妻に出て行かれた男、とある少女と出会う
11
「……ふわぁ〜、今日から自由兵かぁ」
朝日が窓から差し込む中、私は1人で呟く。外では既に店を開けて準備をする人や、どこかへと馬車を走らせる人が窓から見える。
いつも部屋にある小さな窓から覗いていた景色とは違うものが目の前に広がっている。そんな光景を眺めていると
「あっ、おはようございます、レイア様!」
と、声がかけられた。声の主は同じ部屋で寝泊まりしていたシオンで、既に目を覚まして屋敷にいた時のように洗濯をしていたみたい。
「おはよう、シオン。私も起こしてくれれば良かったのに」
私がシオンを手伝おうとすると、シオンは慌てて大丈夫だと言う。シオンは私の事を伯爵の娘として扱ってくれるけど、将来的には自由兵になって日記に書かれている人を探すために家を出るつもりだ。
普通の小娘になった時にシオンやレリックが付いて来てくれるかはわからないし、付いて来てくれたとしてもある程度自分の事は出来ないと。
屋敷にいた頃は、基本部屋から出ない限り、身の回りの事はしてもらったけど、これからは自分でも出来ないとね。
私はシオンにその事を説明して、シオンが渋々教えてくれるのを拙い動きで真似しながら覚えていると、部屋の扉が叩かれる。そして、レリックの声が聞こえて来た。レリックも目を覚ましたみたい。
あまりお金を使うべきでは無いけど、男と女は分けるべきだとシオンもレリックに言われてしまったから、部屋を分けていたのだ。別に一緒でも構わなかったのに。
レリックの声を聞いたシオンが扉を開けてレリックを招き入れる。既に支度は終えているようで、自由兵としての動きやすい格好に変わっている。
私もそろそろ用意しないと。気が付けば私だけ寝間着のままだったから。
「……ちょっ!? な、何しているんですか!?」
そして、着替えようとした私にレリックが慌てた声をかけて来た。声につられて私の方を向いたシオンもギョッとしたような表情を浮かべて、慌てて服を掴む私の手を下に下ろす。レリックは顔を赤くして私とは反対の方を見ていた。
「レ、レリック、部屋から出て下さい! レイア様も男性がいるのに服を脱いではいけません!」
レリックが慌てて部屋を出て行くのを見届けてから、シオンは怒りながら着替えを渡してくれる。確かに、知らない相手なら脱いだりしないけど、レリックなら気にしないのに。自由兵になったらそうしないといけない事もあるだろうし。
それから、シオンに小言を言われながら私は着替えて準備をして行く。もう、そんなに怒らなくたっていいじゃない。
着替えの間、外に待たせてしまったレリックには誤り、私たちは自由組合へと向かう。昨日地下で試験を受けて合格した私たちは、今日から晴れて自由兵となった。
ただ、問題がなかったわけじゃない。それは、レリックが受付のおじさん、モーズさんにとある手紙を渡していた事だ。
その手紙を読んだモーズさんが私たち……正確に言えば私を呼んだ時点で、ある程度何が書かれているか予想は出来た。
思っていた通り、私が伯爵の娘だから便宜を図るようにと書かれていた。そんなつもりは全くなかったから、手紙を破り捨てようと思ったけど、モーズさんに止められてしまったので、そのまま渡した。ただ、この手紙の事は聞かなくて良いとも伝えて。
それに、書いた人の名前が夫人だったというのが余計に嫌だった。あの人はお母様や私の事を嫌っている。そんな人が私なんかのために手紙を書くわけがない。明らかに何か裏があるに決まっている。
その手紙のおかげとは思いたくはないけど、自由兵になれた私たちは、自由組合へと辿り着いた。中に入って私たちは真っ直ぐとモーズさんのところへと向かう。昨日、合格を言い渡された後に、今日の今の時間に来るように言われていたのだ。
真っ直ぐと受付に向かうと、昨日と同じようにすっぽりと開いた空間が目の前に現れる。その空間の先には、これも昨日と同じように書類を見ているモーズさんの姿があった。
「モーズさん、おはようございます」
「……ん? おう、来たな、お前たち」
私たちが来たのに気が付いたモーズさんは手元の資料を置いて私たちを見て来る。私とレリックは昨日で慣れたから普通に挨拶をして、シオンは少しビビりながらも挨拶を交わす。
それから、今日の予定についてモーズさんと話す。私としてはこのまま依頼を見に行って受けたかったとこほだけど、モーズさんには指導役兼護衛として1人付けると言われた。確実に昨日の手紙のせいだ。
物凄く嫌だけど、組合の中で決まったらしいので私が何を言っても無理だろう。嫌々ながらも待っていると、モーズさんが組合の入り口をジッと見ていた。
それにつられて私も入り口の方を見ると、そこからモーズさんがいる受付に真っ直ぐと進んでくる男性がいた。
30代の少しくたびれた様子の男性。言っちゃ悪いけど、その辺にいそうなほど普通な男性。いつもなら特に気にする事は無いのだけど、この時は何故かこの男性から目を離す事が出来なかった……。
朝日が窓から差し込む中、私は1人で呟く。外では既に店を開けて準備をする人や、どこかへと馬車を走らせる人が窓から見える。
いつも部屋にある小さな窓から覗いていた景色とは違うものが目の前に広がっている。そんな光景を眺めていると
「あっ、おはようございます、レイア様!」
と、声がかけられた。声の主は同じ部屋で寝泊まりしていたシオンで、既に目を覚まして屋敷にいた時のように洗濯をしていたみたい。
「おはよう、シオン。私も起こしてくれれば良かったのに」
私がシオンを手伝おうとすると、シオンは慌てて大丈夫だと言う。シオンは私の事を伯爵の娘として扱ってくれるけど、将来的には自由兵になって日記に書かれている人を探すために家を出るつもりだ。
普通の小娘になった時にシオンやレリックが付いて来てくれるかはわからないし、付いて来てくれたとしてもある程度自分の事は出来ないと。
屋敷にいた頃は、基本部屋から出ない限り、身の回りの事はしてもらったけど、これからは自分でも出来ないとね。
私はシオンにその事を説明して、シオンが渋々教えてくれるのを拙い動きで真似しながら覚えていると、部屋の扉が叩かれる。そして、レリックの声が聞こえて来た。レリックも目を覚ましたみたい。
あまりお金を使うべきでは無いけど、男と女は分けるべきだとシオンもレリックに言われてしまったから、部屋を分けていたのだ。別に一緒でも構わなかったのに。
レリックの声を聞いたシオンが扉を開けてレリックを招き入れる。既に支度は終えているようで、自由兵としての動きやすい格好に変わっている。
私もそろそろ用意しないと。気が付けば私だけ寝間着のままだったから。
「……ちょっ!? な、何しているんですか!?」
そして、着替えようとした私にレリックが慌てた声をかけて来た。声につられて私の方を向いたシオンもギョッとしたような表情を浮かべて、慌てて服を掴む私の手を下に下ろす。レリックは顔を赤くして私とは反対の方を見ていた。
「レ、レリック、部屋から出て下さい! レイア様も男性がいるのに服を脱いではいけません!」
レリックが慌てて部屋を出て行くのを見届けてから、シオンは怒りながら着替えを渡してくれる。確かに、知らない相手なら脱いだりしないけど、レリックなら気にしないのに。自由兵になったらそうしないといけない事もあるだろうし。
それから、シオンに小言を言われながら私は着替えて準備をして行く。もう、そんなに怒らなくたっていいじゃない。
着替えの間、外に待たせてしまったレリックには誤り、私たちは自由組合へと向かう。昨日地下で試験を受けて合格した私たちは、今日から晴れて自由兵となった。
ただ、問題がなかったわけじゃない。それは、レリックが受付のおじさん、モーズさんにとある手紙を渡していた事だ。
その手紙を読んだモーズさんが私たち……正確に言えば私を呼んだ時点で、ある程度何が書かれているか予想は出来た。
思っていた通り、私が伯爵の娘だから便宜を図るようにと書かれていた。そんなつもりは全くなかったから、手紙を破り捨てようと思ったけど、モーズさんに止められてしまったので、そのまま渡した。ただ、この手紙の事は聞かなくて良いとも伝えて。
それに、書いた人の名前が夫人だったというのが余計に嫌だった。あの人はお母様や私の事を嫌っている。そんな人が私なんかのために手紙を書くわけがない。明らかに何か裏があるに決まっている。
その手紙のおかげとは思いたくはないけど、自由兵になれた私たちは、自由組合へと辿り着いた。中に入って私たちは真っ直ぐとモーズさんのところへと向かう。昨日、合格を言い渡された後に、今日の今の時間に来るように言われていたのだ。
真っ直ぐと受付に向かうと、昨日と同じようにすっぽりと開いた空間が目の前に現れる。その空間の先には、これも昨日と同じように書類を見ているモーズさんの姿があった。
「モーズさん、おはようございます」
「……ん? おう、来たな、お前たち」
私たちが来たのに気が付いたモーズさんは手元の資料を置いて私たちを見て来る。私とレリックは昨日で慣れたから普通に挨拶をして、シオンは少しビビりながらも挨拶を交わす。
それから、今日の予定についてモーズさんと話す。私としてはこのまま依頼を見に行って受けたかったとこほだけど、モーズさんには指導役兼護衛として1人付けると言われた。確実に昨日の手紙のせいだ。
物凄く嫌だけど、組合の中で決まったらしいので私が何を言っても無理だろう。嫌々ながらも待っていると、モーズさんが組合の入り口をジッと見ていた。
それにつられて私も入り口の方を見ると、そこからモーズさんがいる受付に真っ直ぐと進んでくる男性がいた。
30代の少しくたびれた様子の男性。言っちゃ悪いけど、その辺にいそうなほど普通な男性。いつもなら特に気にする事は無いのだけど、この時は何故かこの男性から目を離す事が出来なかった……。
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