世界に復讐を誓った少年
66.罠
「……ここは」
少し重たい瞼を開けると、そこは見覚えのない天井だった。綺麗な木目が並ぶ天井、木の落ち着く香りが漂っている。それに右半分が柔らかい。
僕は警戒しながら右側を見る。いつもならミレーヌがいたため、気にはならないけど、今は王国に残している。それなら、右にいるのは誰だ? って事になる。100歩譲ってリーシャなら良いが……
「……うぅん……あら、起きたのね、坊や」
俺の隣に眠っていたのは……女王だった。僕はベッドから咄嗟に跳びのき、女王から距離を取る。自分の体を見ると服は着ている。女王も物凄く薄い服だが着ていた。
「……なんで、あんたが一緒に寝ているんだよ?」
「なんでって、子守唄を歌ってあげたから?」
……どうしてそこで疑問形になるんだよ。僕は女王から少し離れて椅子に座る。なんでこの人はこんなに僕に構うんだよ。意味がわからない。
「あら、意味がわからないって顔をしているわね?」
「当たり前だろ。初対面の僕に対して、母親に思えとか言ったり、今回みたいに寝たりして。何を考えている?」
「別にそんな難しい事は考えていないわ。この国の恩人であるあなたが、力を抜ける場所を作ろうとしているだけだわ」
「……余計なお世話だ」
僕はそのまま外に出ようとしたが、ふわりと花の香りが近付いてくる。そして、背中に温かい感触を感じる。
「もう、頑固なんだから」
そう言いながらも頭を撫でてくる女王。くっ、なんなんだよ、本当に! 頭を撫でる手を払い、僕はそのまま部屋を出る。くそっ、あの人が近くにいると否が応でも母さんを思い出してしまう。それを狙っているのかも知れないけど……くそ!
◇◇◇
「……これは呪いの1つですな」
「呪い?」
私は医者の言葉にイマイチピンと来なかった。この傷はあの大鎌を持った少年に負わされた傷だわ。毒とかならわかるのだけど、呪いってどういう事かしら?
「この傷から黒い魔力が中へと入り、中で本当に小さな呪いとなっています。この小さな魔力だけならそこまで脅威ではないのですが、問題は入り込んだ人間の魔力を吸い込んで広がって行く事です。現に黒い痣が昨日に比べて広がっているのがわかるはずです」
確かにあった傷より広がって、その黒い部分全部が痛いようね。セルは大丈夫だと我慢しているけど、昔からの付き合いの私には痩せ我慢をしているのがバレバレよ。
「これを治す方法は?」
「私では無理ですな。神官のアンチカースを使える者か、魔道具を使うか。それから、発動者に解除してもらうか」
……この戦争に神官は連れて来ていないから、亜人国の中で探すしかないわね。それか、あの男を探し出して捕らえるか。
悔しいけど、神官を探すより難しそうわね。実際に対峙したけど、まだ本気を出していないようだったし。
「それでは私はこれで」
「ええ、ありがとう」
医者が出ていくのを見送ってから、服を着るセルを見る。やっぱり右腕が腫れ上がっていて、動かすのも辛そう。剣を振るのも難しいと思う。
「今度の戦いは待機よ、セル」
「……仕方ありませんね。私がいれば逆に邪魔になるでしょうから」
「もう、そんな事言わないの。どうせ私たちは後方支援よ。あなたが無理する必要は無いのだから」
私は優しくセルの頰を撫でる。私を見上げてくるセルを見ると胸がキュンとする。このまま部屋に連れ込みたいけど、流石に戦争中だから自重しないと。でも、キスくらいは良いよね?
そのまま黙って顔を近づけていく……けど、突然街中に鐘が鳴り響く。私は中断された事に苛立ちを隠せなかったけど、この鐘の音は、危険を知らせるためのものだ。何かあったのだろう。
私とセルが外に出ると、空には黒色の雷が街へと降っていた。な、何が起きてるの!?
遠目からわかったのは黒い獣が街の中を走り回っている姿だった。あんな魔物見た事がない。見ただけで体を震えるほどの威圧感。そんな化け物が走り回っていた。
兵士たちを次々と吹き飛ばし、建物には雷を落とし、街の中は火の海に、叫び声が木霊していた。
そして、その化け物はこちらに向かって来た。セルが私を庇うように立つけど、利き腕である右腕を痛めているセルには、当然厳しく、化け物の体当たりで吹き飛ばされてしまった。
その化け物はそのままセルの方へと向かう。そして顔を近づけると、何故かセルを襲う事なく匂いを嗅ぐだけだった。しばらくその状態で固まっていると、化け物がどこかを見て、そのままその先へと走っていった。
一体何が起きたのかわからないけど、助かったの? 私は戸惑いながらもセルを抱き起す。あの体当たりで右腕が更に腫れているけど、命に別状は無さそうだ。良かった。他にも怪我がないか確認していると
「捕らえろ!」
号令が聞こえて来た。そして、私たちを、セルを囲む兵士たち。セルは兵士たちに捕らわれて、私は近づかないように離れさせられた。訳もわからずに固まっていると、隊長たちがやって来た。
「あの化け物を手引きした罪で貴様を捕らえる。連れて行け!」
そしてそのまま連行されるセル。私がいくら止めようとしても、先ほどの光景、何故かセルが化け物に襲われなかった光景を見て、セルが手引きしたと判断した隊長たちを止める事が出来なかった。
少し重たい瞼を開けると、そこは見覚えのない天井だった。綺麗な木目が並ぶ天井、木の落ち着く香りが漂っている。それに右半分が柔らかい。
僕は警戒しながら右側を見る。いつもならミレーヌがいたため、気にはならないけど、今は王国に残している。それなら、右にいるのは誰だ? って事になる。100歩譲ってリーシャなら良いが……
「……うぅん……あら、起きたのね、坊や」
俺の隣に眠っていたのは……女王だった。僕はベッドから咄嗟に跳びのき、女王から距離を取る。自分の体を見ると服は着ている。女王も物凄く薄い服だが着ていた。
「……なんで、あんたが一緒に寝ているんだよ?」
「なんでって、子守唄を歌ってあげたから?」
……どうしてそこで疑問形になるんだよ。僕は女王から少し離れて椅子に座る。なんでこの人はこんなに僕に構うんだよ。意味がわからない。
「あら、意味がわからないって顔をしているわね?」
「当たり前だろ。初対面の僕に対して、母親に思えとか言ったり、今回みたいに寝たりして。何を考えている?」
「別にそんな難しい事は考えていないわ。この国の恩人であるあなたが、力を抜ける場所を作ろうとしているだけだわ」
「……余計なお世話だ」
僕はそのまま外に出ようとしたが、ふわりと花の香りが近付いてくる。そして、背中に温かい感触を感じる。
「もう、頑固なんだから」
そう言いながらも頭を撫でてくる女王。くっ、なんなんだよ、本当に! 頭を撫でる手を払い、僕はそのまま部屋を出る。くそっ、あの人が近くにいると否が応でも母さんを思い出してしまう。それを狙っているのかも知れないけど……くそ!
◇◇◇
「……これは呪いの1つですな」
「呪い?」
私は医者の言葉にイマイチピンと来なかった。この傷はあの大鎌を持った少年に負わされた傷だわ。毒とかならわかるのだけど、呪いってどういう事かしら?
「この傷から黒い魔力が中へと入り、中で本当に小さな呪いとなっています。この小さな魔力だけならそこまで脅威ではないのですが、問題は入り込んだ人間の魔力を吸い込んで広がって行く事です。現に黒い痣が昨日に比べて広がっているのがわかるはずです」
確かにあった傷より広がって、その黒い部分全部が痛いようね。セルは大丈夫だと我慢しているけど、昔からの付き合いの私には痩せ我慢をしているのがバレバレよ。
「これを治す方法は?」
「私では無理ですな。神官のアンチカースを使える者か、魔道具を使うか。それから、発動者に解除してもらうか」
……この戦争に神官は連れて来ていないから、亜人国の中で探すしかないわね。それか、あの男を探し出して捕らえるか。
悔しいけど、神官を探すより難しそうわね。実際に対峙したけど、まだ本気を出していないようだったし。
「それでは私はこれで」
「ええ、ありがとう」
医者が出ていくのを見送ってから、服を着るセルを見る。やっぱり右腕が腫れ上がっていて、動かすのも辛そう。剣を振るのも難しいと思う。
「今度の戦いは待機よ、セル」
「……仕方ありませんね。私がいれば逆に邪魔になるでしょうから」
「もう、そんな事言わないの。どうせ私たちは後方支援よ。あなたが無理する必要は無いのだから」
私は優しくセルの頰を撫でる。私を見上げてくるセルを見ると胸がキュンとする。このまま部屋に連れ込みたいけど、流石に戦争中だから自重しないと。でも、キスくらいは良いよね?
そのまま黙って顔を近づけていく……けど、突然街中に鐘が鳴り響く。私は中断された事に苛立ちを隠せなかったけど、この鐘の音は、危険を知らせるためのものだ。何かあったのだろう。
私とセルが外に出ると、空には黒色の雷が街へと降っていた。な、何が起きてるの!?
遠目からわかったのは黒い獣が街の中を走り回っている姿だった。あんな魔物見た事がない。見ただけで体を震えるほどの威圧感。そんな化け物が走り回っていた。
兵士たちを次々と吹き飛ばし、建物には雷を落とし、街の中は火の海に、叫び声が木霊していた。
そして、その化け物はこちらに向かって来た。セルが私を庇うように立つけど、利き腕である右腕を痛めているセルには、当然厳しく、化け物の体当たりで吹き飛ばされてしまった。
その化け物はそのままセルの方へと向かう。そして顔を近づけると、何故かセルを襲う事なく匂いを嗅ぐだけだった。しばらくその状態で固まっていると、化け物がどこかを見て、そのままその先へと走っていった。
一体何が起きたのかわからないけど、助かったの? 私は戸惑いながらもセルを抱き起す。あの体当たりで右腕が更に腫れているけど、命に別状は無さそうだ。良かった。他にも怪我がないか確認していると
「捕らえろ!」
号令が聞こえて来た。そして、私たちを、セルを囲む兵士たち。セルは兵士たちに捕らわれて、私は近づかないように離れさせられた。訳もわからずに固まっていると、隊長たちがやって来た。
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