王国最強の元暗殺者

やま

2.冒険者ギルド

 からーん、ころーん


 扉を開けると、扉につけられた鈴が音を鳴らす。俺が扉をくぐると、むわぁ〜と酒の匂いが漂って来る。俺は思わず顔を顰めて中を見渡す。


 俺がやって来たのは冒険者ギルド。冒険者ギルドは街の人たちから依頼を受けて、それを冒険者ギルドに登録した人たち、冒険者たちへと仕事を斡旋する、斡旋所である。


 仕事の内容は様々で、廃墟の撤去、荷物の運搬から、俺が毎日やっている薬草の採取や、鉱石採取。危険な物だと街の外に存在する人外の生き物、モンスターの討伐や、貴族などの護衛の任務など様々だ。ま


 冒険者はランクがあり、1番低いランクがFランク。そこから順にE、D、C、B、A、Sランクと続いて行く。俺はその中でも下から2番目のEランクである。まあ、薬草採取しかしてないから当然だが。


 冒険者ギルドの中は、1階と2階に分かれていて、1階には依頼の受付所があり、そこで依頼の発注や受注、達成の報告が出来るようになっている。ここで冒険者登録も出来る。


 そのすぐ近くには、依頼用の掲示板がある。これも、ランクによって依頼が分けられている。受けられるのは自分のランクの1つ上か1つ下まで。今の俺のランクだとF、E、Dのどれかになる。


 その受付所と依頼掲示板の反対側には、酒場がある。ギルドに入って来た時に漂って来た酒の匂いの元はここになる。こんな朝っぱらから酒を飲んでいる奴がいるって事だ。


 そして2階は冒険者に必要な物が売っている販売所になる。冒険者が活動する上で必要なものが揃っている。値引きなどはできないがどれも定価で売っているため、新人には有難いところだ。


 外で買うと偶に安い物もあるが粗悪品だったり、普通より何割か増して高かったりする事もあるからな。それに比べたらギルド内で売っているものは殆ど品質は変わらないため安全だ。


 俺は依頼掲示板の前まで行って、いつも見ているFランクの依頼の箇所を見る。そしてそこからいつも通りの依頼書を剥がす。依頼書の内容は


 ーーーーーーーーーー
 薬草採取
 1束200テラ(1束20本)
 10束以降から1割り増し
 納入数:あるだけ。
 依頼元:冒険者ギルド
 ーーーーーーーーーー


 と、なっている。テラというのはこの大陸の共通通貨である。1テラから500テラまでが硬貨で、1千テラから紙幣に変わる。大体1番安い食べ物で一食200テラほどの金額になる。


 俺は毎日20束分ほど持って帰っている。大体毎日の稼ぎが4千テラに1割り増しが入って4千400テラ近くを稼いでいる。今泊まっている宿屋が大体2千500テラほどで朝食付きで泊まれるため、それでも余裕があるくらいだ。


 だけど、普通だと薬草だけでこんなには稼げない。薬草は生えてとしても一箇所に1、2本だけだし、採取し過ぎると、取れる箇所が減って行ったりするし。


 更には中には薬草と同じ形をした毒草も混じっていたりもするから、地道な作業が嫌いな者が多い冒険者にはかなり不人気な依頼なのだ。


 まあ、俺にはその全てが関係無いのだが。俺は手に持った依頼書を迷わず受付へと持って行く。受付には幾つか窓口があるのだが、その中で1番初めにグレイブから紹介されてから、ずっと頼りにさせて貰っている受付嬢のところへと持って行く。


 俺が近づくと向こうも気が付いて微笑んでくれる。肩口で揃えられた茶髪の髪の毛にとんがった耳、そしてぺったんこな胸元。俺がお世話になっている受付嬢、フューリさんだ。


 彼女は見た目は20代前半だけど、グレイブ曰く100代ちょっとらしい。なぜそんな事が起きるかというと、彼女は長命で有名なエルフ族の女性だからだ。


 俺たちが住む大陸には俺たち人族以外にも様々な種族が国を作り住んでいる。彼女たちエルフ族もその1つだ。


 エルフ族の特徴は美男美女が多く、若い期間が長く、長命なところに加えて、魔法が得意な一族である。エルフ族とは魔法で勝負をするなと言われているほど。


 俺の知り合いにも1人いる。まあ、あいつはフューリさんと違って変態だが。


「おはようございます、タスクさん。今日も薬草採取ですか?」


「おはようございます、フューリさん。はい、お願いします」


 俺は笑顔で答えながら手に持っている依頼書と自分のギルドカードをフューリさんへと渡す。フューリさんは苦笑いしながら依頼の手続きを行う。


 このやり取りもこの2年間し続けて来たから、これも1つの日常になっている。こういうのを感じると何だかほっとしてしまうのはジジ臭いだろうか?


「はい、これで終わりましたよタスクさん。あっ、薬草採取に行く前に1つ忠告です。最近、街の近くの森の中で新人冒険者の死体が見つかっています。傷跡からして、多分ウルフだと思われます。討伐依頼は出ていて、すぐに討伐されるとは思いますが、タスクさんも気を付けてくださいね」


「はい、わかりました。気を付けて行って来ます」


 俺が微笑んで挨拶をすると、フューリさんもにこりと微笑み返してくれる。周りから射殺す様な視線が集まってくるが無視。そのまま冒険者ギルドを後にする。


 そして、街の門へと辿り着きギルドカードを渡す。門番も慣れているし俺とも顔見知りのため簡単な確認だけ。ただ「頑張れよ、薬草男」とニヤニヤしながら言われたのはあれだったが。


 グレイブには別に言われても構わないと言ったが、ああもニヤニヤしながら言われると腹が立つな。まあなるべく気にしない様にしよう。それよりも、ギルドを出たところから俺の後をつけて来る冒険者たちをどうにかしなければ。

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