世界に復讐を誓った少年
21.とある冒険者の話(3)
「はじめまして、町長。領主様からの依頼を受けて参りました」
「ああ、よく来たな。座ってくれ」
町長の自宅へと入れた私たちは、町長に会う事が出来た。町長は侍女へとお茶を頼むと、私たちの向かいに座る。表情は物凄く疲れていた。それも仕方ないのでしょう。魔物が自分が任されている町の中に現れたのだ。嫌でも疲れてしまうと思う。
「それでここに来た用事は、魔物の事かな?」
「はい。ここ最近、この領地内で死霊系の魔物が頻繁に見かけられるようになった事について、領主様より依頼を受けて下りまして。他の魔物が見られた場所には向かったのですが、これといった手がかりを見つける事が出来ず、ここに来たわけです」
「ここは、他の村と違って実際に魔物と戦っているからな。どんな感じだったのかも聞きたいんだよ」
町長にタメ口で話すリンクに、マリエさんは頭を叩く。まあ、今のはリンクが悪いですね。
「そうだな。奴らは今までの魔物とは違っていた。いくら傷を付けても回復してしまうのだ」
「はぁ? なんだよそれ。無敵じゃねえか」
「そんなの、どうやって倒したんですかい?」
「私も直接見ていたわけではないが、頭を切り落とせば倒せらしい。ただ、普通に強いため、頭を切り落とすのも難しいらしい」
……予想以上に厳しいものになりそうですね。これは1度領主様にこの話をした方が良いかも知れませんね。
それから、しばらく町長と話をしましたが、他に聞けた事は村や町で聞けた事ばかりでしたので、町長の家を出る事になりました。
みんなでこれからの事を話しながら町の中を歩いていると
「ま、待ってください!」
と、私たちを呼ぶ声が聞こえて来ました。振り向くと、来たのは先ほどの町長の自宅でもお会いしました侍女の方でした。
息を切らしているという事は、家から走って来たのでしょう。私たちは彼女が落ち着くのを待ちます。
「それで、どうしたのよ、私たちを追って来て」
「は、はい。実はお伝えしたい事がありまして……ただ、ここじゃあその人目が……」
キョロキョロと周りを見渡す侍女。何か周りの人には聞かれてはいけない事なのかしら。私たちは顔を見合わせると、宿に案内する事にしました。あそこなら、人目を気にする事はありません。
それから、宿に戻って来た私たちは、私たちに話があると言う侍女、メルルちゃんから話を聞きます。私たちに囲まれて緊張しているようですが、ぽつりぽつりと話始めてくれました。
「じ、実は私、この町が魔物に襲われた時、この町にはいなくて。近くの村に帰っていたんです。私の実家に。その後、町が魔物に襲われたって話を聞いて戻って来たんですけど……どこかみんなの様子がおかしいんです」
「おかしい? それは誰がだ?」
「町長たちです。私が話しかけると、皆さん普通に返してくれるのですが、どこかビクビクとしているんです。まるで、何かに怯えるかのように」
何かに怯えるかのように……魔物の事……では無いようですね。
「私も初めは突然魔物が町中に現れたんで、いつ町にまた現れるかわからなくてそうなっているかと思っていたんですけど、違うかったんです」
「違うかった? 何かあったの?」
「……はい。その日は偶々なのですが仕事が早く終わりまして、皆さんからその日は早く帰ってもいいと言われたのです。その日は言われたように帰ったのですが、更衣室にいつも付けているネックレスを忘れたんです。だから、それを取り戻りに町長様のご自宅に戻ったのですが……」
そこまで言うと、顔を青ざめるメルルちゃん。私とマリエさんは、メルルちゃんの背中をさすり、リンクたちは心配そうにこちらを見て来ます。
「無理しなくていいわよ。そんな顔を青くさせちゃって」
「い、いえ。話すと言ったのは私なので。それで、私はネックレスを取りに戻ったのですが、家の中に誰もいなかったのです」
「いなかった?」
「はい。それで、部屋の中を探していたら、風が通る音が耳に聞こえたんです。私はその後の方を探していると、棚と棚の間が若干隙間が空いていたのです。いつもならきっちりとしまっているはずなのですが……それでその棚の後ろにあったのが」
「隠し通路?」
リンクの問いに頷くメルルちゃん。あの家にあった棚の後ろにそんなものがあるなんて。一体何のために作ったのでしょうか?
「本当は行かない方が良かったのかもしれませんが、その時の私は好奇心の方が強くて、階段を下って行きました。1番下まで降りると、1本道があって、その奥から声が聞こえて来ました。私は恐る恐る通路を進んでいると、1つの部屋が見えた来たんです。そこで私はあるものを見てしまったんです」
「あるもの……ですか?」
「はい……町長様が黒いローブを着た人に、もう死んだと思われる人の遺体を渡していたんです」
……一体どう言う事なのですか? 私たちが探していた黒いローブと町長がつながっているなんて。それに、亡くなった方の遺体を渡していると言う事は
「はい。次の瞬間、動き出す死体を見ました。全部で5体あったのですが、瞬く間にゾンビやスケルトンに変わってしまったのです」
まさか、今回の事件にも関わっているのでしょうか? それは考えていませんでしたね。メルルちゃんの言葉にみんな一様に黙ってしまいます。
「こりゃあ、今から行くか?」
「いや、準備が出来てねえからな。明日にしよう。それより、彼女をどうするか? そんな話を聞いた後に町長の家に帰すのは……」
「わ、私は大丈夫です。それに、戻らないと逆に怪しまれますから」
話を終えたメルルはそう言い宿から出て行きます。私は彼女が心配になり後をついて行く事になりました。リンクたちも行くと言って下さったのですが、あまりぞろぞろと言っても怪しまれてしまいますので、私だけで行くようにしてもらいました。
町長の自宅に着いた頃はもう夕暮れ時でした。メルルちゃんは普通に戻って行きましたが、先ほどの話が気になった私は少し調べる事にしました……が、突然聞こえてくる悲鳴。
すぐに誰の悲鳴がわかった私は、塀を乗り越えて家へと入ります。扉を蹴り壊すのは許して下さい。
家に入り見たものは、床に押し倒されているメルルちゃんに、そのメルルちゃんに馬乗りになってナイフを振り下ろそうとしている町長の姿がありました。
私はすぐに光の弾を放ちナイフを弾きます。そして、直ぐに近づき町長のふくよかなお腹を狙って蹴りを放ちます。避ける間も無く私の蹴りが当たった町長は、メルルちゃんの上から退きました。いかなる理由があっても、女の子の上に馬乗りするのは許せませんね。
「メルルちゃん逃げますよ!」
「は、はい!」
私はメルルちゃんの手を引き上げ、逃げようとしますが、そう簡単には行かないようです。気が付けば、私たちは囲まれていました。兵士に侍女に町長。さて、どうしたものでしょうか。
「ああ、よく来たな。座ってくれ」
町長の自宅へと入れた私たちは、町長に会う事が出来た。町長は侍女へとお茶を頼むと、私たちの向かいに座る。表情は物凄く疲れていた。それも仕方ないのでしょう。魔物が自分が任されている町の中に現れたのだ。嫌でも疲れてしまうと思う。
「それでここに来た用事は、魔物の事かな?」
「はい。ここ最近、この領地内で死霊系の魔物が頻繁に見かけられるようになった事について、領主様より依頼を受けて下りまして。他の魔物が見られた場所には向かったのですが、これといった手がかりを見つける事が出来ず、ここに来たわけです」
「ここは、他の村と違って実際に魔物と戦っているからな。どんな感じだったのかも聞きたいんだよ」
町長にタメ口で話すリンクに、マリエさんは頭を叩く。まあ、今のはリンクが悪いですね。
「そうだな。奴らは今までの魔物とは違っていた。いくら傷を付けても回復してしまうのだ」
「はぁ? なんだよそれ。無敵じゃねえか」
「そんなの、どうやって倒したんですかい?」
「私も直接見ていたわけではないが、頭を切り落とせば倒せらしい。ただ、普通に強いため、頭を切り落とすのも難しいらしい」
……予想以上に厳しいものになりそうですね。これは1度領主様にこの話をした方が良いかも知れませんね。
それから、しばらく町長と話をしましたが、他に聞けた事は村や町で聞けた事ばかりでしたので、町長の家を出る事になりました。
みんなでこれからの事を話しながら町の中を歩いていると
「ま、待ってください!」
と、私たちを呼ぶ声が聞こえて来ました。振り向くと、来たのは先ほどの町長の自宅でもお会いしました侍女の方でした。
息を切らしているという事は、家から走って来たのでしょう。私たちは彼女が落ち着くのを待ちます。
「それで、どうしたのよ、私たちを追って来て」
「は、はい。実はお伝えしたい事がありまして……ただ、ここじゃあその人目が……」
キョロキョロと周りを見渡す侍女。何か周りの人には聞かれてはいけない事なのかしら。私たちは顔を見合わせると、宿に案内する事にしました。あそこなら、人目を気にする事はありません。
それから、宿に戻って来た私たちは、私たちに話があると言う侍女、メルルちゃんから話を聞きます。私たちに囲まれて緊張しているようですが、ぽつりぽつりと話始めてくれました。
「じ、実は私、この町が魔物に襲われた時、この町にはいなくて。近くの村に帰っていたんです。私の実家に。その後、町が魔物に襲われたって話を聞いて戻って来たんですけど……どこかみんなの様子がおかしいんです」
「おかしい? それは誰がだ?」
「町長たちです。私が話しかけると、皆さん普通に返してくれるのですが、どこかビクビクとしているんです。まるで、何かに怯えるかのように」
何かに怯えるかのように……魔物の事……では無いようですね。
「私も初めは突然魔物が町中に現れたんで、いつ町にまた現れるかわからなくてそうなっているかと思っていたんですけど、違うかったんです」
「違うかった? 何かあったの?」
「……はい。その日は偶々なのですが仕事が早く終わりまして、皆さんからその日は早く帰ってもいいと言われたのです。その日は言われたように帰ったのですが、更衣室にいつも付けているネックレスを忘れたんです。だから、それを取り戻りに町長様のご自宅に戻ったのですが……」
そこまで言うと、顔を青ざめるメルルちゃん。私とマリエさんは、メルルちゃんの背中をさすり、リンクたちは心配そうにこちらを見て来ます。
「無理しなくていいわよ。そんな顔を青くさせちゃって」
「い、いえ。話すと言ったのは私なので。それで、私はネックレスを取りに戻ったのですが、家の中に誰もいなかったのです」
「いなかった?」
「はい。それで、部屋の中を探していたら、風が通る音が耳に聞こえたんです。私はその後の方を探していると、棚と棚の間が若干隙間が空いていたのです。いつもならきっちりとしまっているはずなのですが……それでその棚の後ろにあったのが」
「隠し通路?」
リンクの問いに頷くメルルちゃん。あの家にあった棚の後ろにそんなものがあるなんて。一体何のために作ったのでしょうか?
「本当は行かない方が良かったのかもしれませんが、その時の私は好奇心の方が強くて、階段を下って行きました。1番下まで降りると、1本道があって、その奥から声が聞こえて来ました。私は恐る恐る通路を進んでいると、1つの部屋が見えた来たんです。そこで私はあるものを見てしまったんです」
「あるもの……ですか?」
「はい……町長様が黒いローブを着た人に、もう死んだと思われる人の遺体を渡していたんです」
……一体どう言う事なのですか? 私たちが探していた黒いローブと町長がつながっているなんて。それに、亡くなった方の遺体を渡していると言う事は
「はい。次の瞬間、動き出す死体を見ました。全部で5体あったのですが、瞬く間にゾンビやスケルトンに変わってしまったのです」
まさか、今回の事件にも関わっているのでしょうか? それは考えていませんでしたね。メルルちゃんの言葉にみんな一様に黙ってしまいます。
「こりゃあ、今から行くか?」
「いや、準備が出来てねえからな。明日にしよう。それより、彼女をどうするか? そんな話を聞いた後に町長の家に帰すのは……」
「わ、私は大丈夫です。それに、戻らないと逆に怪しまれますから」
話を終えたメルルはそう言い宿から出て行きます。私は彼女が心配になり後をついて行く事になりました。リンクたちも行くと言って下さったのですが、あまりぞろぞろと言っても怪しまれてしまいますので、私だけで行くようにしてもらいました。
町長の自宅に着いた頃はもう夕暮れ時でした。メルルちゃんは普通に戻って行きましたが、先ほどの話が気になった私は少し調べる事にしました……が、突然聞こえてくる悲鳴。
すぐに誰の悲鳴がわかった私は、塀を乗り越えて家へと入ります。扉を蹴り壊すのは許して下さい。
家に入り見たものは、床に押し倒されているメルルちゃんに、そのメルルちゃんに馬乗りになってナイフを振り下ろそうとしている町長の姿がありました。
私はすぐに光の弾を放ちナイフを弾きます。そして、直ぐに近づき町長のふくよかなお腹を狙って蹴りを放ちます。避ける間も無く私の蹴りが当たった町長は、メルルちゃんの上から退きました。いかなる理由があっても、女の子の上に馬乗りするのは許せませんね。
「メルルちゃん逃げますよ!」
「は、はい!」
私はメルルちゃんの手を引き上げ、逃げようとしますが、そう簡単には行かないようです。気が付けば、私たちは囲まれていました。兵士に侍女に町長。さて、どうしたものでしょうか。
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コメント
羚羊
違うかったではなく違ったがいいと思います