくるのを、クロスリッパーで弾くが、右手の短剣を下から振り上げてくる。


 それもクロスリッパーで防ぎ、今度は俺が下から振り上げる。フードの人物が体を後ろに反らせて避けるが、追うように突きを放つ。


 フードの人物は上から交差させた短剣でクロスリッパーを挟むように下ろして防ぐと左手の短剣を首を狙うように横振りを放ってくる。俺は左手で相手の左手首を掴み防ぐ。


 右手はクロスリッパーと短剣が鍔迫り合い、左手は俺が相手の左手首を掴みこう着状態。


 フードの中は見えないが睨み合っていると、どちらかとも無く距離を取る。距離を取りながらフードの人物を確認するが、かなりの実力者だ。それにどこかで見た事のある動きと構えをしている。


 何処だったか。思い出そうとフードの人物を睨んでいると、構えを解くフードの人物。俺が訝しげに睨んでいると、フードの人物はくすくすと笑い始めた。そしてフードを外した顔を見て、俺は動く事が出来なかった。


「お久しぶりですね、先輩」


 人懐っこそうに微笑む人物。まるで少女のように白い肌に高い声。恋人にあったかのように頰を染める人物は、少女の様な姿をしているが実際は男だ。


 これがあいつやメルルなら俺も微笑むところだが、こいつを見ると吐き気がする。なんでこいつがここにいる? あの時、確実に俺の手で……殺したはずなのに。


「お久しぶりです、先輩。あなたを愛するルイスです」

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