世界に復讐を誓った少年
94.天幕の中で
「これは中々壮観だね」
僕は目の前に広がる光景を見て感嘆の声を漏らす。目の前に立ち並ぶ兵士たち。今までは数百、数千の規模の戦いしかした事が無かったけど、今回は10万近くになる。相手もそれ以上の戦力が乱れる事なく並んでいた。
「確かにこれは凄いですね。集まった軍が歩を進める度に大地が揺れるなんて」
そんな僕の隣で同じようにミレーヌも驚きを露わにする。僕の左腕にピシッと抱き着くミレーヌ。その姿がとても可愛らしいので頭をなでなで。猫のように気持ち良さそうに目を細めるミレーヌを見ていると
「楽しそうだな、マスター」
と、リーシャがやって来た。隣には手伝いをしているのかマルスとティエラが付いていた。マルスは目の前の光景を見てまた緊張しているけど、ティエラは普段通りって感じだ。やっぱりティエラの方が肝が据わっているね。マルスは見習わなきゃ。
「やあ、リーシャ。そうだね。ミレーヌがいるからなのもそうだけど、これからの事を考えるとね」
「ふむ。私も聖騎士団長だった頃でも、ここまでの戦争は無かった。あの頃は既に周辺諸国をある程度抑えていたからな。私も目の前の整列する軍を見て高揚しているよ」
「高揚し過ぎて目的を忘れないでね」
僕がニヤッと笑みを浮かべながら言うと、リーシャは少し頬を膨らませて怒ったようにわかっていると答える。
それから、みんなで天幕に戻ると、中には全員揃っていた。入って来た僕を見てエリーゼが嬉しそうに立ち上がって僕に近づいてくるけど、それを遮る影。僕とエリーゼとの間にミレーヌが入って来たのだ。
「……あら、ミレーヌ様、急に前に立つなんて危ないじゃないですか」
「ふふっ、ハルト様に身の危険が迫っていましたので」
2人はうふふ、と笑い合いながら睨み合う。な、何これ。なんだか怖いんだけど。笑い合ったまま動かない2人を眺めていると、クイクイと袖が引っ張られる。引っ張られた方を見ると、鎧を着たフィアが立っていた。
「……ハルト、ほら、立っていないで席に座ろう」
フィアはそれだけ言うと僕の腕を抱くように持って引っ張って歩き始める。少し頰を赤く染めて恥ずかしがっている姿は、普段女王としての凛々しい姿とは全く別で、とても可愛らしいものだった。
そして、僕と僕に寄り添うように歩くフィアを見て、睨み合っていた2人は、今度は僕らを見たまま固まってしまった。
「フィアさん、あなた……」
「ぐぬぬ、やりますね、フィア様。まさか、ここでダークホースが現れるとは」
「えっ、な、なんだ? えっ?」
自分が何故見られているのかわかっていないフィアは戸惑うばかり。そんなフィアも可愛くてつい頭を撫でると、僕をジロッと見てくる2人。そしてジリジリと寄ってくるので、2人にも頭を撫でてあげる。
その光景をやれやれと見慣れた様子で見ている者もいれば、僕を睨みつけてくる者もいる。言わなくてもわかると思うけど、前者は僕が蘇らせた配下たちで、後者はエリーゼに賭けてやって来た帝国の貴族たちだ。
本当にエリーゼを慕って来た者もいるだろうけど、大半があのマルスが殺した……名前を忘れたけど、彼のようにエリーゼと良い関係になろうと企んで来た者ばかりだろう。
ただ、側には僕がいるため当てが外れた貴族たちは、その怒りを僕に向けて来ているのだろうね。まあ、今は放っておくよ。こんなのでも味方だ。壁ぐらいは役に立つだろうしね。
それだけならまだ生かしておいて有効活用しようと思うけど、貴族のうちの彼らはダメだ。配下たちのように暖かく見るのではなく、貴族たちのように敵意を向けるでもない。ただ、僕たちを観察する彼らは。
僕は天幕の端に立つデュラハンを動かす。僕の指示を聞いたデュラハンは、剣を抜き僕たちを観察している貴族2人へと振り下ろす。
しかし、2人の貴族はデュラハンの攻撃を避けて天幕から出ようとした。潜入するだけあって少しは出来るようだね。
だけど、天幕から出ようとする2人の前に立ちはだかる影。リーシャとエルフィオンだ。2人は武器を持つ事無く2人を鎮圧させる。
2人はジタバタと暴れるけど、リーシャとエルフィオンに押さえ込まれて動く事が出来ない。このままどうやって入ったや、誰の命令なのかなど、尋問しようと思うけど、普通に聞いても当然話さないだろうね。
まあ、無理矢理話させる方法はいくらでもあるから良いのだけど。だけど、尋問してこいつらを殺す前に
「こいつらの目を使って見ているんだろ、皇子様。首を洗って待っていろよ。僕がその首を貰いに行ってあげるから」
恨みはないけど、殺させてもらうよ。
◇◇◇
「……ふむ、意図も簡単にバレてしまったな。彼らは
あれでも我が国で凄腕なのだが」
「神の力を持つ彼らを侮ってはいけません。確実に彼らを殺すように、あなたにその力の使い方を教えたのですから」
「ああ、わかっている。まだ不完全だが、それでもわかるほどの巨大な力。この黄龍の力があれば、奴も殺せるだろう。だが、その前に青龍家の娘を捕らえねばな」
僕は目の前に広がる光景を見て感嘆の声を漏らす。目の前に立ち並ぶ兵士たち。今までは数百、数千の規模の戦いしかした事が無かったけど、今回は10万近くになる。相手もそれ以上の戦力が乱れる事なく並んでいた。
「確かにこれは凄いですね。集まった軍が歩を進める度に大地が揺れるなんて」
そんな僕の隣で同じようにミレーヌも驚きを露わにする。僕の左腕にピシッと抱き着くミレーヌ。その姿がとても可愛らしいので頭をなでなで。猫のように気持ち良さそうに目を細めるミレーヌを見ていると
「楽しそうだな、マスター」
と、リーシャがやって来た。隣には手伝いをしているのかマルスとティエラが付いていた。マルスは目の前の光景を見てまた緊張しているけど、ティエラは普段通りって感じだ。やっぱりティエラの方が肝が据わっているね。マルスは見習わなきゃ。
「やあ、リーシャ。そうだね。ミレーヌがいるからなのもそうだけど、これからの事を考えるとね」
「ふむ。私も聖騎士団長だった頃でも、ここまでの戦争は無かった。あの頃は既に周辺諸国をある程度抑えていたからな。私も目の前の整列する軍を見て高揚しているよ」
「高揚し過ぎて目的を忘れないでね」
僕がニヤッと笑みを浮かべながら言うと、リーシャは少し頬を膨らませて怒ったようにわかっていると答える。
それから、みんなで天幕に戻ると、中には全員揃っていた。入って来た僕を見てエリーゼが嬉しそうに立ち上がって僕に近づいてくるけど、それを遮る影。僕とエリーゼとの間にミレーヌが入って来たのだ。
「……あら、ミレーヌ様、急に前に立つなんて危ないじゃないですか」
「ふふっ、ハルト様に身の危険が迫っていましたので」
2人はうふふ、と笑い合いながら睨み合う。な、何これ。なんだか怖いんだけど。笑い合ったまま動かない2人を眺めていると、クイクイと袖が引っ張られる。引っ張られた方を見ると、鎧を着たフィアが立っていた。
「……ハルト、ほら、立っていないで席に座ろう」
フィアはそれだけ言うと僕の腕を抱くように持って引っ張って歩き始める。少し頰を赤く染めて恥ずかしがっている姿は、普段女王としての凛々しい姿とは全く別で、とても可愛らしいものだった。
そして、僕と僕に寄り添うように歩くフィアを見て、睨み合っていた2人は、今度は僕らを見たまま固まってしまった。
「フィアさん、あなた……」
「ぐぬぬ、やりますね、フィア様。まさか、ここでダークホースが現れるとは」
「えっ、な、なんだ? えっ?」
自分が何故見られているのかわかっていないフィアは戸惑うばかり。そんなフィアも可愛くてつい頭を撫でると、僕をジロッと見てくる2人。そしてジリジリと寄ってくるので、2人にも頭を撫でてあげる。
その光景をやれやれと見慣れた様子で見ている者もいれば、僕を睨みつけてくる者もいる。言わなくてもわかると思うけど、前者は僕が蘇らせた配下たちで、後者はエリーゼに賭けてやって来た帝国の貴族たちだ。
本当にエリーゼを慕って来た者もいるだろうけど、大半があのマルスが殺した……名前を忘れたけど、彼のようにエリーゼと良い関係になろうと企んで来た者ばかりだろう。
ただ、側には僕がいるため当てが外れた貴族たちは、その怒りを僕に向けて来ているのだろうね。まあ、今は放っておくよ。こんなのでも味方だ。壁ぐらいは役に立つだろうしね。
それだけならまだ生かしておいて有効活用しようと思うけど、貴族のうちの彼らはダメだ。配下たちのように暖かく見るのではなく、貴族たちのように敵意を向けるでもない。ただ、僕たちを観察する彼らは。
僕は天幕の端に立つデュラハンを動かす。僕の指示を聞いたデュラハンは、剣を抜き僕たちを観察している貴族2人へと振り下ろす。
しかし、2人の貴族はデュラハンの攻撃を避けて天幕から出ようとした。潜入するだけあって少しは出来るようだね。
だけど、天幕から出ようとする2人の前に立ちはだかる影。リーシャとエルフィオンだ。2人は武器を持つ事無く2人を鎮圧させる。
2人はジタバタと暴れるけど、リーシャとエルフィオンに押さえ込まれて動く事が出来ない。このままどうやって入ったや、誰の命令なのかなど、尋問しようと思うけど、普通に聞いても当然話さないだろうね。
まあ、無理矢理話させる方法はいくらでもあるから良いのだけど。だけど、尋問してこいつらを殺す前に
「こいつらの目を使って見ているんだろ、皇子様。首を洗って待っていろよ。僕がその首を貰いに行ってあげるから」
恨みはないけど、殺させてもらうよ。
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「……ふむ、意図も簡単にバレてしまったな。彼らは
あれでも我が国で凄腕なのだが」
「神の力を持つ彼らを侮ってはいけません。確実に彼らを殺すように、あなたにその力の使い方を教えたのですから」
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