世界に復讐を誓った少年
55.選んだ道は
「くっ、離せ! 私にこんな事をして良いと思っているのか!?」
体を縄で巻かれている癖に大声で喚く国王……いや、今は伯爵だったね。他の大臣たちの中には伯爵に同調する者が半数、諦めている者が半数といったところか。
しかし、ぎやあぎゃあとうるさいな。女神のせいでただでさえイライラしているのに、こんなに喚かれたらさっさと殺したくなる。
だけど今はぐっと我慢する。こいつらに手を下すのは僕じゃない。僕は少し隣をチラッと見てから視線を戻す。
「少し黙ってね、メストア伯爵殿。今回の件についてはもう僕も我慢の限界だ。君たちにはそれ相応の罰を受けてもらう」
「罰を受けてもらうだと! お前になんの権限があってそんな事を言う! お前なぞ、フィストリア様の前ではゴミでしか無いのだぞ! ゴミのお前らよりあのお方に使える私たちの方が上だ!」
意味の分からない自論を述べる伯爵。これは確実にあいつらに何かをされたな。以前の伯爵はここまでおかしな事を言うような人物ではなかった……筈だ。現にフィアも初対面の人を見るかのような視線を伯爵へと向けていた。
しかも、その雰囲気は伯爵だけではなく、他の大臣たち、王太子ですらそうなのだからこれは確実に何かされたのだろう。
僕は喚く伯爵たちを無視してフィアの方を見る。僕が手を出しても良いが、彼女にケジメをつけさせた方が良いだろう。
フィアも僕の意図がわかったのか、一瞬悲しそうな顔を浮かべたが、1度目を瞑り顔を上げると、初めて僕たちも対峙した時のような王女としての……いや、今からは女王としての顔で伯爵たちを見た。
「父上、あなたには王から退いてもらいます」
「何を言うのだ、フィアよ。これからこの国は変わるのだぞ。それなのに私に退けだと? さてはフィア、お前そこの男に誑かされているな!」
「……父上」
「元はと言えば、フィア、お前が負けなければこんな事にはなっていなかったのだ! まさか、お前は元からこのつもりで国を売ったのか! この売国奴め! 貴様など娘などでは無い!」
……聞くに耐えないな。いくら洗脳などされていようが、自分の娘に対して言っていい言葉じゃない。僕ももし母さんが生きていた頃にそんな事を言われたら、心が居れる自信がある。
だけど、フィアは辛そうな表情を浮かべながらも、自身が持つ折れた剣とは別の予備の剣を抜き、そのまま振りかぶった。まさか切られるとは思ってなかったのだろう、伯爵はきょとんとした表情のまま首が落ちた。
「……これからはこのメストア王国は私が治める! アークフィア・メストア女王として! 私に逆らうと言うなら、お前たちも父上のようになるぞ!」
剣を大臣たちへと向けて宣言するフィア。大臣たちはそんな事は認められない、逆賊、乗っ取り、など叫ぶとフィアは次々と大臣を切っていった。大臣たちもフィアが本気だと思ったのか人数が半分ぐらいになってようやく黙る。
生き残った奴らはスケルトンたちに上へと行かせて、地下に残っているのは僕とリーシャとミレーヌにネロ、それからフィアだけだ。マルスやティエラは危なかった子供を連れて家へと戻っている。
フィアは父親だった死体を眺めて固まっている。まあ仕方ないか。僕たちは黙って離れてマルスたちの元へと向かう。自分が決めた事だが、頭の中で整理が必要だろう。少し1人にしてあげよう。
◇◇◇
「ふぅ、ただいまー」
「おかえりなさいませ、フィストリア様」
私が眠っていたベッドの側で片膝をついて頭を下げる男性。私の僕であり、直属の部隊、天使隊を指揮する天使長であるシグルトが私が起きるのを待っていた。
「ええ、ただいま、シグルト。何か変わった事は?」
「特には。強いて言うなら聖王が謁見に来たぐらいでしょうか」
ああ、あのデブね。あの男、自分が偉いと思っているのか女神であるこの私を色欲のこもった目で見てくるのよね。殺してやろうかと思うのなけど、私の命令には従うからタイミングを逃しちゃうのよね。
「それで、今回は」
「ああ、そうよ、あの方の力を持った者に阻まれたわ。人造兵士も容易く殺されたしね」
「それは……では我々が向かいましょうか?」
「良いわ。あなたたちが出るほどでは無いわ。それより、勇者たちからは? 何か連絡はあった?」
「いえ、まだありません」
むー、つまんないの。これもあの男のせいよ! あの時殺されたせいで元々持っていた力が弱まって、あの方の力を集めるのにも時間がかかってしまうのだから。本当に忌々しいわね、ダルクス。
それに、今日であった男。よりにもよってダルクスと同じ力を持つなんて。あぁ! 私の力が万全なら2人とも殺しに行くのに!
……まあ、良いわ。何処にいるのかさえわかっていれば、やり方はいくらでもあるのだから。
「聖王を呼びなさい」
「良いのですか?」
「ええ、なんの話かは知らないけど聞いてあげるわ。その代わりやる事はやって貰うわ」
あの2人は必ず私の前で跪かせて命乞いをしているところ、私の手で殺してやるわ。
体を縄で巻かれている癖に大声で喚く国王……いや、今は伯爵だったね。他の大臣たちの中には伯爵に同調する者が半数、諦めている者が半数といったところか。
しかし、ぎやあぎゃあとうるさいな。女神のせいでただでさえイライラしているのに、こんなに喚かれたらさっさと殺したくなる。
だけど今はぐっと我慢する。こいつらに手を下すのは僕じゃない。僕は少し隣をチラッと見てから視線を戻す。
「少し黙ってね、メストア伯爵殿。今回の件についてはもう僕も我慢の限界だ。君たちにはそれ相応の罰を受けてもらう」
「罰を受けてもらうだと! お前になんの権限があってそんな事を言う! お前なぞ、フィストリア様の前ではゴミでしか無いのだぞ! ゴミのお前らよりあのお方に使える私たちの方が上だ!」
意味の分からない自論を述べる伯爵。これは確実にあいつらに何かをされたな。以前の伯爵はここまでおかしな事を言うような人物ではなかった……筈だ。現にフィアも初対面の人を見るかのような視線を伯爵へと向けていた。
しかも、その雰囲気は伯爵だけではなく、他の大臣たち、王太子ですらそうなのだからこれは確実に何かされたのだろう。
僕は喚く伯爵たちを無視してフィアの方を見る。僕が手を出しても良いが、彼女にケジメをつけさせた方が良いだろう。
フィアも僕の意図がわかったのか、一瞬悲しそうな顔を浮かべたが、1度目を瞑り顔を上げると、初めて僕たちも対峙した時のような王女としての……いや、今からは女王としての顔で伯爵たちを見た。
「父上、あなたには王から退いてもらいます」
「何を言うのだ、フィアよ。これからこの国は変わるのだぞ。それなのに私に退けだと? さてはフィア、お前そこの男に誑かされているな!」
「……父上」
「元はと言えば、フィア、お前が負けなければこんな事にはなっていなかったのだ! まさか、お前は元からこのつもりで国を売ったのか! この売国奴め! 貴様など娘などでは無い!」
……聞くに耐えないな。いくら洗脳などされていようが、自分の娘に対して言っていい言葉じゃない。僕ももし母さんが生きていた頃にそんな事を言われたら、心が居れる自信がある。
だけど、フィアは辛そうな表情を浮かべながらも、自身が持つ折れた剣とは別の予備の剣を抜き、そのまま振りかぶった。まさか切られるとは思ってなかったのだろう、伯爵はきょとんとした表情のまま首が落ちた。
「……これからはこのメストア王国は私が治める! アークフィア・メストア女王として! 私に逆らうと言うなら、お前たちも父上のようになるぞ!」
剣を大臣たちへと向けて宣言するフィア。大臣たちはそんな事は認められない、逆賊、乗っ取り、など叫ぶとフィアは次々と大臣を切っていった。大臣たちもフィアが本気だと思ったのか人数が半分ぐらいになってようやく黙る。
生き残った奴らはスケルトンたちに上へと行かせて、地下に残っているのは僕とリーシャとミレーヌにネロ、それからフィアだけだ。マルスやティエラは危なかった子供を連れて家へと戻っている。
フィアは父親だった死体を眺めて固まっている。まあ仕方ないか。僕たちは黙って離れてマルスたちの元へと向かう。自分が決めた事だが、頭の中で整理が必要だろう。少し1人にしてあげよう。
◇◇◇
「ふぅ、ただいまー」
「おかえりなさいませ、フィストリア様」
私が眠っていたベッドの側で片膝をついて頭を下げる男性。私の僕であり、直属の部隊、天使隊を指揮する天使長であるシグルトが私が起きるのを待っていた。
「ええ、ただいま、シグルト。何か変わった事は?」
「特には。強いて言うなら聖王が謁見に来たぐらいでしょうか」
ああ、あのデブね。あの男、自分が偉いと思っているのか女神であるこの私を色欲のこもった目で見てくるのよね。殺してやろうかと思うのなけど、私の命令には従うからタイミングを逃しちゃうのよね。
「それで、今回は」
「ああ、そうよ、あの方の力を持った者に阻まれたわ。人造兵士も容易く殺されたしね」
「それは……では我々が向かいましょうか?」
「良いわ。あなたたちが出るほどでは無いわ。それより、勇者たちからは? 何か連絡はあった?」
「いえ、まだありません」
むー、つまんないの。これもあの男のせいよ! あの時殺されたせいで元々持っていた力が弱まって、あの方の力を集めるのにも時間がかかってしまうのだから。本当に忌々しいわね、ダルクス。
それに、今日であった男。よりにもよってダルクスと同じ力を持つなんて。あぁ! 私の力が万全なら2人とも殺しに行くのに!
……まあ、良いわ。何処にいるのかさえわかっていれば、やり方はいくらでもあるのだから。
「聖王を呼びなさい」
「良いのですか?」
「ええ、なんの話かは知らないけど聞いてあげるわ。その代わりやる事はやって貰うわ」
あの2人は必ず私の前で跪かせて命乞いをしているところ、私の手で殺してやるわ。
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