世界に復讐を誓った少年

やま

105.とある冒険者の話 その2(2)

「ここがこの町のダンジョンか」


 俺たちは町の屋台などが並ぶ通りを抜けて、ダンジョンへの入り口へとやって来た。周りには俺たちと同じようにダンジョンに入ろうとする冒険者たちがそれぞれ集まり話し合ったり、ダンジョンへと入って行ったりしていた。


「中々の冒険者の数であるな。それ程稼ぎが良いという事であるか」


「そうね。聞いた話だと普通のゾンビですら純度の高い魔石を落としみたいだし」


 そんな話をするエイラとレグンの夫婦。ゾンビはそこまで強くない。それを倒すだけで金になるのだから、それは冒険者たちが集まるだろう。


 俺たちも彼らの後に続いてダンジョンへと入る。ダンジョンは地下になっているようで、階段を下って行く。


 階段を降り切ると目の前に現れたのは岩場が多い薄暗い空間だった。ランタンは必要ない程度には明るいが、少し足元が見えない。そして結構な広さだ。


「これは面倒だなぁ。隠れるところが多いのは有り難いけど、魔物もどこから出て来るかわからないから油断出来ないよぉ」


 この岩場を見て眉をひそめるシルフェ。確かにこの岩場は奇襲がしやすいな。警戒するのは魔物だけでなく、こういうところに現れる盗賊もだ。


「取り敢えず進んでみるか。隊列は何時もの通りレグンか先頭でその後ろにエイラとレギンス、シルフェに殿が俺だ。レグン、頼んだぞ」


「わかっているである」


 レグンは背に背負ってある斧を取り出し、辺りを警戒しながら前を進む。その後ろでエイラが索敵の魔法を使いレグンをサポートしていた。


 レギンスは回復役と今回は死霊系なので光魔法を使って貰う事になる。それから瘴気が濃いところでは保護魔法も。


 そして俺の前で弓を構えて辺りを警戒するシルフェ。俺は槍を握りながら背後からの奇襲を警戒していた。これが俺たちの何時もの陣形だ。


「むっ、ゾンビが2体!」


 しばらく辺りを警戒しながら歩いていると、レグンが声を上げる。進む方を見るとレグンの言葉通りゾンビが2体歩いて来た。


 見た目はかなりグロいが今まで見たゾンビと変わらない。普通のゾンビより少し速いってところぐらいか。獲物を見つけたゾンビは唸り声を上げながら近づいて来るが、それより早くレグンが前に出る。


 左側のゾンビに向かって斧を突き出し吹き飛ばし、そのまま右側のゾンビの足へと斧を横に振る。簡単にゾンビの両足は切り落とされ、その場に倒れ込むゾンビ。その頭目掛けてレグンの斧が振り下ろされた。


 斧に吹き飛ばされた片方のゾンビは立とうとするが、頭に3本の矢が突き刺さりそのまま後ろに倒れた。シルフェが矢を放ったようだ。


「戦って見てどうだ、レグン?」


「感触的には他のゾンビたちと変わらないである。もう少し戦って見ない事にはわからないであるな」


 それもそうか。俺はレグンの言葉に頷き再び歩き始める。その後2時間ぐらいダンジョンの中を歩いたのだが、現れた魔物はゾンビが20体、スケルトン14体、レイスが5体、ゾンビドックが4体だった。


 ゾンビとスケルトンはレグンと俺が倒してしまい、レイスは魔力の篭った武器か魔法でしか倒せないため、レギンスに任せた。ゾンビドックはシルフェが奇襲で1体倒して、混乱しているうちに俺とレグンが1体ずつ、エイラが魔法で残りの1体を倒してくれた。


 それでダンジョンを後にして宿屋に集まった俺たち。今日のダンジョンで感じた事を話し合う事にしたのだ。まあ、結果は普通のゾンビたちと変わらない、って話になってしまったが。


「死霊系の出るダンジョンって忌避されがちなのだけど、この稼ぎならみんながこぞって行くのはわからなくもないわね」


「そうであるな。まだ1階とはいえ、殆ど危険なく稼げたのだから」


「明日は2階以降も行こうと思うんだが、みんなはどうた?」


「良いと思うよ。2階以降の事を聞いて来たけど、そこまで直ぐには変わらないみたいだしね」


「これなら僕お酒飲みながらでも……」


「「「「駄目(だよ)(である)(だ)!!」」」」


「じょ、冗談だよ。そんな怒らないでよ」


 突然馬鹿な事を言い出すレギンスにみんなが怒鳴る。流石にそれはダンジョンを舐めすぎだ。ったく、こいつは。やる時はしっかりとやってくれるのだがなぁ。


 俺はエイラとシルフェに怒られるレギンスを見てそう思うのだった。


 ◇◇◇


「いやぁ、しばらく帰ってない内にこんなところが出来ていたなんてね。これって僕の影響のせい?」


「前にダルクス殿からそんな話は聞いた事があるぞ、マスター。マスターの放った魔力が瘴気になって大地を汚染していると。それを封じ込めた結果、逃げ場を無くした瘴気がダンジョンになったのだろう」


 僕の隣にマントを被るリーシャがそう話してくれる。へぇ、そんな話をしていたんだ。反対側には流石です、と言ってくれるミレーヌが。あの時はただ怒りに任せて魔力を出しただけだから、偶々なんだけどね。


「でも、良かったよ。どうやってこの村……今は町か。この町に母さんの墓を作ろうかと考えていたんだけど、このダンジョンを使わせてもらおう。町の住民どもを巻き込んでね」


 僕はそう言いながらクロノから貰ったアイテムバックからある骨を取り出す。それに魔力を流して蘇らせる。


「ギギ……ガァァァアアアッッ!!!」


「さて、お前にはこのダンジョンのボスになってもらうよ。しかも自由に動き回れるボスとしてね」


 楽しくなって来た!

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