世界に復讐を誓った少年
92.助けた後
「あぎゃあああぁぁぁぁっ!!! 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!」
私はあの男に刺されたお腹から全身に広がる痛みに、ベッドの上でのたうち回る。もう、周りの事なんて気にならないほどの痛み。この痛みを取るためなら、何をしても構わないと思うほどの激痛が私を襲う。
「フィストリア様! 何が!?」
「近寄るんじゃないわよ!!!」
私の事を心配して近づいて来る天使を壁を作り吹き飛ばす。吹き飛ばした天使の事なんて既に忘れた私は、この痛みを早く取り除くため神力を注ぐ。
今まで溜めた神力が減ってしまうけど、そんな事を考える暇は無かった。早くこの痛みから逃れたいという気持ちの方が強かった。
それからどのくらい経っただろうか。痛みがようやく引いた頃には、私の部屋はボロボロになっていた。私が無意識にやってしまったようね。
「大丈夫でしょうか、フィストリア様」
「……シグルド。悪いわね、部屋をめちゃくちゃにして」
「構いません。フィストリア様の気がすむのであれば」
恭しく私に頭を下げて来るシグルド。ほんの僅かとはいえ、私を退けたあの男を殺せるのは、シグルドぐらいかしら。でも、ここから離れさせるわけには……そういえば、彼らは帝国と争うって言っていたわね。
「シグルド、帝国には確か『黄竜の四宝』があったわよね?」
「ええ、あのお方が戯れに放った物ですね。確か現在は帝国の四獣家という貴族がそれぞれ保管しているはずです」
「……シグルド、今すぐ帝国に天使を送って、四宝の本当の使い方を教えて来て頂戴」
「わかりました、フィストリア様」
絶対にあの男は許さないわ。この私に傷を付けた報い、あなたの命程度じゃ許さないわよ、ハルト。
◇◇◇
「ほら、あーん」
「……あ、あーん……は、ハルト様、もう、1人でも食べられますよ?」
恥ずかしそうにしながらも、僕が差し出すスプーンを咥えてご飯を食べてくれるミレーヌだけど、僕が食べさせるのを毎日やめさせようとしてくる。
まあ、やめないけど。ミレーヌを蘇らせてから今日まで色んな世話を僕がやって来たんだ。今更やめないよ?
僕の気持ちが伝わったのか、申し訳なさそうにしながらも、嬉しそうな表情を浮かべるミレーヌ。僕が黙ってスプーンを差し出すと、ミレーヌも黙って咥える。
それから静かな時間を2人で過ごした。食べ終えてからは、汗を拭ってあげて。これにもミレーヌは恥ずかしがるけど、毎晩やる事やっていたのに今更恥ずかしがる事もないだろうに。
ただ、綺麗なミレーヌのお腹に、刺し傷が残ってしまったのは申し訳ない気持ちでいっぱいだ。彼女の傷は殆ど治せたのに、僕の剣を刺した傷だけが治らなかった。
ミレーヌは笑って許してくれたけど、女の子なのだから気にしていないはずがない。何とかして傷を消す方法を探してあげないと。
「ハルト様?」
傷の事を考えていたら体を拭く腕が止まっていたようでミレーヌが尋ねてくる。僕は何でもないと首を振り、続きを始める。
そんなゆったりとした日々を過ごし始めて1週間後、クロノより連絡があった。各国の軍の準備を終えて、いつでも攻め込む事が出来るという。
その頃にはミレーヌの体も大分良くなって来た。今も僕と一緒に闇魔法の訓練をしている。
元々は『僧侶』という職業でシスターをしていたミレーヌ。光魔法を得意としており、何度も使う光景を見て来たが、蘇らせてからは全く使えなくなった。
理由はある程度わかっている。僕の血が混じったからだろう。堕天使として蘇ったミレーヌは、生前と比べ物にならないくらいの身体能力と魔力量、そして、光魔法が使えなくなった代わりに闇魔法が使えるようになっていたのだ。
光魔法ならエキスパートのミレーヌも流石に使えなかった闇魔法は詳しくないらしく、能力が違う暗黒魔術は教えられないため、今は一緒に学びながら練習している。
暗黒魔術は下位互換である闇魔法も問題なく使えたため、まず僕が教本などの内容を見て魔法を発動する。これが面白い事に教本を見ただけでどういう魔法かわかるんだよね。
そして、賢くて魔力量の多いミレーヌは、僕が見せた魔法を見ただけで理解して次々と自分のものにしていく。下手すればネロより上かもしれない。
ネロにミレーヌの練習風景を見せたら、配下の管理を任せようかなんて言っていたし。まあ、それは許さないけど。
クロノから準備を終えたという連絡が来てから3日後、こちらも準備が出来たため、これから帝国へと向かう。
方法として、帝国に残したエルフィオンが作ってくれた転移門を使う。本来なら1度言った場所にしか使えないけど、僕の魔力を辿って無理矢理作ってくれた。
行くメンバーは初めに決めた通りのメンバーで行く。少しミレーヌが心配だが、側にロウをつけておけば大丈夫だろう。
全員が揃ったのを確認してから、門へと魔力を注ぐ。すると、あっという間に亜人国へと転移した。流石エルフィオンだ。
全員が揃ったのを確認してから、僕は門へと魔力を注ぐ。魔力を注いで行くと光り輝く門。そして、あっという間に亜人国へと転移した。問題なく転移出来たようだ。
死霊兵たちをそのまま連れて行くのは騒ぎになるから、ネロに任せて僕たちはエリーゼたちがいる場所へと向かう。
亜人国の中でも帝国との国境に一番近い街で、その中で大きな屋敷を使っているようだ。屋敷に辿り着くと帝国の兵士が入り口に立っている。無視して進むと、兵士たちは何故か剣を抜いて威嚇して来た……何だこいつら?
一瞬、エリーゼが裏切ったのかと思ったけど、彼女は心身共に僕から離れられないようにしているし、側にはエルフィオンやクロノがいるからそんな事はない。だとしたら、考えられるのは……
「離しなさい! あなたとの縁は切れたのです!」
そんな事を考えていたらタイミングよく現れたエリーゼ。そして、その後を追いかける茶髪の男。勘だけどあいつが関わっている気がする。
私はあの男に刺されたお腹から全身に広がる痛みに、ベッドの上でのたうち回る。もう、周りの事なんて気にならないほどの痛み。この痛みを取るためなら、何をしても構わないと思うほどの激痛が私を襲う。
「フィストリア様! 何が!?」
「近寄るんじゃないわよ!!!」
私の事を心配して近づいて来る天使を壁を作り吹き飛ばす。吹き飛ばした天使の事なんて既に忘れた私は、この痛みを早く取り除くため神力を注ぐ。
今まで溜めた神力が減ってしまうけど、そんな事を考える暇は無かった。早くこの痛みから逃れたいという気持ちの方が強かった。
それからどのくらい経っただろうか。痛みがようやく引いた頃には、私の部屋はボロボロになっていた。私が無意識にやってしまったようね。
「大丈夫でしょうか、フィストリア様」
「……シグルド。悪いわね、部屋をめちゃくちゃにして」
「構いません。フィストリア様の気がすむのであれば」
恭しく私に頭を下げて来るシグルド。ほんの僅かとはいえ、私を退けたあの男を殺せるのは、シグルドぐらいかしら。でも、ここから離れさせるわけには……そういえば、彼らは帝国と争うって言っていたわね。
「シグルド、帝国には確か『黄竜の四宝』があったわよね?」
「ええ、あのお方が戯れに放った物ですね。確か現在は帝国の四獣家という貴族がそれぞれ保管しているはずです」
「……シグルド、今すぐ帝国に天使を送って、四宝の本当の使い方を教えて来て頂戴」
「わかりました、フィストリア様」
絶対にあの男は許さないわ。この私に傷を付けた報い、あなたの命程度じゃ許さないわよ、ハルト。
◇◇◇
「ほら、あーん」
「……あ、あーん……は、ハルト様、もう、1人でも食べられますよ?」
恥ずかしそうにしながらも、僕が差し出すスプーンを咥えてご飯を食べてくれるミレーヌだけど、僕が食べさせるのを毎日やめさせようとしてくる。
まあ、やめないけど。ミレーヌを蘇らせてから今日まで色んな世話を僕がやって来たんだ。今更やめないよ?
僕の気持ちが伝わったのか、申し訳なさそうにしながらも、嬉しそうな表情を浮かべるミレーヌ。僕が黙ってスプーンを差し出すと、ミレーヌも黙って咥える。
それから静かな時間を2人で過ごした。食べ終えてからは、汗を拭ってあげて。これにもミレーヌは恥ずかしがるけど、毎晩やる事やっていたのに今更恥ずかしがる事もないだろうに。
ただ、綺麗なミレーヌのお腹に、刺し傷が残ってしまったのは申し訳ない気持ちでいっぱいだ。彼女の傷は殆ど治せたのに、僕の剣を刺した傷だけが治らなかった。
ミレーヌは笑って許してくれたけど、女の子なのだから気にしていないはずがない。何とかして傷を消す方法を探してあげないと。
「ハルト様?」
傷の事を考えていたら体を拭く腕が止まっていたようでミレーヌが尋ねてくる。僕は何でもないと首を振り、続きを始める。
そんなゆったりとした日々を過ごし始めて1週間後、クロノより連絡があった。各国の軍の準備を終えて、いつでも攻め込む事が出来るという。
その頃にはミレーヌの体も大分良くなって来た。今も僕と一緒に闇魔法の訓練をしている。
元々は『僧侶』という職業でシスターをしていたミレーヌ。光魔法を得意としており、何度も使う光景を見て来たが、蘇らせてからは全く使えなくなった。
理由はある程度わかっている。僕の血が混じったからだろう。堕天使として蘇ったミレーヌは、生前と比べ物にならないくらいの身体能力と魔力量、そして、光魔法が使えなくなった代わりに闇魔法が使えるようになっていたのだ。
光魔法ならエキスパートのミレーヌも流石に使えなかった闇魔法は詳しくないらしく、能力が違う暗黒魔術は教えられないため、今は一緒に学びながら練習している。
暗黒魔術は下位互換である闇魔法も問題なく使えたため、まず僕が教本などの内容を見て魔法を発動する。これが面白い事に教本を見ただけでどういう魔法かわかるんだよね。
そして、賢くて魔力量の多いミレーヌは、僕が見せた魔法を見ただけで理解して次々と自分のものにしていく。下手すればネロより上かもしれない。
ネロにミレーヌの練習風景を見せたら、配下の管理を任せようかなんて言っていたし。まあ、それは許さないけど。
クロノから準備を終えたという連絡が来てから3日後、こちらも準備が出来たため、これから帝国へと向かう。
方法として、帝国に残したエルフィオンが作ってくれた転移門を使う。本来なら1度言った場所にしか使えないけど、僕の魔力を辿って無理矢理作ってくれた。
行くメンバーは初めに決めた通りのメンバーで行く。少しミレーヌが心配だが、側にロウをつけておけば大丈夫だろう。
全員が揃ったのを確認してから、門へと魔力を注ぐ。すると、あっという間に亜人国へと転移した。流石エルフィオンだ。
全員が揃ったのを確認してから、僕は門へと魔力を注ぐ。魔力を注いで行くと光り輝く門。そして、あっという間に亜人国へと転移した。問題なく転移出来たようだ。
死霊兵たちをそのまま連れて行くのは騒ぎになるから、ネロに任せて僕たちはエリーゼたちがいる場所へと向かう。
亜人国の中でも帝国との国境に一番近い街で、その中で大きな屋敷を使っているようだ。屋敷に辿り着くと帝国の兵士が入り口に立っている。無視して進むと、兵士たちは何故か剣を抜いて威嚇して来た……何だこいつら?
一瞬、エリーゼが裏切ったのかと思ったけど、彼女は心身共に僕から離れられないようにしているし、側にはエルフィオンやクロノがいるからそんな事はない。だとしたら、考えられるのは……
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