世界に復讐を誓った少年
88.一時帰宅
「うーん、久し振りに帰って来たな、ここにも」
「そうだな、マスター」
久し振りに帰って来たメストア王国の地に降り立った僕は凝り固まった体を伸ばす。横ではリーシャとマルスが立つ。
他の配下たちについては亜人国で準備中だ。エルフィオンはともかく、戦闘狂のレルシェンドはここよりも向こうにおいている方が落ち着いているし。万が一の時のためにロウをお目付役として置いて来たから大丈夫だと思うけど。
クロノも、銀髪の少女、シーシャの側にいたいようだったから置いて来た。その分仕事も置いて来たけど。
旗頭であるエリーゼは当然連れて来ていない。手紙を送ったおかげで、エリーゼを目指して集まる帝国の貴族もいるしね。
「待っていたぞ、創造主よ」
城の庭に降り立った僕たちの元にネロが姿を現わす。姿は外に出るためか骸骨ではなく、肉体を持っていた。
「やあ、久し振りだね、ネロ。何か問題はなかったかい?」
「周りの国がまれに攻めてくる以外は特にはなかったぞ」
うん、それは国としては大問題なのだけど、この様子だと特に問題は起きずに対処したみたいだね。フィアもいるし当然か。
「久し振りだな、ハルト」
「ハルト様!」
そんな風にネロと話をしていると、更に城の中からフィアとミレーヌが出て来た。フィアは優雅に歩きながらで、ミレーヌは脇目も振らずに真っ直ぐと僕の元へと走って来た。
そして、僕を強く抱きしめてくる。しかし、直ぐに離れて鼻をすんすんとしてくる。どうしたんだ?
「ハルト様」
「なんだい、ミレーヌ?」
「どうして、ハルト様から知らない女性の匂いがするのでしょうか?」
笑顔なのだけど笑っていない目。僕とミレーヌの周りだけ冷える感じ。
「リーシャ様でも無いですし。私の知らない人ですね。ううっ、私は1人で慰めていたというのに、ハルト様は楽しんでいらしたのですね」
ミレーヌはそう言いながら、ヨヨヨと泣き崩れる。ったく。
「悪かったよ、ミレーヌ。今日は1日ミレーヌのために使うから許してくれ」
「……本当ですか?」
「ああ」
僕がそう言うと、仕方ないですね、と納得してくれるミレーヌ。少し離れたところでフィアが羨ましそうに見てくるけど、今日は許して欲しい。
「マルス!」
「ティエラ!」
そして、マルスも愛するティエラを見て走り出す。今までの死にかけの顔はなく、ティエラに会えた喜びによる笑顔に変わっていた。
「さて、みんなには色々と話す事があるから、落ち着いて話せる場所に行こう。これからやってもらう事もあるしね」
それからは城の中にある会議室へと向かう。色々と話す事があるからね。立ちっぱなしはきついし。会議室ではお腹が空いているだろうからと、フィアが食事を用意してくれて、それから話が始まった。
まずは亜人国で起きた事だね。女神フィストリアが作った神獣を倒して配下にした事。あれは中々骨が折れたけど、その結果、ロウという強力な配下を手に入ったからどちらかといえばプラスだった。
その話をするとみんな驚いていたけど、ミレーヌが1番驚いていたのが印象的だった。みんながミレーヌを見ていた。
その後は新しい配下についてだ。これについてはよく言っておかないと。元亜人国の王で知識人のエルフィオンはともかく、戦闘狂のレルシェンドについては注意させないと。気が付いたら戦闘とかになっていそうで怖い。
そして、今回の1番の問題であるグレンベルグ帝国の事だ。僕たちは準備が出来た時点でエリーゼを旗頭として帝国へ宣戦布告をした。
僕たちの数は亜人国軍が5万、エリーゼの元に集まった帝国兵たちが2万、僕がメストア王国に置いていた分と帝国で増やした死霊たちが8万、合わせて15万近くの兵力になる。
ただ、これだけでは当然帝国の総兵力には届かない。向こうはその10倍近くの兵力を持っているのだから。だから、その兵力を分断するために、各国にリーシャとエルフィオンを派遣した。
目的はこちらが攻めるのと同時に各方面から同様に攻めてもらうため。帝国の周辺諸国は、帝国に苦汁を舐めさせられて来た国々ばかりだ。勝てる見込みがあると考えれば賛同するだろう。
そのための、リーシャとエルフィオンだ。少しでも勝てると思わせるために死霊たちの中でも最強の2人にむかってもらったのだ。
2人の力を見た各国は予想通り賛同して、最低でも5万、本気の国は20万近くの兵士を出す事を約束してくれた。あわよくば帝国の土地を手に入れようとでも思っているのだろうけど、まあ、それはおいおい考えるとしよう。どうとにでも出来るし。
亜人国を抜いた計10ヶ国が賛同し、各国の兵力を合わせて130万近くになった。これで僕たちの兵力を合わせて150万近く。これでようやく帝国の兵力と並んだわけだ。
ただ、それだけだとまだ並んだだけ。ここからこちらが有利になるための作戦として、クロノにお願いしていた、帝都に魔結晶を撒くというのだ。
その魔結晶は全てオプスキラーを転移させるものであり、数は1千近く。オプスキラーには兵士のみ襲う事と命令しているため、国民は大丈夫だろう。これに関してはエリーゼとの約束のため守っている。
まだ、不安要素はあるのだけど、取り敢えずはこれで帝国へと攻める。
「エリーゼが今回の戦争の大将になる。そして、フィアには死霊たちを率いてもらう。補佐にはネロをつけるから大丈夫だよ」
僕の言葉に緊張しながらも頷くフィア。マルスにティエラ、そしてリーシャにはフィアの護衛をしてもらうし、ネロも側にいるから大丈夫だろう。
もう少し詳しい話は、帝国に行ってからになるから、大まかな話を終えた僕たちは今日は休む事になった。僕は部屋に戻る前に少し用事を済ませて来てから、自身の部屋へと戻る。
すると、そこには
「ハルト様っ!」
と、薄手のワンピースを着たミレーヌが既に待っていた。微笑みながら手を広げてくるので僕も手を広げてミレーヌに近づく。そして、いつも通り抱き締めようとしたその時
グサッ
と、胸元に何かが突き刺さる感覚がする。前に何度も、何百と感じた感覚だから直ぐにわかった……胸元にナイフが刺されている事を。
胸元を見ると、流れる赤い血。そして、恐る恐る顔を上げるとそこには、愉悦に醜く顔を歪めたミレーヌの姿があった。
「そうだな、マスター」
久し振りに帰って来たメストア王国の地に降り立った僕は凝り固まった体を伸ばす。横ではリーシャとマルスが立つ。
他の配下たちについては亜人国で準備中だ。エルフィオンはともかく、戦闘狂のレルシェンドはここよりも向こうにおいている方が落ち着いているし。万が一の時のためにロウをお目付役として置いて来たから大丈夫だと思うけど。
クロノも、銀髪の少女、シーシャの側にいたいようだったから置いて来た。その分仕事も置いて来たけど。
旗頭であるエリーゼは当然連れて来ていない。手紙を送ったおかげで、エリーゼを目指して集まる帝国の貴族もいるしね。
「待っていたぞ、創造主よ」
城の庭に降り立った僕たちの元にネロが姿を現わす。姿は外に出るためか骸骨ではなく、肉体を持っていた。
「やあ、久し振りだね、ネロ。何か問題はなかったかい?」
「周りの国がまれに攻めてくる以外は特にはなかったぞ」
うん、それは国としては大問題なのだけど、この様子だと特に問題は起きずに対処したみたいだね。フィアもいるし当然か。
「久し振りだな、ハルト」
「ハルト様!」
そんな風にネロと話をしていると、更に城の中からフィアとミレーヌが出て来た。フィアは優雅に歩きながらで、ミレーヌは脇目も振らずに真っ直ぐと僕の元へと走って来た。
そして、僕を強く抱きしめてくる。しかし、直ぐに離れて鼻をすんすんとしてくる。どうしたんだ?
「ハルト様」
「なんだい、ミレーヌ?」
「どうして、ハルト様から知らない女性の匂いがするのでしょうか?」
笑顔なのだけど笑っていない目。僕とミレーヌの周りだけ冷える感じ。
「リーシャ様でも無いですし。私の知らない人ですね。ううっ、私は1人で慰めていたというのに、ハルト様は楽しんでいらしたのですね」
ミレーヌはそう言いながら、ヨヨヨと泣き崩れる。ったく。
「悪かったよ、ミレーヌ。今日は1日ミレーヌのために使うから許してくれ」
「……本当ですか?」
「ああ」
僕がそう言うと、仕方ないですね、と納得してくれるミレーヌ。少し離れたところでフィアが羨ましそうに見てくるけど、今日は許して欲しい。
「マルス!」
「ティエラ!」
そして、マルスも愛するティエラを見て走り出す。今までの死にかけの顔はなく、ティエラに会えた喜びによる笑顔に変わっていた。
「さて、みんなには色々と話す事があるから、落ち着いて話せる場所に行こう。これからやってもらう事もあるしね」
それからは城の中にある会議室へと向かう。色々と話す事があるからね。立ちっぱなしはきついし。会議室ではお腹が空いているだろうからと、フィアが食事を用意してくれて、それから話が始まった。
まずは亜人国で起きた事だね。女神フィストリアが作った神獣を倒して配下にした事。あれは中々骨が折れたけど、その結果、ロウという強力な配下を手に入ったからどちらかといえばプラスだった。
その話をするとみんな驚いていたけど、ミレーヌが1番驚いていたのが印象的だった。みんながミレーヌを見ていた。
その後は新しい配下についてだ。これについてはよく言っておかないと。元亜人国の王で知識人のエルフィオンはともかく、戦闘狂のレルシェンドについては注意させないと。気が付いたら戦闘とかになっていそうで怖い。
そして、今回の1番の問題であるグレンベルグ帝国の事だ。僕たちは準備が出来た時点でエリーゼを旗頭として帝国へ宣戦布告をした。
僕たちの数は亜人国軍が5万、エリーゼの元に集まった帝国兵たちが2万、僕がメストア王国に置いていた分と帝国で増やした死霊たちが8万、合わせて15万近くの兵力になる。
ただ、これだけでは当然帝国の総兵力には届かない。向こうはその10倍近くの兵力を持っているのだから。だから、その兵力を分断するために、各国にリーシャとエルフィオンを派遣した。
目的はこちらが攻めるのと同時に各方面から同様に攻めてもらうため。帝国の周辺諸国は、帝国に苦汁を舐めさせられて来た国々ばかりだ。勝てる見込みがあると考えれば賛同するだろう。
そのための、リーシャとエルフィオンだ。少しでも勝てると思わせるために死霊たちの中でも最強の2人にむかってもらったのだ。
2人の力を見た各国は予想通り賛同して、最低でも5万、本気の国は20万近くの兵士を出す事を約束してくれた。あわよくば帝国の土地を手に入れようとでも思っているのだろうけど、まあ、それはおいおい考えるとしよう。どうとにでも出来るし。
亜人国を抜いた計10ヶ国が賛同し、各国の兵力を合わせて130万近くになった。これで僕たちの兵力を合わせて150万近く。これでようやく帝国の兵力と並んだわけだ。
ただ、それだけだとまだ並んだだけ。ここからこちらが有利になるための作戦として、クロノにお願いしていた、帝都に魔結晶を撒くというのだ。
その魔結晶は全てオプスキラーを転移させるものであり、数は1千近く。オプスキラーには兵士のみ襲う事と命令しているため、国民は大丈夫だろう。これに関してはエリーゼとの約束のため守っている。
まだ、不安要素はあるのだけど、取り敢えずはこれで帝国へと攻める。
「エリーゼが今回の戦争の大将になる。そして、フィアには死霊たちを率いてもらう。補佐にはネロをつけるから大丈夫だよ」
僕の言葉に緊張しながらも頷くフィア。マルスにティエラ、そしてリーシャにはフィアの護衛をしてもらうし、ネロも側にいるから大丈夫だろう。
もう少し詳しい話は、帝国に行ってからになるから、大まかな話を終えた僕たちは今日は休む事になった。僕は部屋に戻る前に少し用事を済ませて来てから、自身の部屋へと戻る。
すると、そこには
「ハルト様っ!」
と、薄手のワンピースを着たミレーヌが既に待っていた。微笑みながら手を広げてくるので僕も手を広げてミレーヌに近づく。そして、いつも通り抱き締めようとしたその時
グサッ
と、胸元に何かが突き刺さる感覚がする。前に何度も、何百と感じた感覚だから直ぐにわかった……胸元にナイフが刺されている事を。
胸元を見ると、流れる赤い血。そして、恐る恐る顔を上げるとそこには、愉悦に醜く顔を歪めたミレーヌの姿があった。
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