世界に復讐を誓った少年
36.脅迫
「……それでは、初めましてメストア国王」
僕はどっしりと椅子に座って向かいに座るメストア国王を見る。しかし、さっきの光景を見てかどこか舐められているような。でも、リーシャに怒られている光景を目の当たりすれば仕方ないのかも。
僕がみんなの制止を聞かず、罠だとわかっている扉を開けた事にリーシャたちは怒っているのだ。そのせいで地面に座らされて説教されてしまった。
その光景を遠巻きに見られていたから少し舐められているのかもしれない。さっきのはまぐれだと。
それに僕の姿も原因なのだろう。フードを脱いだ姿は12歳……もうすぐ13歳か。だけどまだ子供だ。そんな相手を舐めるなという方が無理かな。まあ、それでも話は進めるけど。
「初めに言っておくけど、これから話すのはお願いじゃない。命令だ」
僕の言葉に騒つく大臣たち。国王はこの状況でも僕を見て来るだけ。落ち着いているのか、ビビって動けないのかはわからないけど。
周りの大臣たちは何か僕に言いたそうだけど、周りをオプスキラーに囲まれているため、僕を睨みつけて来るだけ。その中で口を開けたのはやはり国王だった。
「……お主たちは何が目的なのだ?」
「別に難しい事じゃないよ。ここの一部に僕たちの部屋を作るってだけだから。僕たちはとある目的があってね、そのためにこれから力を貯めるつもりでいるんだ。そのためには広い場所が欲しくてね」
「ふざけるな! 貴様たちのような下賤な侵入者どもに、この伝統ある城を使わせるわけにはいかん!」
……おいおい、熱くなるのはいいけど、周りを見て言ってくれよ、大臣さん。国王も苦虫を潰したような表情になっているよ。そんな事も気がつかず更に話す大臣の1人。
「それにヘンリル殿下が戻って来てくだされば、貴様たちなど瞬く間に制圧されるわ!」
あー、それが大臣が強気でいられる理由か。その大臣の言葉に発破されて、他の人たちもあーだこーだ言ってくる。これは一回黙らせておこうか。この後の話に影響が出てくる。
「ネロ、あれを出してくれ」
「ワカッタ」
ギャアギャアと喚く大臣たちを無視して、ネロに指示を出す。ネロはローブの中から1つの鏡を取り出した。それは、使い魔の視界を映す鏡だ。前にクロノに作ってもらった魔道具だな。それにネロが魔力を注ぐと映ったのは
『くそっ! 全員退却だ!  怪我人を優先して避難させろ!』
『魔法が撃てる者は撃て! 奴を近づけさせるな!』
鏡の中から聞こえてくるのは兵士の叫び声。それを被せるように断末魔のような叫び声が響く。その声の元凶が歩く度に揺れる地面。そして鏡に姿を現したのは、巨大な異形であった。
全長15メートルほどの大きさで太陽の光を遮るほど。人が集まってできた塊は、大きな腕を振るうと何十という兵士が叩き潰された。
『1箇所に集まるな! まとめて潰されるぞ!』
鏡の中から聞こえる怒号や叫び声に言葉を失う大臣たち。中にはこの光景を見て吐きそうになっている者もいる。
「こいつはそこに並んでいる魔物をより大きくするために集めた魔物でギガンティックオプスキラーという。当然僕の配下だ。しかし滑稽だね。今まで起きた事の無い内乱と王都への襲撃が重なっているのに誰1人としてこの事が関わっているとは考えないのだから」
「っ! という事は貴族たちの内乱もお主が!?」
「そうだよ。僕たちが貴族を操って内乱を起こさせた。まあ、それらは全部兵士を集めるための陽動で、本命はこの城を狙いに来たのだけど。面白いくらい僕の予定通り進んで良かったよ」
そして、僕が視線でネロに指示を出すと、ネロがオプスキラーを操る。オプスキラーは指示の通り初めに喚きだした大臣へと拳を振り下ろした。グチャッと響く潰れた音。
両隣にいた別の大臣は腰を抜かして地べたに水黙りを作る。国王だけはじっと僕を見ていた。
「リーシャ、彼女を連れてきて」
「了解した」
僕の言葉で部屋を出るリーシャ。大臣たちは放心としているが、国王は「彼女」という言葉で誰の事かわかったようだ。僕を射殺すように睨んできた。
少ししてからリーシャが担いで来たのは当然炎姫だ。暴れないように両手両足を縛っている。
「フィア! 貴様らっ!」
「そう怒らないでよ。これでも僕たちは命の恩人なのだから。うちのリーシャが切り刻んでしまったね。もうすぐで死ぬところだったんだよ?」
「……マスター。それじゃあ私が悪いみたいでは無いか」
ジトッと睨んでくるリーシャを無視する。そして床に下ろした炎姫の頬をパシパシと叩いて目を覚まさせる。
「……うぅっ……こ……こは?」
「目が覚めたかい?」
「……貴様はっ!? ぐっ、動かない」
敵である僕を見てうねうねと動く炎姫。ちょっと面白い。つんつんとつついて遊んでいると、リーシャに頭を叩かれた。痛いじゃ無いか。
「ハルト様、早く話を進めましょう。ここ臭いです」
ミレーヌは少し飽きて来たようだ。そうだな、ミレーヌが可哀想だから早く話を進めるとしようか。
「それじゃあ、僕からの命令はこの城の地下に僕たちの生活スペースを作る事だ。それから、僕たちの事を外に漏らさない事、それだけ守れば国民も鏡の中の兵士たちも助けてあげるよ」
「……地下にそんなものを作ってどうするつもりだ?」
「何、目的のために力を蓄えるだけさ。それを見て見ぬ振りをしてくれれば、国王も助けてあげる」
「くっ、そんなこと出来るわけ無いだろう! そんな事をすれば……」
「なら、まずは王都を消し飛ばす」
僕はそれだけ言うと手を空に掲げる。手のひらから黒い球体が現れると、そのまま天井を突き破って天高く昇っていった。そして、空で大きく膨らんでいく球体。
「消し飛ばせ、混沌ノ爆弾……」
「待ってくれ!」
僕が魔術を発動としようとした瞬間、足下から叫ぶ声が聞こえて来た。発動するのをやめて下を見る、僕を見てくる炎姫。
「待って……いや、待ってください! お願いですから、国民は……民を殺すのはやめて下さい!」
「フィ、フィア……な、何を」
「……父上、私たちは負けたのです。確かに屈するのは悔しく、死にたいと思いますが、そのせいで、民を殺したく無いのです。自分のプライドを守るだけのせいで。
……ハルト様、どうか、お願いします。ご要望の事は承りましたので、どうか!」
額を地面につけてまで懇願してくる炎姫。僕はどうする? という意思を込めて国王を睨む。国王は手を握りしめているが
「……わかった。お主の命令を聞こう」
国王の返事を受けて、空に放った魔術を消す。
「それじゃあ、人質として彼女は隷属させてもらう。あっ、変な気を起こさないでね? もし、いらない事をすれば、彼女も、国の人たちも配下の餌にするから。何、僕たちの目的が達するまで大人しくしておけば解放してあげるから」
僕の言葉に顔を俯かせる国王たち。それから、鏡の中で戦っている配下たちを退かせる。これでようやく落ち着ける場所を手に入れた。これからはより力を蓄えるだけだ。
まあ、それまでにこの国は一度裏切るだろう。僕たちのような危ない奴を置いておくわけが無い。娘や民の命を捨てても。
その時は地獄を見せるだけだ。僕たちに歯向かったのを後悔させるために。
僕はそのまま悔し泣きする炎姫の元へと行く。隷属させないといけない。
「これからよろしくね、フィア?」
「っ! このぉ、気安くフィアと呼ぶな!」
「はいはい」
怒るフィアの頭を撫でる僕。今にも噛みつきそうなフィアが面白い。その時同時に隷属させる。これで僕の配下だ。
さて、まずはこの周りの国の事を勉強しないと。村から外は知らなくて、この国もクロノに教えてもらったし。ありがたい事に、資料にはそう困らない。ミレーヌ先生にでも教えてもらおう。
「よしよし」
「いつまでも撫でるなっ!」
コメント
リムル様と尚文様は神!!サイタマも!!
どっかに エクスプロージョン!!があったね