世界に復讐を誓った少年
59.亜人国へ
「……つ、疲れていますね、ハルトさん」
「ああ、まさかあそこまで嫌がられるとは思わなかった」
僕は椅子に深く腰掛けてため息を吐く。昨日のミレーヌは物凄く激しかった。まさか、あそこまで離れるのを嫌がられるとは思っていなかったか。
亜人国へ行くと決めた日の夜。当然ミレーヌに隠して開けるわけもないので、直ぐに亜人国の現状とそこへ行く事を話した。
ミレーヌは当たり前のようについて行くと言ったが、今回は流石に危なすぎるので、残って貰うように説得した……のだが、物凄く反発された。それもう言葉では表現できないぐらいに。
離れたく無いと抱きしめられて、そのまま部屋はと連れ込まれて鎖で縛られそうになった時は流石に焦ったが。その後一晩かけて何とか説得できたのだ。
「くく、それほどマスターと離れるのが寂しかったのだろう、ミレーヌは。男冥利に尽きるでは無いか、マスターよ」
隣に座るリーシャは肘で僕の脇腹をこのこの小突いてくる。一瞬窓から頭を放り投げてやろうかと思ったが、何とか我慢する。
出発する時は落ち着いていたけど、少し心配だなぁ。僕がミレーヌの事を心配しているのがわかったのか、リーシャがにゅふふと僕を見て笑ってくる。我慢しなくていいな。
「わぁっ!? ま、待て、マスター! あっ、頭を掴むのはやめて! 頭取れちゃう!?」
僕がリーシャの頭を掴みかかり、リーシャがそれを阻止。そのような攻防をしばらくしていると、マルスが間に入って止めてくる。くそ、後少しだったのに。
「はぁ、はぁ……あ、危なかった。あと少しで頭を取られるところだったぞ」
「そりゃあ、取ろうとしていたんだからな。それで、さっきの笑みは何だよ? さっさと言わないとまた摑みかかるぞ?」
「別に変な意図は無いぞ。ただ、大事な人が出来て良かったでは無いか。前まではやり終えるまで死ぬ気は無かったとしても、かなり危ない事をしていたからな。その腕輪とかネックレスとか」
……大事な人ね。確かにミレーヌは僕の大事な物だから、彼女を置いて先に死ぬのは嫌かな。そう考えれば、確かにリーシャの言う通りなのだが、なんだかリーシャに指摘されたのがムカつく。僕は無言のまま
「なっ! なんで再び頭に摑みかかる!? や、やめろ! と、取れるぅぅぅ!!」
無理矢理リーシャの頭を引っこ抜く。スポンと音がしそうな勢いで引っ張り両手で頭を掴む。体はバタバタと手を動かし、頭は涙目で僕を見ていた。
僕はニヤリと笑みを浮かべリーシャの耳元で小声で話す。すると、リーシャは固まってしまい、みるみると顔が赤くなっていく。
僕はそのまま体に頭を返すと、おずおずと頭をつけて窓を見たまま動かなくなった。マルスが何を言ったのか尋ねてくるが、少し感謝を述べただけだよ。彼女も僕の大切な物だ。たまには感謝をしないとね。
「そ、それにしてもいい景色ですね。まさか、空から地上が見られるなんて!」
変な空気に耐えられなくなったのか、マルスが窓から覗く景色を見てはしゃぐ。今僕たちが亜人国まで行くのに使っている乗り物が特殊なものだからだ。
今僕たちが乗っているものは、ワイバーンと呼ばれる竜種に属する魔物だ。竜種は基本気性が荒く、弱いものでも町ぐらいなら落とせる強さを持っている。
ワイバーンは竜種の中で翼竜種に分けられ、前足代わりに大きな翼を持ち、鋭いかぎ爪が特徴だ。ワイバーンも野生のものならかなり危険なのだが、卵から孵化させると、騎獣として育てる事が出来るらしい。
その中でも今僕が乗っているワイバーンは、王族専用の特殊なワイバーンらしい。まあ、第2王女であるメルダが使うからだろう。普通のワイバーンより体が倍近く大きいらしく、速さも力も違うらしい。普通のワイバーンを乗った事が無いから、どのぐらい違うかはわからないけど。
このワイバーンだと王国から亜人国まで半日で着くらしい。普通のワイバーンなら2日かかるところを考えたらかなり速い。普通のワイバーンでも十分だけど。馬車で行こうと思ったら1ヶ月は覚悟しないといかないらしいし。
「あれは!?」
ワイバーン欲しいなぁ〜、と思いながら窓から見える景色を眺めていると、前の席に座るメルダが声を上げる。
声を上げたメルダも窓から外を眺めていた。何かあるのだろうか。僕も窓際に近づき、リーシャの後ろから外を見ると……あぁ、あれか。地上でかなりの数の人たちが戦っていた。
僕の目だと小さい黒い点がわらわらと動いているようにしか見えないけど、メルダにはあれが誰なのかわかるのだろう。そして、反応からして、亜人国と帝国が争っているようだ。
メルダはその光景を見た後で、一度僕たちを見てから、ワイバーンを操る御者に先へ進むように言う。
「メルダ、降りよう」
「えっ? で、ですが……」
「どうせ、帝国とはやる事になるんだ。今やっても変わらないだろう。リーシャもうずうずしているし」
「う、うずうずはしていないぞ! 少しワクワクしているだけだ!」
……あまり変わらないような気がするが。それとは真逆にマルスはガチガチに緊張しているし。まあ、この戦いで少しは慣れてくれたらいいや。
「ああ、まさかあそこまで嫌がられるとは思わなかった」
僕は椅子に深く腰掛けてため息を吐く。昨日のミレーヌは物凄く激しかった。まさか、あそこまで離れるのを嫌がられるとは思っていなかったか。
亜人国へ行くと決めた日の夜。当然ミレーヌに隠して開けるわけもないので、直ぐに亜人国の現状とそこへ行く事を話した。
ミレーヌは当たり前のようについて行くと言ったが、今回は流石に危なすぎるので、残って貰うように説得した……のだが、物凄く反発された。それもう言葉では表現できないぐらいに。
離れたく無いと抱きしめられて、そのまま部屋はと連れ込まれて鎖で縛られそうになった時は流石に焦ったが。その後一晩かけて何とか説得できたのだ。
「くく、それほどマスターと離れるのが寂しかったのだろう、ミレーヌは。男冥利に尽きるでは無いか、マスターよ」
隣に座るリーシャは肘で僕の脇腹をこのこの小突いてくる。一瞬窓から頭を放り投げてやろうかと思ったが、何とか我慢する。
出発する時は落ち着いていたけど、少し心配だなぁ。僕がミレーヌの事を心配しているのがわかったのか、リーシャがにゅふふと僕を見て笑ってくる。我慢しなくていいな。
「わぁっ!? ま、待て、マスター! あっ、頭を掴むのはやめて! 頭取れちゃう!?」
僕がリーシャの頭を掴みかかり、リーシャがそれを阻止。そのような攻防をしばらくしていると、マルスが間に入って止めてくる。くそ、後少しだったのに。
「はぁ、はぁ……あ、危なかった。あと少しで頭を取られるところだったぞ」
「そりゃあ、取ろうとしていたんだからな。それで、さっきの笑みは何だよ? さっさと言わないとまた摑みかかるぞ?」
「別に変な意図は無いぞ。ただ、大事な人が出来て良かったでは無いか。前まではやり終えるまで死ぬ気は無かったとしても、かなり危ない事をしていたからな。その腕輪とかネックレスとか」
……大事な人ね。確かにミレーヌは僕の大事な物だから、彼女を置いて先に死ぬのは嫌かな。そう考えれば、確かにリーシャの言う通りなのだが、なんだかリーシャに指摘されたのがムカつく。僕は無言のまま
「なっ! なんで再び頭に摑みかかる!? や、やめろ! と、取れるぅぅぅ!!」
無理矢理リーシャの頭を引っこ抜く。スポンと音がしそうな勢いで引っ張り両手で頭を掴む。体はバタバタと手を動かし、頭は涙目で僕を見ていた。
僕はニヤリと笑みを浮かべリーシャの耳元で小声で話す。すると、リーシャは固まってしまい、みるみると顔が赤くなっていく。
僕はそのまま体に頭を返すと、おずおずと頭をつけて窓を見たまま動かなくなった。マルスが何を言ったのか尋ねてくるが、少し感謝を述べただけだよ。彼女も僕の大切な物だ。たまには感謝をしないとね。
「そ、それにしてもいい景色ですね。まさか、空から地上が見られるなんて!」
変な空気に耐えられなくなったのか、マルスが窓から覗く景色を見てはしゃぐ。今僕たちが亜人国まで行くのに使っている乗り物が特殊なものだからだ。
今僕たちが乗っているものは、ワイバーンと呼ばれる竜種に属する魔物だ。竜種は基本気性が荒く、弱いものでも町ぐらいなら落とせる強さを持っている。
ワイバーンは竜種の中で翼竜種に分けられ、前足代わりに大きな翼を持ち、鋭いかぎ爪が特徴だ。ワイバーンも野生のものならかなり危険なのだが、卵から孵化させると、騎獣として育てる事が出来るらしい。
その中でも今僕が乗っているワイバーンは、王族専用の特殊なワイバーンらしい。まあ、第2王女であるメルダが使うからだろう。普通のワイバーンより体が倍近く大きいらしく、速さも力も違うらしい。普通のワイバーンを乗った事が無いから、どのぐらい違うかはわからないけど。
このワイバーンだと王国から亜人国まで半日で着くらしい。普通のワイバーンなら2日かかるところを考えたらかなり速い。普通のワイバーンでも十分だけど。馬車で行こうと思ったら1ヶ月は覚悟しないといかないらしいし。
「あれは!?」
ワイバーン欲しいなぁ〜、と思いながら窓から見える景色を眺めていると、前の席に座るメルダが声を上げる。
声を上げたメルダも窓から外を眺めていた。何かあるのだろうか。僕も窓際に近づき、リーシャの後ろから外を見ると……あぁ、あれか。地上でかなりの数の人たちが戦っていた。
僕の目だと小さい黒い点がわらわらと動いているようにしか見えないけど、メルダにはあれが誰なのかわかるのだろう。そして、反応からして、亜人国と帝国が争っているようだ。
メルダはその光景を見た後で、一度僕たちを見てから、ワイバーンを操る御者に先へ進むように言う。
「メルダ、降りよう」
「えっ? で、ですが……」
「どうせ、帝国とはやる事になるんだ。今やっても変わらないだろう。リーシャもうずうずしているし」
「う、うずうずはしていないぞ! 少しワクワクしているだけだ!」
……あまり変わらないような気がするが。それとは真逆にマルスはガチガチに緊張しているし。まあ、この戦いで少しは慣れてくれたらいいや。
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